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2017年中朝露国境旅行(2)

 ガイドさんと運転手に旅行者は私を含めて2名の合計4人で柳京飯店を出発。
 最初の目的地は図們(トゥメン)。中朝国境は主に河川を国境線としていますが、西側の黄海へ流れるのが鴨緑江なのに対し、東側の日本海へ流れるのが図們江(トゥメンチャン。朝:豆満江トマンガン)で、その図們江を挟んで北朝鮮ビューを楽しめるところです。
 昨晩延吉に到着したことで当初の旅程に追いつくことができたのですが、昨日は延吉の南にある龍井という街に行くつもりでした。そこには満洲国時代の建築物が残っているとのことです。そして余力があれば北朝鮮ビューポイントである三合鎮というところに行くことも視野に入れていました。ところが最近の北朝鮮情勢が影響しているのか、地〇の歩き方によるとここは外国人立ち入り禁止となっているとのこと。そういうつもりだったということをガイドさんに話すと、今は200パーセント捕まるとのこと。行かなくてよかった。本格的に捕まって話が大きくなってしまうと、素行に問題ありと見做されて、場合によっては職場から「外国立ち入り禁止」を申し渡されてしまわないとも限らないからです。8年前に鴨緑江上流の国境の街である長白に行ったことを話すと、そこは外国人が行くことができなくなってしばらくたつとのことです。私がそこに行けたのは結構ぎりぎりのタイミングだったようです。実はその時はもうアウトだったのかもしれませんが。
 やがて図們に到着。駐車場に車を停めて川沿いに歩いていくと橋が見えてきます。

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 国境施設は10時オープンということで、しばらくの間横で待機となります。
 10時をやや過ぎて開場しました。ここは時間厳守でお願いしたいものです。チケット購入はガイドさんにしてもらいます。なんでもここはなぜか外国人でも韓国人は入れるのですが、日本人はダメとのことです。ちなみにパキスタン人が入れるかどうかは確認していないのでわかりません。なのでか展望台に上がるときは日本語を話さないようにします。入ることができればなんでもいいです。
 9年前の時はどういうわけかガイドが展望台に上がらせなかったので、展望台に上がるのは初めてです。中の階段がかなり急で少々おっかないですが、上からの景色はなかなかのものです。金日成広場から見下ろす景色もこんなものなのでしょうか。橋の右側で工事が行われていますが、今の橋が相当老朽化しているので新たな橋を建設しているとのことです。ちなみにここよりさらに右手、上流側には鉄道橋がありますが、ここは今は完全に立ち入ることができないとのことです。行ってみたかったのですが残念です。誰ですか、捕まらなくって残念だなどと思っているのは。また北朝鮮側の右手には北朝鮮には似つかわしくないマンションアパート群のようなものが見えます。なんでも以前図們江上流で大雨が降った際に、そこにあるダムが放水を始めたという情報を中国側は流したのだが、北朝鮮側は流さなかったために相当の人たちが犠牲となったとのことで、その時に中国側の援助で建てられたとのことです。でも実際に人が住んでいるかどうか。電力不足の北朝鮮に高層マンションのエレベーターを動かす電力を供給できるとは思えません。高級党幹部が住んでいれば別ですが。
 続いて橋を渡ります。国境線を跨ぐというお決まりの儀式を行いました。ここはこんなもんでしょう。次の目的地に移動します。

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 図們を後にして、今度は琿春へ向かいます。
 琿春へは高速道路で行くこともできるのですが、図們江沿いの道を進みます。図們江が国境でもあるので、長い時間北朝鮮ビューを堪能することができます。ただしここらはそれだけに中国側の警戒も厳しいところで、あからさまに北朝鮮に向けて写真を撮っていると、どこから湧いてくるのかわかりませんが、公安か警備隊といった類のコワい人たちが道路上で行く手を待ち構えていることもあるようです。
 また、琿春へ行く途中、涼水中朝断橋というところに寄ります。ここも中朝国境観光スポットなのですが、ここ最近の北朝鮮情勢により外国人が立ち入れなくなっていることが多いとのことで、それでももしかしたら入れるかもしれないということで行ってみます。
 今までの疲れが出たのかいつの間にかうとうとしてしまい、気が付いたらあまり人気のない辺鄙なところを車が走っていました。しまった!北朝鮮に拉致されてしまった!この車は罠だった!などと一瞬妄想してしまいましたがそんなわけはなく、農村地帯を通過してしばらくすると断橋の駐車場に着きました。ガイドさんが車を降りて観光できそうか様子を見に行きました。我々以外に車は停まっていません。こんなところに来るのはただの物好きか本当に怪しいスパイ連中ぐらいなのかもしれません。当然私は前者です。わかっているとは思いますが念のため。しばらくするとガイドさんか帰ってきました。どうやらダメみたいです。ガイドさん、こんなことじゃ観光客がやってこないと怒っています。仕方ありません。気を取り直して琿春へ向かいます。
 琿春の街をすり抜けて、北朝鮮との国境ゲートである圏河口岸に到着しました。ここ最近の北朝鮮情勢にもかかわらずなのか、だからなのかはわかりませんが、意外と多くの車が国境通過手続きを待っています。やはりなんだかんだ言っても両国は「血で固められた同盟」関係です。
 ここで一旦車を降ります。ここから先はまともに進むと検問所で引っかかってしまう公算大です。ただしここであまり大っぴらかつ具体的にああしたこうしたと述べると、後々のここでの観光に影響が出てしまわないとも限らないので、いかにしてここを通過したかについての説明は一部割愛させていただきます。私はそのためにガイドを雇ったのですから。とはいってもこんなところに行きたいという人はそうはいないでしょうね。

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 人にはちょっと言えない方法でここへたどり着きました。ここは中国領の本当のどんづまり。これより先はロシア領と北朝鮮領で先へ進めません。清の時代に立てられたという石碑がフェンスの向こう側にあります。ここは外国人立ち入りがちょっとアレなところなので、あまり長居せずに退去しました。

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 いよいよ中朝露ゴールデントライアングルならぬブラックトライアングル(かなり言い過ぎ。ヒドい)観光のハイライトです。
 国境地帯という特別な警戒警備を要するエリアの割にはここはあまりにも観光地然としています。だったら外国人の立ち入りだって別にいいでしょうに。外国人料金がそうであるように、この二重基準こそが昔からの中国のやり方です。これが中国だ!这是中国!
 展望台から国境を眺めます。皆が皆絶好のスナップポイントを確保しようとしています。謙譲を美徳とする文化で育ったやわな日本人がこの闘争に勝てるはずがありませんが、それでもなんとか記念写真を撮ることができました。
 ここへ来るのは初めてではありませんが、やはり特別な景色です。そして明日はロシアへ入国です。ここから見えるロシアはハサンという名の集落で、そこへ足を延ばすわけではありませんが、明日の陸路越境が楽しみです。

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 北朝鮮側から眺めるとバベルの塔のように見える展望台を出たところにも一応撮影スポットがあるので、ここでも撮影会。

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 魏呉蜀ならぬ中朝露三国国境をあとにして圏河口岸まで戻ってきました。ここで昼食をとります。
 どんな料理を食べたいですかと一応訊かれたような気がしますが、好き嫌いの多い私には特にこれといった希望はありません。ですがふと思いつきで「大同江ビール(テドンガンメッチュ)が飲みたい」と、半ば、いやまるっきり冗談でリクエストを出しました。しかしながらガイドさんは私の言葉を真に受けて厨房の方へ向かいました。しばらくするとガイドさんが興奮しながら「大同江ビールありましたよ!2本冷やしてあるのがありました!となりの店はないので貴重です!しかも10元!安い!」凄い!中朝国境で先軍朝鮮のビールを味わう、実に素晴らしい。それでは三国国境観光の成功を祝って「祝杯(축빼 チュッペ)!」一気にグラスを空けます。そして北朝鮮のテレビで流れたという伝説の大同江ビールCMの決め台詞「シウォナダ!(시원하다 爽快)」をやるべきでしたがつい失念。まだまだ主体思想教育が足りません。なにせ私は「愛は地球を救う(らしい)」教えを奉ずる国の民。
 実際このビールがどういうルートでここへ流れついたのかわかりませんが、北朝鮮に対する「新たな経済制裁」のために、中朝交易でマツタケどころかこのようなブツも入らなくなることは十分あり得ます。そう考えるとやはり貴重なビールです。もっともアサヒスーパードライが一番と思っている方には共有できない価値観でしょうが。
「シウォナダ!」

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 「ピョンヤンの自慢、テドンガンメッチュ(大同江ビール)!」を堪能し、シウォナダ!な気分になって外を出ると、またもやすごい(かな?)ブツと遭遇。圏河口岸事務所の手前側で、琿春と北朝鮮の羅先(ラソン)を結ぶバスが停まっているではあーりませんか!
 一体どんな人が乗っているのか、もしかしたら金正恩委員長がお忍びで乗っていないかと思いましたが、それはちょっとよくわかりませんでした。
 明日は間違えて羅先行きのバスに乗らないように気を付けよう!もし間違えて乗ることができたら、その時は日本の同志諸君、ごきげんよう、さようなら。

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 このツアーもそろそろフィナーレ間近。最後に中露国境である琿春口岸へ。明日乗る予定のロシア行きバスはここを通るので、いわば国境通過の予行演習とでもいいましょうか。時刻が夕方に近いからなのか、中朝国境の圏河口岸よりも雰囲気が静かです。ただ、例えば国境線間近のところへ行くとかいう具合に、もう少し施設の中をうろうろできるのではないかと期待していましたが、残念ながらそれはなかったです。外国人は見学不可なのかもしれません。
 明日はロシアへ行くのに、ここのお土産屋でお菓子とマトリョーシカ人形を買ってしまいました。お土産にふさわしいものを向こうで買える保証はありませんし、あまりかさばりませんので。こういうところで例えばハローキティのマトリョーシカ人形があれば大人気間違いなしなのでしょうが、仮にあったとしても著作権法的に問題100パーセントなブツであることは間違いないでしょう。

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 琿春口岸ですべてのスケジュールが終わり、車は延吉へ帰りますが、私は今晩は琿春泊なので琿春で下してもらいます。ただバスターミナルの位置を確認したいとわがまま言ったら、ホテルに行く前にバスターミナルに寄ってくれました。そして時刻表にあるウラジオストク方面のバスの出発時刻を確認しました。事前に調べた情報によると、切符は当日売りとのことでしたが、ガイドさんに確認してもらったらそのとおりでした。ウラジオストク方面へ行くスラビヤンカ行きのバスの出発時刻は7時50分。今晩は朝鮮中央テレビなどを見てないでさっさと寝ることにしよう。
 バスターミナルからホテルまでは歩いて行ける距離でした。ホテルの名はずばり琿春賓館。琿春の街の看板が中国語とロシア語、場合によってはハングルもあるのが普通であるように、このホテルもロシア語で「ガスティーニッツァ・フンチュン」と表記されています。ホテルの前で今回のツアーの同志たちと記念撮影します。今回はツアーを手配して本当によかったです。もし個人で蛮勇奮って中朝国境地帯に向かっていたら本当に捕まっていたでしょうし、防川三国国境展望台にも行けなかった可能性大でしたから。大同江ビールも飲めたし。延吉にたどり着くのにさんざん苦労したのが遠い昔のようです。

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