見出し画像

アマゾン効果 Amazon effect

 アマゾン効果Amazon effectは電子取引普及に伴う様々な現象をさしている。物価を押し下げる効果に着目してデフレマインドdeflation mindsetを招いているとの指摘がある。
 ネット消費の拡大とともに、リアルの世界での販売が減少する傾向がみられる。これは企業間の問題としては、実店舗を構える業態の売上高が減少する形で現れ、これらの企業の経営不振として現れる(破綻した2018年3月に清算に踏み切った米トイザらスや2018年10月に経営破綻したシアーズのように)。ネット消費をけん引してきたAmazonにこの効果を代表させて、これをAmazon effectと呼んでいる。配送コストを考えると、在庫をもつ実店舗が商品の受取先として便利な側面もあり、(ウオルマートのように)実店舗を持つ側がネット販売を強化したり、アマゾンが実店舗を展開する動きもある。
 ところで消費者は、ネットを通じて商品の価格の比較を瞬時に行うことが可能になった。ネットだけでなく実店舗の小売店でも、こうしたネット上の情報を見ながら価格付けを行わざるを得なくなった。消費者の方が選択権を得てつよくなり、その結果として販売する企業間の競争が激しくなり、物価が上がりにくくなっているという。こちらもAmazon effectと呼ばれている。
   だが日本社会については、人口高齢化により社会が受けている消費抑制の問題を加える必要があるのではないか?
   Amazon effect

 まず高齢化、長生きするリスクを誰もが考えるようになっている。80歳ではなく100歳まで生きるのであれば、70歳の時点で必要な貯蓄は80歳で亡くなるときの3倍必要だ。このとき、政府が社会保障水準を上げる方針であればともかく、いま政府から聞こえてくるのは社会保障水準の切り下げであり、増税など国民負担の引き上げだ。人々は節約に向かわざるを得ないのではないか。
 以下はそれぞれ年の生命表(厚生労働省)で示される60歳の人の平均余命だ。平均余命は男女ともに10年間で1~2歳程度伸びている。そのことを前提にこの表から導かれる結論は、現在(2019年)、60歳の人は男性は平均で84歳程度まで生きる、そして女性は平均で90歳程度まで生きると考えられる。そうなると人生の計画が違ってくるのではないだろうか?

   60歳の人の平均余命(各年の生命表から)
                男性 女性
 1975 19.34   23.24
    1995    20.28  25.31
    2005    22.09  27.66
    2015    23.51  28.77 

 若い世代はどうか。低賃金あるいは非正規労働者の増加は、十分な貯蓄もなければ、年金の備えも不十分な人の増加を意味している。結婚しない、あるいはパートナーもいない、単身者世帯の増加は、老後に家族の介護も受けられない老人の増加を意味している。いずれも将来に備えた節約が必要だが、このままの社会が進めば貧困化する可能性が高い。
 また見落とされ勝ちなのは、人口の高齢化とともに、公的年金だけで生活する高齢者や、公的年金も備えていない高齢者の問題が深刻になることだ。(参照 高齢化・財政悪化のもとで変化する個人消費の構造 三井住友信託銀行2015年7月;前田悦子 高齢者の所得格差と貧困問題 駿河大学経済論集27-2 (2018) ; 高齢者の貧困の深刻化と生活保護の削減 みんなの介護学 2019年1月)

 政府はアマゾン効果と消費者のデフレマインドが、デフレが解消しない原因であるかに主張している。しかし高齢化に伴う将来への不安を解消しなければ、デフレマインド解消の道は見えないのではないか。所得格差を広げた社会を作った結果、貧困化した高齢者が将来、大量に発生する可能性はすでに指摘されている。消費者がデフレマインドにあるのは、このような社会状況にあって、消費者がデフレを期待しているからである。政府が行おうとするデフレの解消が実現しないのは、老後の不安のあるなかで多くの国民がデフレの解消を望んでいないからではないか。

 デフレマインドdeflation mindset: 将来にわたって景気が低迷し、物価が下がり続けると予測すること。
 
#アマゾン効果 #デフレマインド #高齢化   #高齢者の貧困


main page: https://note.mu/hiroshifukumitsu  マガジン数は20。「マガジン」に入り「もっと見る」をクリック。mail : fukumitu アットマークseijo.ac.jp