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劉國光《鄧小平の社会主義論》2007/06

關於分配與所有制關係若干問題的思考  《中國社會科學内刊》2007年第6期   劉國光改革論集, 中國發展出版社,2008年9月,pp.164-200,esp.165-167(写真は肥後細川庭園 2020年5月31日撮影)
(ここで書かれている考え方は参考になる。鄧小平を引いて、社会主義とは、生産力の解放発展だけでなく、共同富裕が目的のはずで、そのためには生産手段の公有制の堅持が必要だと結んでいる。しばしば生産力の発展の方だけの議論をみるので、社会主義とは何かという議論を正面からしていることに、新鮮さを感じないではない。劉國光は1923年11月生まれなので2007年ということは83歳にしての論文である。)

p.165 鄧小平の社会主義改革理論の中で、人々は彼が分配問題を重視したことに注意するようになった。例えば社会主義の本質を論述するとき、彼はまず生産力の方面から社会主義は生産力を解放し生産力を発展させると述べる。そのあと、生産関係方面を述べて、搾取の消滅、両極分化の除去、最後には共同富裕に到ると述べる。生産関係で両極分化の除去で停留したのち共同富裕に到る。これは分配領域の問題であり、社会収入および財富の分配を通して体現できることである。
 鄧小平はまた何度も話しているが、社会主義には「二つの重要な原則がある」、「二つの重要な方面」がある。一つは「公有制を主体とし、多様な経済が等しく(共同)発展すること」であり、一つが「共同富裕であり、両極分化させないこと」である。この第二の「重要方面」あるいは「根本原則」は分配領域に属しており、「本質論」が重視するところの「両極分化を除去し、共同富裕に到る」と完全に一致している。
 鄧小平は社会主義の原則、根本原則に対して、精神一貫した多くの表現を作った。彼が重視したのは社会主義の構成要素だといえる。例えば、生産力の解放、生産力の発展、公有制を主体とすること、両極分化の除去などなど。つまりこのようなものがなければ、社会主義を構成することはできない。しかしこれらの要素の中で、彼は特に生産関係と分配関係の要素を強調した。たとえて言うなら、社会主義改革の任務は当然生産力を発展させることだが、単に生産力を発展させるだけで、社会主義生産関係の建設と改変(改進)に不注意であれば、それでは社会主義改革の成功はおぼつかないだろう。彼はとてもはっきりと(非常典型的一句話)「もし我々の政策が両極分化をもたらすなら、我々は失敗したのだ」(鄧小平文選第三巻 人民出版社 p.111)とこの点をはっきりと説明した。GDPの成長がいかに速かろうと、この結論を変えることはできない。これは分配関係というこの要素が、鄧小平の社会主義改革理論において、重要な地位を占めていることを証明している。
 鄧小平がいう「改革の失敗」は、通常の(一般)改革の失敗を指すのではなく、社会主義改革の失敗あるいは改革の社会主義方向の失敗を指している。それゆえに社会主義は、必ず両極分化を除去するものであり、共同富裕の必要条件(要素)に達するものでなければならない。生産力が一時大大発展し、国家経済実力が大大増強され、GDPが相当長期間継続したが、生産された財富がごく少数に人の手にあるなら、「中国の百分のいくつかが富裕になったが、しかし百分の九十幾つの人の生活の富裕が解決されなければ」(鄧小平文選第三巻 人民出版社 p.64)大多数の人々は改革発展の良いところを享受することができない。このような一種の改革の結果は一種の改革の成功といえるが、決して社会主義改革の成功ではなく、資本主義改革の成功である。
   とても明らかなことは、共同富裕、両極分化の除去は社会主義の最も明白な目的である。これは社会主義を資本主義を区別するものであり、社会主義改革を資本主義改革から区別する根本的なものである。
 「生産力を解放すること、生産力を発展すること」、もまた社会主義の構成要素である。社会主義が貧窮であってはならないし、発達しないことに満足ではありえない。これは常識である。生産力発展の手かせ足かせを取り除く新たな社会生産方式は、資本主義生産方式を含め、一定時期、すべて生産力を解放し生産力を発展させる作用がある。しかしいずれの生産方式が「両極分化を除去し、共同富裕に到る」問題を解決できるだろうか。ただ社会主義生産方式だけがこれをすることができる。中国は生産力が遅れており、経済が発達していない。社会主義初級段階において生産力を解放発展させることは社会主義の本質要求である。これは条理に沿ったもので(順理成章)正確である。しかしそれは社会主義の最終目的ではない。社会主義の最終目的は人の発展である。経済領域の目的は人々の共同富裕である。鄧小平の社会主義「本質論」の中で、特に強調されているのは「共同富裕」というこの要素である。彼は「社会主義の最大の優越性は共同富裕にあり、これは「社会主義の本質を体現するもの」(鄧小平文選第三巻 人民出版社 p.364)だと言ってこの点を説明した。それゆえに鄧小平の社会主義本質論の内容の理解するとき、ただ生産力を発展させることだけを重視するのではなく、生産関係と分配関係の調整を重視することを加えなければならない。
   鄧小平は社会主義分配問題を重視した。それは彼が一生をかけた社会主義奮闘の心血結晶でもあった。晩年に至るまで思考は途切れることがなかった。臨終の直前に弟の鄧懇に言っている。「12億の人口が富裕を実現するには、富裕になってからの分配が最大の問題だ。この問題の解決は発展すると解決が難しい。分配問題は本当にやっかいだ。両極分化を防ぐことを重視しているが、実際には両極分化は自然に生じるものだ」(鄧小年譜 下巻 中央文献社 p.1364)ここには豊富な示唆に富んだ言葉があり、われわれは真剣に検討する必要がある。
 当然鄧小平は、社会主義の分配関係つまり両極分化除去問題だけを重視したのではなく、分配が全社会主義生産関係、特に所有制関係問題と関係していることを重視した。彼が見るところでは両極分化を避ける前提は公有制主体を堅持することである。彼はいう。「もしも我が国経済中で公有制が主体であれば、両極分化をさけることができる」(鄧小平文選第三巻 人民出版社p.149)またこういう。「基本的生産資料は国家所有であり、集団所有であること、つまり公有であり」「国民生産価値が一人平均数千米ドルに達するとき、我々は新資産階級をうみだすことはないだろう」(鄧小平文選第三巻 人民出版社p.90-91)というのも同じ意味である。所有制関係が分配関係を決定する。これはマルクス主義政治経済学理論の中の最も本質的な原理であり、重要な理論意義と政策意義がある。我々の本当に多くの同志はしばしば全くこのマルクス主義の重要な政治経済学原理に注意を払っていない。本文の後ではこの原理について述べることにする。私はここで改めて皆さんに、ここに含まれる真理に注意することと、この真理の学習を促したい。
(以下略)

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