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郝景芳「写一本書」『天涯』2017年第3期

初出《天涯》2017年第3期。『2017中国年度短編小説』満江出版社2018年1月208-231より。なお著者の郝景芳(ハオ・チンファン)は1984年7月天津生まれの女性。清華大学物理系在学中から創作を始め、物理系卒業後、経済学および経営学の博士号を取得している。SF(サイエンスフィクション)作家として活躍(見出し写真は六義園)。

 主人公の阿阑はおそらく地方の大学の出身。事情は書かれていないが、その大学を卒業したあと、北京に部屋を借りて落ち着いて1年になる。彼女には4つ上の従姉妹がいて、彼女はずっとその従姉妹を尊敬していた。従姉妹は文学を愛し北京の大学に学び、イギリスのロンドンに2年留学した。その話を聞いて、阿阑はいつか自分は北京に部屋を借りて住みたいと思っていた。阿阑を訪ねてきた母親の不動産を買って資産を増やせという説教に辟易したあと、阿阑は北京にいる従姉妹に会いたいと思うのだった。実は従姉妹を目標に阿阑は小説を書いていた。その小説を従姉妹に読んで批評してほしいと思ったのだ。
 従姉妹のご主人は従姉妹より2つ上、米国に留学したあとウオール街で2年仕事をしたあと、英国研修にゴールドマンサックスから送り込まれた。その研修終了パーティに従姉妹は参加して知り合い、ほどなく結婚して今二人は北京にいるのだった。
 阿阑は思い切って従姉妹に電話をして、従姉妹の家を訪ねた。その家は竹林があり流水が流れまるで旅館のようだった。しかし従姉妹と話して阿阑は、文学少女だった彼女が、今では投資会社に勤めており、すっかり別人になっていることを悟るのだった。最後に別れにあたり従姉妹は、阿阑は辞退したのだが、自分の洋服を阿阑にあげたいといい、阿阑は何もいらないと言ったのだが、黒い服を着せてそれで帰れという。さらに阿阑に化粧を施した。阿阑はバス乗り場に向かって歩いたが、心のむなしさ(空旷)は悲しみ(怆然)に到るのだった。
 バスを乗り継いでの帰途、彼女は突然、発作的に見知らぬ土地で下車してしまう。彼女の前には、再開発のため壊されている途中の家があった。近付いた阿阑は、放置されたガラスの中に従姉妹を発見し、危険と知らず前に進むのであった。


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