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コンビニで働く移民で経済を支える

2011年から首都圏の大学で国際経営を教えた。その授業に参加してくる大学生は神奈川県に住む。神奈川といえばある程度国際化している。なので外国人のことはよく知っているであろう。見たことくらいはあるのかもしれない。20歳の彼らにとって外国人とはやはりアメリカ人のことをいう。

映画俳優やスポーツ選手であればやはり欧米の人たちのことをいう。そんなイメージを持った大学生に国際経営を教えるというのはとても難しい。わたしは何を教えていいかわからなかった。教科書の理論を話してもまったく興味を示さない。働いたことがないからだ。となるとどうするかちょっと興味を引くエピソードを話す。そうして興味を持って事象を理解してもらうしかないだろう。

ただエピソードといってもどんなエピソードがあるのか。そのネタに困っていた。すると3年くらいして学長が三井物産に勤務していたときの同僚をキャンパスに呼んだ。その方は中国でビジネスをしている人だった。はて、どんな話をしてくれるだろうか。わたしは聞き入った。

そのゲスト講師はこんな話をした。アジアのある国に日本人がひとりで旅行をしたとする。バックパックでひとりウォーキング。すると突然、目の前に川が流れている。そして流れが左右に分かれている。

するとそこに若いお母さんと子供が川に流されておぼれている。助けてと叫んでいる。しかしお母さんは左手。そして子供は右手。

あなたはひとりしか助けられない。どっちを助ける。そんな質問を投げかけた。

わたしは、聞きながら頭で考えた。子供だろう。はて、大学生はどうだろうか。やはり子供という意見が多かった。しかし、ゲスト講師はこういった。

日本以外のアジア圏。特に中国ではお母さんと答えます。えっ、お母さん。なぜでしょうか。子供を見捨てるというのだろうか。

答えは、お母さん。なぜか。子供はまた生まれるから。しかしアジア圏の多くの国では子供は多く生まれても長く生きられないところがある。そういった理由だそうです。

もうひとつ興味を引いたエピソードがあった。あなたは日本である程度事業で成功した。お金がある。ビジネスのノウハウも持ち合わせている。そこでアジアのどこかの国でイタリア料理店をはじめたいとする。レストランのオーナー・シェフとしてビジネスをしたい。

一号店がオープンした。そこにめでたくお客さんが来た。コースの注文だ。まずスープを出す。すると客がどうやら不満を持った表情をしている。それどころかみるみるうちに怒りだした。どうしてくれるんだ。

シェフのあなたは何が起こっているのかわからない。近づいて理由を聞いてみる。すると客がこういっているのだ。スープにハエが入っている。どうしてくれるんだ。なんとかしろ。

あなたならどうする。それがゲスト講師の出した質問だった。

大学生は答えた。謝ります。まず、ハエがいることを確認して謝ります。そしていた場合は代わりのスープを出します。場合によってはそれだけではありません。コース代を無料にします。そのように答えた。

これが答えだろうか。

講師の説明はこうだった。シェフとしてすることはひとつしかない。それはハエの入っているスープのところにいく。そして客の見ている前でこうするのだ。ハエを手でとって食べる。それが答えだ。客が故意にハエをポケットの中からスープにいれた可能性がある。

大学生は驚いた顔をしていた。わたしも驚いた。そんなことをするのか。なぜだろう。大学生は講師にその理由を聞いた。理由はこうだった。

理由はふたつある。ひとつめはハエは食べれることを示す。もうひとつはハエがいたという証拠を隠滅することだ。大学生は目をくるくるさせていた。わたしもくるくるさせた。というか、あきれてくらくらした。

しかしこのようなまともでないことがまともそうになってしまうのがアジア新興国で起きている。

エコノミスト誌に日本の経済をアジアからの移民で支える。そんなテーマの記事が掲載されていた。

日本国内の移民の数は2008年当時は50万人であった。それが4倍に増えて2023年で2百万人いるといわれる。コンビニにいけば外国人のバイトのひとがめにつく。

これは日本が少子化で高齢化社会に向かっていることも背景にある。1995年に8700万人いた労働人口。その数は次第に減っていき2050年には5500万人になってしまうという。これで経済を支えることができるのだろうか。ちょっと考えたらできるわけがない。むしろ経済成長を数字では期待できない。違う指標が必要だ。

ある試算によれば現在の国内総生産(GDP)をわずかながら成長させるためには現在の移民数200万人のさらに倍以上である420万人が必要とされるという。はたしてこれだけの移民を日本国内にいれることができるのだろうか。無理だろう。

現在コンビニエンスストアで働く外国人労働者の数は8万人といわれる。数はさておき日本で要求されるサービスの質を維持できるだろうか。日本のサービスはきめ細かい。サービス過剰といわれるほど顧客に対して手厚い。そういった経験を受けたことのない外国人労働者が働くことになる。

3つ目は日本にきて教育を受ける。そしてコンビニで働く。中にはコンビニのオーナーになる外国人もいる。しかし日本でのビザ申請が通らない。そのため数年で帰国してしまうという。その理由はいろいろあろう。

この記事をとりあげて大学で講義することは可能だ。しかも経済学部で履修可能な国際経営論として十分に成立するだろう。

はたしてあなたならどうする。コンビニで提供したおでん。そこにハエがはいっている。そのようにコンビニに来店をして買い求める客がいたとする。

移民労働者ならどうするだろうか。