昨日、「コンビニで働く移民が経済を支える」という題で文章を書いた。まだ頭の中であの文章でよかったのかなという余韻がある。経済を支えるのはちょっと難しいだろうというのが理由だ。移民の人たちは帰る国があること。日本でのビザの取得に苦労していること。そして日本の独特の顧客サービスを習得することは難しいという意見だった。

文章を書いた後はほとんど振り返ることがない。次のテーマを考えようとしていた矢先だった。たまたま近くのコンビニに立ち寄った。店がそれほど混んでいなかった。そして店員が愛想よさそうな日本人の女性だったこともある。こんな会話をした。

全国のコンビニで働く外国人のひとたちが８万人いるそうです。ここファミリーマートでも外国人のひとが働いていますか。南麻布では外国人の人がコンビニ業界ではじめてオーナーになって経営しているそうです。するとその女性店員がそっと答えてくれた。

外国人の労働者の方が頑張って働くからね。日本人はまじめには働かないんですよ。

えっ、そうなのかな。日本人、特に若いひとたちはそれほど頑張って働かないのだろうか。そんなことを聞いた。その発言をもとにわたしの１０年間でよく勉強する外国人のひとたちのことを思い出した。同時にそれほど頑張らない日本人の学生が多いことも思い出した。

千葉県稲毛区にある小さな私立大学で国際経営を教えていた時のことである。わたしはいつものように４月になると第一回目の授業を行う。そこではオリエンテーションといってこれから１５週間のうちでどんな授業をするのか。それを説明する。

授業ではカンブリア宮殿というＴＶ番組を使った。そこで話題になったビジネスについて勉強することを説明した。ただしそれが目的ではない。学生の皆さんは自分の得意なテーマで好きな会社を選んで研究してください。その研究結果をプレゼンテーションしてください。中間と最終で２名づつ。４名の方にプレゼンテーションをしてもらいます。そして希望者がいれば４名以上でもかまいません。そういっていた。

すると６年間教えたその大学ではプレゼンテーションをするのはほとんど外国人であって中国、台湾からきた学生だった。特に台湾からきた学生はがんばる傾向があった。

６０人の席がある教室でいつも真ん中の前方に座っていた。ノートとペンは必ず用意してきた。遅刻・早退はしたことがない。台湾から来た学生はこういった。

もうそろそろ宿題を出してください。うれしい要求をする日本国籍の学生はいなかった。台湾から来た学生はアルバイト先のレストランをテーマにあげた。ひとりで６０ページにおよぶスライドを用意してきた。

どうぞプレゼンテーションをしてください。お願いします。するとひとりで９０分をしっかり使ってプレゼンテーションをした。これまでに見たプレゼンテーションの中で最も優れたものだった。わたしはびっくりした。

こういう学生が台湾から来るのか。

もう一人は関西で授業をした時のことだった。４月になって最初の授業から宿題を出した。この授業は日本のマーケティングという。クラスには３０人くらいいる。その中で半分くらいは外国人だった。双方向の討議型として英語で行った。

わたしはディズニー、スターバックス、ユニクロをとりあげて短い新聞記事を手渡した。１週間後にはその記事の中からひとつと選び、事業展開の特徴を１枚でまとめてきてください。そのような課題を出した。多くの学生は翌週に一つを選んで提出した。

初回の授業で課題を出してから１週間。宿題が出そろった。見ていると台湾から来た女子学生の提出したレポートが目に留まった。３ページあった。１ページのはずなのに。１枚にしてまとめてこなかったのかな。

その学生はディズニー、スタバ、ユニクロについてすべての記事を読みすべての会社について１枚づつでまとめてきたのである。それをどう評価したらいいんだろう。

提出をした女子学生にはこのように言い伝える機会はなかった。しかしわたしは心の中でこういっていたことを覚えてる。

あなたの出したレポートはすべて見た。よくできている。しかしこの授業ではあなたに与えることのできる評点は最高１００点である。１２０点をあげることはできない。それでもいいか。

おそらくそれを聞いたのならばあの学生はそれでもいいといったであろう。評点はともかくすべての会社について学びたいということが明らかにわかっていた。そのくらい好奇心がありハングリーだった。

わたしはこれらのことからこうも考えた。８万人いるコンビニで働く外国人労働者。すべてのひとにはあてはまらないだろう。しかしがんばって働くのではないか。自分の国に帰ってしまえば東京のような贅沢な暮らしはできない。治安も悪い。医療制度も万全ではない。きれいな東京にいるほうが暮らしがいいのだ。

日本人の若い労働者は東京のいいところを特別だとは思わない。サービスがよくてきれい。治安がよく、犯罪の発生率が少ない。そんなところを当たり前としてしまっている。日本人は一生懸命に働かなくなってしまった。そのように言えないか。コンビニで頑張る移民労働者。

期待したい。