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役員がさらにだれる可能性

20年ほど前に財閥系の商社で働いていた時のこと。わたしは思わぬチャンスをつかんだものと内心喜んでいた。だれでも知っている総合商社で都内の一等地にある。そこには子会社からの出向という形で勤務していた。それでもどういうわけか親会社である商社の背番号があるかのようだった。それは一般職員と同等に名刺もいただいていた。これもひとつのブランド力なのか。

確かにだれでも知っている商社ということもあろう。職員はピカピカの経歴のひとたちばかり。わたしもめいっぱい自分の職歴について見栄を張った。ただ上の人が灘高校卒。東大工学部。ハーバードMBA。いろいろ渡り歩いたけどそういうところはちょっとなかった。私を含め周りも少し引いていた。このひとは役員ではないのか。でもそのくらいの経歴の人はゴロゴロといた。なんといってもハーバードMBAだけで社内に30人いるのだ。

あるオンラインイベントでアメリカの物言う株主について話す機会がある。株主総会でモノをいいたいだけいってプレッシャーをかける。そのようなアクティビスト増すだろうという内容だ。この記事から導かれる筋書きはこのようになる。


背景としては長期型ファンドが出てきたこと。インデックス・ファンドを使って投資するだけで市場を上回るリターンを要求しない。そのため役員にとってはそれほど難敵ではない。

そこで物言う株主の登場というわけだ。アクティビストは議決権行使権利を使ってプレッシャーをかける。役に立たない役員をクビすることさえ可能だ。

またインフレ対策のため国債の利上げがされた。株式市場でのリターンがそれほど期待できない。敵対的買収が行われない。これまで悪意ある買収に対抗するには株価を引き上げることで回避してきた。しかし市場がそれほど期待していたほど上がっていないために敵対的買収をしかけても儲からない。そういったことからだれけた役員にとっては好都合だ。そこでアクティビストによる厳しいチェックが期待されている。

社会的貢献のための投資(ESG投資)にも目を向けなければならない。しかし役員はそれほどESG投資をわかっていない。どうしたらESGに貢献できるのかはよく知らないという事情がある。そこで議決権行使助言会社が助言ができる役員を乗り込むわけだ。

さて日本の企業ではどのようなことが起きるか。わたしはかなり懸念している。これまでだらけていた役員がさらにだらけるのではないか。これまでも株式の持ち合いによってそれほど外からのプレッシャーを受けてこなかった。役員は皆顔見知りであっていつもお酒を飲みあう仲間。村社会を企業で実現したような役員が多い。現状維持と先延ばしをさらに続ける懸念がある。

そういう中でコロナやウクライナの問題に直面した。企業は内部留保をさらに積み増しする。社員の教育や育成にはお金を使おうとせず新しいテクノロジーへの投資を控えるだろう。そういったことに関心を示すことがない。どこかがやったら自分たちもやろうくらいだろう。

確かにイトーヨーカドーのような事例はある。外からの株主によって社長更迭という議案が持ち上がった。それでも持ち前のねばりとなにかしらの働きにより更迭劇はファンド側の敗北に終わった。

アメリカの役員の中でも社長の平均在任期間は7年間だという。ところが日本は社長になる時期が年齢的にとても遅い。一度なってしまえば60歳を過ぎても何年もその席に居座る。業績がよければそれもいいだろう。ただ業界の平均以下なのにやめることなく役員を続ける。

わたしが在籍した商社はとても厳しいところだった。管理が厳しく上司のいうことが絶対というような仕事の仕方をしていた。かなり四方八方から横やりがはいってきてサンドバック状態になる職員も多かった。それほどまでに失敗は許されないという会社だった。

しかし役員になるとやや大らかに行動する人たちもいると聞いた。下の職員が優秀かそれほど役員と差がないためだろうか。役員が並み以下の能力であってもそのまま適当なことを取り繕って居座る。物言う株主がいないためにどこからも圧力を受けることがない。

役員がさらにだれる可能性はある。