ドーパミン中毒

2004年にマーク・ザッカーバーグがアメリカでfacebookを設立。彼が通うハーバード大学の寮からはじまった。この弱いつながりをもたらすソーシャル・ネットワークは世界を席巻。日本にも確か2007年頃にやってきた。わたしは2010年にアカウント登録をした。100人くらいの友達とつながった2017年。しばらくすると凍結しやがて削除した。3年間アカウント登録をしていなかった。

理由は明らかだった。facebookはどこか怪しい。いろいろな事件がfacebook上で起こっているという。中東では人身売買の広告に使われている。アメリカでは10代の少女が比較されたことを苦にして自殺した。また動物の虐待の写真が投稿された。サッカーのネイマールの誹謗中傷も多かった。そんなサイトに登録をしておく必要はない。そういったこともあり削除したのである。

ただそれがよかったのかどうかはほんとうのところわからない。害はそれほどなかったのかもしれない。ただわたしは無駄な時間を過ごしているとしか思えなかった。SNSに使う時間を知らないととんでもない時間を無駄にするという。これはTEDステージでアダム・オルター教授もいっている。ネット依存は幸せになれない。むしろ不幸になる。そのためにはスマホからはなれてなにも見ないことを推奨している。要点を書いておこう。

シリコンバレーでは11歳になるまでスマホを持たせない。限られた自由時間に人は再新再生する。そこではリラックス、運動、読書、学習、健康のための活動をする。それぞれに9分くらいを使う。これらは人を幸せにする。ところがスマホにより有害な時間の過ごし方をしてしまう。デート、ソーシャル・ネットワーキング、ゲーム、エンタメ、ニュース、そしてネットサーフ。これにそれぞれ27分も使ってしまうという。これらは人を不幸にする。意識してやめなければいけない。

また同じようなことを推奨する識者を見つけることができた。これはディープ・ワークを推奨するカル・ニューポート教授だ。彼は現代の企業勤務において価値あること、つまりお金儲けができることは希少価値があることであるとしている。そのためにはSNSで気まぐれな遊びをしている暇はない。しかも学術的に証明されているのはSNSはやりすぎると切れるということだ。ソーシャル・メディアはやめなさいとはっきりと提言している。

このイベントで彼が何を言おうとしているかを書いておこう。2点ある。ひとつはSNSのアカウントを持たなくても何も問題はない。友達とつながれる。世間の事情にも通ずる。次にSNSアカウントがない方が幸せでより仕事で成功する確率が上がるという。

わたしはこのトークを見たことから✕(旧ツイッター)のアカウントは削除した。LinkedInのアカウントも一時停止。またこのnoteやMediumといったライター向けのサイトも注意をしながら使っている。ややnoteは中毒ぎみだというのは自覚している。

そういった反省を持ちながらもついついやってしまう仕掛けがほどこされている。そんなことが推しでいきすぎるとやがて沼にはまりぬけられなくなるという。それをきれいにまとめたのがアンナ・レンブケ博士著、「ドーパミン中毒」、新潮新書 2022年発行である。

一度手にとって読んでほしい。

博士によるとドーパミンというのは脳内快楽物質のことをいう。人間であればだれでも快楽と苦痛のシーソーのようなものを持つ。そしてそれを操って罠にはめるというのが現代のビジネスの特徴だという。博士のあげたいくつかの快楽ビジネスを紹介しておこう。わたしのこともエピソードとしていくつかあげることにする。意識して抑えることが必要だ。

恋愛というものからはじめよう。博士自身もこれにハマってしまったようだ。もともと本が好きな博士は恋愛小説を読みふけってしまった。3人目の子供に対して授乳が終わったころから毎晩読みふけってしまい、やがてはあらゆる恋愛小説がどんなものかが手にとるようにわかってしまったという。この恋愛にまつわる快楽により多くの時間を失ったという。

しかも博士には夫と子供3人、そしてスタンフォード大学医学部教授というりっぱな肩書と仕事をしている人にもかかわらず恋愛小説に依存してしまった。どうだろう。読者の中で恋愛物の本やテレビドラマにはまっているということはないだろうか。

次にセックスというものをあげている。本の中ではやや過激な依存症が紹介されている。男性であればアダルトサイトにアクセスをして毎晩のように見ていることはないか。それにより多くの時間を失うという。健全ではない。そこにはセックスに関わる他のサイトに誘導したり、見ているところから近くのところに誘導するような仕掛けがある。有料制へと移行することも可能である。

買い物というものがある。ショッピングサイトであってアマゾンや楽天といった商品をいくつも出品している電子モールがある。これもいつまで経ってもやめることなく買わないのにながめているということはないだろうか。できるだけ安い商品。できるだけレアな商品。一度買い始めたら止まらない。つい買ってしまう。買わないのにながめてしまう。そんなことはないか。時間が奪われてしまう。

ゲームというのはいうまでもない。これほど依存症を引き起こすものはないであろう。さきほど紹介したアダム・オルター博士の著作で「僕らはそれに抵抗できない」という本がある。具体的なゲームソフトも紹介されている。この本の中には北京でゲームのやりすぎで施設にはいっている若者がかなりいるとも書かれている。わたしはゲームをしたことがない。

そしてSNS。読者の皆さんはSNSといわれるアプリをどれだけスマホにダウンロードしているだろうか。シングルサインオンでグーグルかアップルのメルアドからログインできる。facebook、X(旧ツイッター)、そしてLINEといったところは皆さん持っているだろう。問題はそれらにどれだけの時間を奪われているかだ。ほとんど意味なし。むしろ有害である。できればアカウントを削除してみてはどうか。1か月しても何も変わらないことに気づくであろう。

お酒というものもある。アルコール依存症だ。毎日一定量のアルコールが体の中にはいっていないと満足できない。毎日晩酌が必要な体になってしまっている。適度であるならそれはプラスの効果がある。ワインは体にいいことで知られているし、ビールも適量であればストレス減になる。

ギャンブルというのはお金を失う。わたしの家系では競馬をするひとが多い。日曜日の3時になるとテレビに釘付けになりレースを見る。そしてやがては馬券に手をのばすようなこともする。どこまでかはっきりとした線引きがあればいいがどうも怪しい。

最後に薬物。これは麻薬といったもので日本でもいろいろ事件になり始めている。アメリカでは薬の売人は街のそこらじゅうで見かけることができて比較的簡単に手に入れることができるらしい。しかしコカインといったものに依存しはじめるとぬけられなくなるという。

アンナ博士はそれでもこういったドーパミン中毒の怖さを意識すれば元の健全な状態に戻せるという。それには通常30日断つこと。2週間ではだめ。3週間でも十分ではない。30日つまり一か月断つことで通常は抜け出ることが多いという。

82ページから引用しよう。充分に長く(30日)待てば、脳はドラックが来ないことに再適応する。ホメオスタシス(生体恒常性)を取り戻し、シーソーが水平に戻る。水平になれば日常のシンプルな報酬に喜びを感じる。

何か依存症があればこれを試してみるのはどうだろうか。博士によると30日後には普通はこういったことが喜ばしく感じるという。散歩に出る。二の出を見る。友達との食事。そういったことが喜ばしく感じるという。

2023年になってちょっとした理由からfacebookに再登録した。しかしいまは一時停止をしておりやがて削除する予定である。見ないし見てもためにならない。スマホもほとんどやらない。スマホ上にあるあらゆるアプリがドーパミン中毒になる仕掛けがあることは明らかだ。

大学生は大学で授業か運動。あるいはクラブ。社会人であればオフィスで仕事。仕事中は会議か自分の机で作業をするかのどちらか。スマホなどやっている時間はないのではないか。メールでさえ途中で見ると見る前の状態に戻るのに25分かかるという。つまり25分ロスする。電車の中でもスマホをやらないようにすればSNSなど必要ないだろう。