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脳科学で脳の働きを解明する

40歳になる手前のことだった。朝の目覚めがよくない。目は開くもののどこかだるい。このような感覚はあまりなかった。いつも快活に学校に行き中学と高校は一日も休んだことはなかった。社会人になっても会社を休んだことはほとんどなかった。それが働き始めて17年くらいしてからのことだ。

これほどだるい日はなかった。しかもそれがいつまでも続いた。1週間だるさで動けなかった。それが2週間くらいになった。いつまでも床の中にいたくなった。そういう状態を抑うつ症状という。

昨年10月第二週に脳科学に関して記事が載っていた。発行元は英紙エコノミストである。タイトルは科学者の研究により脳の構造が解明されつつある。それによりどのように脳が働くかが理解されつつあるという。しかし脳の動きは複雑で未だにはっきりとはわからないことも多い。かなり短絡的に書くとこういう内容た。どういうことなのか科学的な用語をあまり使わず書いてみよう。

権威ある生物学者が21の学術論文を発表した。識者はアメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health)で組織された研究グループの中にいた。研究報告も科学の最先端を掲載するサイエンス誌(Science)に掲載された。
報告は主に3つの領域に関するものだった。

ひとつは脳細胞は何が何処にあるか、その構成はどうなっているかというもの。次に脳の働きから神経に関わる病気を研究すること。107の認知パターンを抽出した。最後に脳の病気を治癒するために様々な動物を使い、人間の脳との違いを解明しつつある。

まず人の脳は刺激を受けると脳内にごくわずかな弱い電気が発生する。それがニューロンという神経細胞を伝わってそれを認知する。つい最近までその脳細胞を含め人の身体には300くらいの物質で構成されているといわれていた。しかし研究により少なくともその10倍の3千種の細胞があることがわかったという。

この数字の推計はストックホルムにあるカロリンス研究所とアメリカ、シアトルにあるアレン脳科学研究所で認められたという。アレン研究所はあのマイクロソフトの共同設立者であるポール・アレンが2003年に1億ドル(100億円、1ドル100円で換算した場合)を寄付して設立された。

研究により3,313まで分類化された。この研究結果として脳の働きとして107パターンが認識されたという。

次にそれらの動きと神経に関わる病気と関連付けた。パターンの中に神経症状や神経病との関係が見つかった。19の病気と因果関係があるという。例えば統合失調症(schizophrenia)、抑うつ症状(depression)、双極性障害(bipolar disorder)、アルツハイマー型認知症(Azheimer disease)といった病気だった。そして人がかかる様々な中毒症状に近いものまで含まれていた。

こういった脳の働きを調べて、次は病気を治癒する研究もした。そのために動物の脳を使って実験をした。動物実験にはチンパンジー、ゴリラ、マカク(霊長の猿)、そしてマーモセット(新種の猿、川崎市では人工的につくられている)が使われたのである。

脳科学はこれからも研究を重ね脳の働きを解明していくだろう。

この記事の中で2つ目の神経の病気について書いてみたい。特に抑うつ症状についてである。

中学と高校のときに学校を休むことなく通った。一度も休まなかった。社会人になっても10年くらいは会社はほとんど休むこともなかった。しかしながら15年くらいしたころから行動特性になにかしらの変化があった。そのことは認知している。女房や子供からもはっきりと言われたことだった。

まずだるいという身体の疲れがとれなかった。30代は毎週末マッサージの施術を40分間受けていた。それでも暗い性格になっていった。何事もネガティブにとれえるような癖がついてしまった。どこか明かりが見えない。

なにか会社でも金縛り状態になっているようだった。光明がない。しかしなんとか仕事で成果を出そうとした。しかし出なかった。やってもやってもシステムの導入に失敗した。データがアップロードできなかった。10年後にわかったことはデータに欠陥があることだった。

気分障害のようになった。これは一種の抑うつ状態といえよう。

そうなると二つの症状が出てきた。ひとつはなにかと快楽を求めようとした。しかも極端に求めようとした。ストレス解消にと苦手なビールをたくさん飲むようにした。またスポーツもテニスをやたらにたくさん週末にいれて気分をよくしようとした。やり過ぎて冬場に肉離れもしたことがある。

やたら気分が塞ぐようになった。スポーツをしてお酒を飲んでいい気分になる反面にどんよりした気分になる。一気にカクンと落ちてしまう。まるでパソコンの電源が途中でぱたんと切れてしまうような状態だった。双極性の障害のような状態であった。

そうである。わたしはシステム部にいて多くのシニアのエンジニアと地下室で仕事をした。このコンピュータの仕事を渋谷で4年間も続けた。その間、30人いるエンジニアはほとんどがわたしより20歳以上年齢の高いひとたち。古い体質で対立もあったのである。

あの時の痛い経験がある。40代はほとんど抑うつ気分で会社生活を送った。

50代になって大学講師になってからはそれほど塞ぐことはなかった。しかしながらなにかしら普通といわれる状態になれたのは55歳くらいだったと記憶している。おそらくもとに戻ったのは3年後の58歳であろう。ランニングを習慣としてとりいれると眠れるようになった。それまでは日中、あくびすら出ないこともあった。

そして58歳からは暴走しそうになったときは意識して抑えるようにしている。そういった危ない空間からはできるかぎり遠ざかる。危ない空間にいないようにして、いらずらに時間を過ごさないようにした。それでもうまくいかない。

脳の働きというのはなかなか解明ができない。解明されたとしても説明が難しい。しかし自分の行動特性に異変が出たときは危ないサインだとして意識したほうがいいであろう。

二週間もだるい日が続いたのであれば心身が疲れている。その原因は働き過ぎか職場のストレスであろう。少し間を置く必要があろう。そうでないと二週間休んでもだるいままで気分が上向きにならない。そうなると抑うつ症状と診断を受けることになる。そこから気分障害をやわらげる薬を飲んでいくとなると付き合いはとてもつらいものになる。

飲んでもすぐに効果はでないし、それをやめるときにもごくゆっくりと少しづつ量を減らしていかないと支障が出る。

少しでも異変があると意識したときは軽く見ない方がいいであろう。人は完全ではない。暴走がある。それは意識しないと抑えられない。ストレスまみれになる。そうすると生物的な恒常性(ホメオスタシス)を保とうとする。自律神経の調整によりなんとかもどす機能がそなわっている。しかしそのバランスを崩す要因や生命を脅かす要因は都会には無数にある。