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【ひろしまユニコーン10 STARTUP ACCELERATION 2023】挑戦者の紹介VOL.8⦅株式会社トロムソ⦆

「広島から、ユニコーン企業に匹敵するような、企業価値が高く急成長する企業を10年間で10社創出する」ことを目標に掲げたひろしまユニコーン10」プロジェクト。このプロジェクトの一環であり、事業の急成長を伴走支援する「ひろしまユニコーン10  STARTUP ACCELERATION 2023」に挑戦中の16社に、改めて事業の概要や今後の展望などをインタビューしました。

■株式会社トロムソ 代表取締役 上杉 正章さん
「もみ殻固形燃料製造装置、バイオ炭製造機を海外展開」

代表取締役 上杉 正章さん

プロフィール
広島県出身で、因島高校を卒業し、2012年9月にトロムソ入社。技術職・営業職を経験し、2017年5月に執行役員就任。2019年9月に代表取締役に就いた。創業者から受け継いだ、もみ殻を固形化する技術から発展した「もみ殻のソリューション」を通じて、もみ殻などの農業残渣に付加価値を与え、資源の有効活用や農業の生産性向上に貢献する「環境課題・社会課題解決型のビジネス」を実践することを経営理念としている。


― 事業内容は ―

業歴50年の尾道市因島の船舶用熱交換機メーカーからスピンオフし、1994年に創業。もみ殻活性炭を使った浄水器の製造・販売を行うほか、近年はバイオ炭を農業利用するためのコンサルタント業務(バイオ炭の普及活動)、温室効果ガス(CO2・N2O・CH4)計測事業の展開準備を進めています。日本・世界が直面する多様な課題を解決する新たなものづくりに挑戦し、将来の子どもたちが緑豊かで住みやすい持続可能な社会づくりに貢献することがトロムソの目標です。

モミガライト製造機


― 海外での事業展開について ―

2013~2014年にJICA(国際協力機構)の中小企業事業で、タンザニアの「もみ殻を原料とした固形燃料製造装置の導入案件化調査・同普及・実証事業」に採択されました。2018年以降、広島県やジェトロ、UNIDO(国際連合工業開発機関)などの事業に採択され、ベトナムでの事業に注力しています。環境省の2019年度都市間連携事業委託業務では、ベトナム南部のカントー市で、精米工場から発生するもみ殻の圧縮固形燃料化によるバイオマスプロジェクトを行っています。提携する現地の精米会社には米農家約15,000戸が米を納入しており、水田の総面積は9万平方㍍規模になります。トロムソはベトナムのホーチミンに現地法人を設立しており、2024年度から70台のバイオ炭製造機の納入を計画しています。もみ殻を材料にバイオ炭を製造し、水稲・園芸・果樹の圃場へ農業資材として使用する際の、バイオ炭の施用方法なども農家に指導する予定です。2050年までにカーボンニュートラルを目指すベトナムで、2026年から運用見込みの温室効果ガスの削減計画作成の義務化が追い風になりそうです。
またグラインドミルを柱とした事業では、2020年の日本外務省のノン・プロジェクト無償資金協力で、ナイジェリアへグラインドミル7台の契約が成立しました。同年の経済産業省の飛びだせJapan! 世界の成長マーケットへの展開支援補助金、2022~2023年のJICA中小企業・SDGsビジネス支援事業案件化調査に採択され、マダガスカルでグラインドミルを普及させるための実証調査を行いました。

もみ殻から製造されたバイオ炭


― 他社サービスとの違い、強みは ―

もみ殻固形燃料の製造装置は国内では競合他社が存在しません。もみ殻という未利用の農業残渣を価値ある製品にするソリューションまでを一貫して展開しています。バイオ炭製造機メーカーは多く存在しますが、バイオ炭の農地への使用方法についても過去2年間、国内外で大学との共同研究を行っており、バイオ炭の施用まで指導できるバイオ炭製造機メーカーはありません。またガスクロマトグラフィーを使用し、温室効果ガス(GHGs)排出量分析の受託まで行える設備を完備しており、バイオ炭に関する事業を一本化していることが他社に無い強みです。


― 今後の事業展開は ―

設立当初から緑を守る事業を柱に事業展開してきましたが、2年ほど前から緑を育む領域へ事業を拡大しています。例えば2023年10月に中東のドーハで開催された国際園芸博覧会に出展し、主に西アフリカのセネガルで行っている砂漠化緑化の実証事業を紹介しました。また現在は「連続式バイオ炭製造機」を開発中ですが、さまざまな農業残渣を原料としたバイオ炭を農地に還元し、農業生産性を向上させるとともに、炭素を貯留する実証事業を国内大学の農学系の教授と共に行っています。今話題のカーボンクレジットを創出してクレジットを市場で売却し、最終的には農家の方々に何らかの形で還元する仕組みづくりを複数国で実証しています。
現在はヤマハ発動機から、海外事業のベテラン1人を出向で受け入れています。また、8人の社員のうち3人は外国人です。このように1社では不可能な事業でも、オープンイノベーションで多様な人材と力を合わせれば可能になります。周りにいる人、支えてくれている方々に感謝の気持ちを忘れず、今後も一歩ずつ事業を進めたいと考えています。

海外での実証試験の様子


― 編集後記 ―

もみ殻固形燃料製造装置(グラインドミル)とバイオ炭製造機を製造・販売する株式会社トロムソ。尾道市因島の船舶用交換機メーカーからスピンオフした歴史からも、造船関連のものづくりの精神が宿っています。タンザニア、ベトナム、ナイジェリア、マダガスカルなど海外でのグラインドミルやバイオ炭製造機の納入、実証試験が広がっているそうです。また、2024年1月にはアストモスエネルギー株式会社からの資金調達もしています。国内外でカーボンニュートラルが推進されている中、広島発のグラインドミル、バイオ炭製造機による環境保全への貢献が期待されます。

★☆ 株式会社トロムソについての参照サイト★☆
https://tromso.co.jp/


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