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目で見て口で言え「二人静」

国立映画アーカイブで開催中の「発掘された映画たち2022」で、「二人静」(弁士、楽士つき上映)を見てきました。柳川春葉の家庭小説の映画化で、女優と女形役者の競演という、非常に珍しい作品です。この作品は、マツダ映画社所蔵の16ミリフィルムを35ミリにプリントしたもの。実はワタクシにとっては非常に思い出深い作品で、弁士デビューした時の無声映画鑑賞会で師匠が説明したものなのです(会場は門前仲町にあった門天ホールで、物販が受付ではなく客席内にあったので、デビュー活弁を終えて物販コーナーにいながら拝見したのでした)。今回もやはり師匠の説明で、伴奏はカラードモノトーンデュオのお二人。家庭小説というのは、新聞に連載された女性向けの小説の呼称で、Wikiによると欧米でも「若草物語」や「赤毛のアン」などもそのジャンルに入るのだとか。作者の柳川春葉は尾崎紅葉門下の四天王とも呼ばれていたそうです。子までなした芸者と許嫁の間でふらついていた男が一念発起して北海道へ行き、その後を追ってきた妻と芸者、そして妻に邪恋を抱くサイコドクターがぶつかり合うラストの展開が、それまでとは打って変わったスピードと緊迫感で、特にサイコドクター(!)唐澤が邪魔をするヒロインに匕首を突きつけられても動じるどころか、逆に低い声で静かに恫喝するところなど、ゾッとするようなシーンでした(その前のシーンでは、笑いが起こるほどのユーモラスな言い回しもあった唐澤だからこそ余計に)。中間字幕はほとんど小見出し程度なので弁士がいないとなかなか十全に鑑賞することのできない作品だと思います。そして音楽は、冒頭からずっと奏でられているような印象があったのですが、途中でそこまで鳴っていないことに気がつきました。それほど、映画と説明と伴奏が渾然一体となって感じられたのだなあ、と感じ入った次第であります。

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