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目で見て口で言え「食物園」「衣人館」

渋谷のギャラリールデコで牡丹茶房食物園」「衣人館」を見て来ました。以前ギャラリーしあんで「床這う君へ」(江戸川乱歩の「芋虫」のオマージュのような作品だったと記憶しています)を見て以来です。さて、今回は通常の二本立て上演というのとは違って、ルデコの3階と4階で上演される形でした。
先に見たのは「食物園」です。

女は食べ続けていた。
蔑まれ、騙され、嘲笑われても、
返す言葉を飲み下すように女は食べ続けた。
消費するだけの自分が、
いつか誰かの糧となることを祈りながら。
これは、食い物にされ続けた女が、
理想の園を見つけ出すまでの物語。

翌日に「衣人館」を見ました。久しぶりに行った劇場は、入口から記憶の中のルデコとはまったく違っていました。

女は着飾ることを愛していた。
誰よりも綺麗な、
誰かのかけがいのないモノになりたい、
そんな建前で自分の心を飾り立てていた。
最も美しい本音を、ひた隠しにして。
これは、偽ることをやめた女が、
人とは異なるモノへと成れ果てるまでの物語。

何しろどちらの主人公も一見リアルには見えないけど実は絶妙にリアルで、その絶妙さが見ているうちにじわじわとボディーブローのように効いて来るのであります。同じマンションの別の階に住むこの二人の女性は、いわゆる社会にはまったく適合出来ていないのかもしれませんが、その勁い意志は(最初は後ろ向きにしか見えなかった「食物園」の主人公も)どこまでも一直線に突き進み、いっそ清々しいほど痛々しい結末を迎えます。傷口に染みるお話でありました。「食物園」には来月の舞台でご一緒する坂井さん、「衣人館」には去年舞台でご一緒した飯智さんが、それぞれの主人公の兄弟として非常に重要な役を演じておられました。特に飯智さんは、ご一緒したときとはまた違った面が見れてよかったです。また、何度か舞台を拝見している赤猫座さんが両作品で演じているシロアリという役の存在が非常に面白かったのでした。肋骨蜜柑同好会の「2020」ではっきり意識した丸本さん(「衣人館」)が、また静かで強烈な存在感を示していました。クールな悪役だった田久保さん(「食物園」)は、そういえば昨年見たしあわせ学級崩壊の舞台での印象を上書きしていて、このキャラクターで一本お話が見たくなりました。

チラシも素敵

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