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目で見て口で言え「アリス・ギイ短編集」

アリス・ギイという監督が100年以上前に撮った短編映画を横浜シネマリンで見てきました。世界初の劇映画を監督したアリス・ギイは、1000本以上の作品を残し、ハリウッドの映画製作システムの原型を作ったといわれていますが、映画史からはその存在はほぼ抹殺されているそうです。ワタクシ、以前ある無声映画の台本を書くために資料を探しているときに、英語版のWikipediaで彼女の存在を知りました(残念ながら、彼女について気にはなったものの深く調べることはありませんでした)。2018年にアメリカで公開された「映画はアリスから始まった」という彼女の足跡をたどったドキュメンタリー映画が今年日本で公開されており、それを記念して短編集がシネマリンで2日間だけ上映されたのでした。短編集のラインナップは以下の通り。

『催眠術師の家で』Chez le magnétiseur(1分/白黒)1898年
『世紀末の外科医』Chirurgie fin de siècle(2分/白黒)1900年
『オペラ通り』Avenue de l’Opéra(1分/白黒)1900年
『全自動の帽子屋兼肉屋』Chapellerie et Charcuterie mécaniques(1分/白黒)1900年
『カメラマンの家で』Chez le photographe(1分・白黒)1900年
『フェリックス・マヨル 失礼な質問』Questions indiscrètes(3分/染色 → 彩色)1905年
『マダムの欲望』Madame a des envies(5分/白黒)1906年
『フェミニズムの結果』Les Résultats du féminisme(8分/白黒)1906年
『キャスター付きベッド』Le Lit à roulettes(4分/白黒)1907年
『ソーセージ競争』La Course à la saucisse(5分/白黒)1907年
『ビュット=ショーモン撮影所でフォノセーヌを撮るアリス・ギイ』Alice Guy tourne une phonoscène(2分/白黒)1907年
『バリケードを挟んで』Sur la barricade(5分/白黒)1907年
『銀行券』Le Billet de banque(12分/白黒)1907年

最後の「銀行券」以外は10分以内、3分以内のものが半分以上あります。中でもびっくりしたのは「マダムの欲望」。妊娠中の大きなお腹を抱えたマダムが、欲望を止められずキャンディ、タバコ、アブサンなどを奪い取って美味しそうに味わう(ベビーカーを押しながらついてくる夫はオロオロするばかり)。そして最後にキャベツ畑で……。この落ちがワタクシは大好きです。ドライでブラックな笑いを誘う「世紀末の外科医」、男女を逆転した世界描く「フェミニズムの結果」などなど、これだけの作品を100年、いや、120年前に作っていた、ということは驚きです。

ドキュメンタリーの方も見に行きたいと思いつつ、スケジュール帳と睨めっこをしているワタクシであります。

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