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セルフビルドという選択肢 〜セルフビルド3類型〜


セルフビルドと僕

セルフビルドという言葉


私が東京に住んでいた時に、「自分で建物を建てている岡啓輔さんという人がいる。」と、アート関係の知人から聞いたことがあった。

「セルフビルド」という言葉を知ったのはその時。セルフビルドとは、自分で自分の家を作ること。

岡啓輔さんが自分で建設している「蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)」という建物の名前もインパクトがありました。
岡さんの存在を知ったのは2013年ごろなのですが、もう完成しているのかなと思いきや、現在も建設中とのことです。

蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)
ABC-MART #21 200年後のあなたへ。奇想のセルフビルド建築に刻む、
ポストマン・シューズの“無重力舞踏”/岡啓輔+吉田山 より

「セルフビルド」という選択肢

前からセルフビルドということは知っていたのですが、今になって調べ始めているのは「セルフビルド」が自分の中で未来の選択肢に入って来たからです。
僕が、出身地である大阪から、滋賀県に移住した一つのポイントとして『「古民家」を自分なりに改造して住む』がありました。古民家リノベーションです。

滋賀県に移住してから物件をずっと探しているのですが、条件が合わなかったり、いいのが見つかっても先に売約済みになったりと中古物件はまだまだ見つかっていません。
街を歩くと、良さそうな建物はありますが、先祖代々受け継いできた大切なお家ですのでお話が前に進まなかったりしました。

一方で、一時利用に関して「スペースを使っていいよ」などのご厚意もいただきましたし、物件を探すにあたりたくさんのご協力もいただくことができました。ありがとうございます!

趣のある古民家 滋賀県近江八幡安土町


ちなみに、条件としては自宅兼アトリエ・倉庫的な場づくりをしたいので、
①居住スペースとアトリエ的なスペースが確保できること
②菜園的な空間が確保できること
③駐車スペースが最低2台
④値段が安いこと
⑤滋賀県の近江八幡周辺であること
*もし、良さそうな物件があれば教えてください☆
こんな物件が安い値段ではあまりないのです。

物件探しをする中で、HOMESなどのWEBサイトで「地図検索」で探していると
中古物件以外にも、「土地のみ」のよい物件がいくつか見つかりました。

地図検索からなら立地が一目瞭然 HOME’Sより


2020年ごろからおおむね3年間、物件を探す中で、自分の条件を満たす物件に巡り合っていなかった中で立地条件・一定の広さ・値段が比較的安い「土地のみ」の物件も視野に入れた方が良いなと考えてきました。

そこで、出てきたのが「セルフビルド」という選択肢でした。
「土地のみ」なので、建物を建てる必要がある。
でも、新築するとしたら自分で作ってみたい(予算的にも安く。。)。

セルフビルド3類型

それから「セルフビルド」について調べてみると、
セルフビルドといっても様々な事例があったので、3つに整理してみました。

①ガチDIY系
 *ログハウスなどの建物を大部分を自分の力で建てるもの
②ハーフビルド系
 *自分でできるところはするというスタンスのもの
③芸術系(仮称)
 *平均的な建物とは違ったオーラが醸しでているもの

①ガチDIY系

Akimama  
<著者に聞く>人生最大のDIY!マイホームを自分で建てる。阪口 克『家をセルフでビルドしたい』

「セルフビルド」で、まずはじめに思い浮かんだのはこの「ガチDIY系」です。
まずは、「セルフビルド」に関する書籍についていくつか読んでみました。
「ガチDIY系」とは、基本的に全部自分で立てる意気込みでセルフビルドをしているものです。
阪口さんという方の本は、妻さんや子どもも登場して物語としても面白いです。

https://x.com/katumi_sakaguti/status/1738851837909127555?s=20

水道工事については認定された業者が施工する必要があるため自分ではできない部分がありますし、基礎工事は業者に頼んだりすることもあるそうです。
新築の確認申請は一定規模以上は建築士の資格が必要になることや、参考になる建築資料、建設工程などセルフビルドのためには当たり前ですがたくさんの学びが必要です。人生における一つのミッションとして「セルフビルド」はとても魅力的です。
しかし、耐震性や快適性、時間がかかるなど心配。
でも、自分のこだわりを住まいにも入れたい。そんなニーズが現代にはあるみたいです。そこで、登場してくるのが「ハーフビルド」というものです。

②ハーフビルド系

株式会社ハーフビルドホーム 「できるところはすべて自分たちで 2022.11.2 お客様インタビュー」より

ガチ系のように、ほぼ全ての工程を自分が関わって建設するのではなく
できるところを部分的に関わるというものです。
これは、セルフビルドについて調べていると「ハーフビルド」にも対応する建築関係の会社さんの存在が複数でてきました。

ハーフビルドは主に「内部の施工」に関わることが多いようですが、
近年のDIYへの注目、カスタマイズした暮らしへの志向などなど、住まいに関しても自分が関わる、自分好みにしたいニーズがあるのでしょう。
また、セルフビルド全体的に言えることですが、大変だけど作業自体が楽しいということも魅力の一つだと思います。

株式会社ハーフビルドホーム  「ゴールデンウイーク中のハーフビルド」より

ちなみに、ガチ系セルフビルドに関しても、「セルフビルド支援」事業を行っている風の森さんという会社さんもあります。
自分で家を建てるという夢の支援も素敵ですね。
こんな仕事もいいなと思いました。

③芸術系(仮称)

筑摩書房「バベる! 自力でビルを建てる男」より

芸術系(仮称)のセルフビルドとは、平均的な家の見た目とは大きく違うものや、
規模が格段に大きいなど、かなりふりきっているものです。

最初に紹介した、岡啓輔さんの「蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)」はまさにこれですね。「三田のガウディー」とも呼ばれることもあるそうです。
建物の見た目もすごいですが、
内部のコンクリートを使った形、模様、レリーフ的なものも面白みがあります。
岡さん自身が解説している動画は内部の様子もわかりやすいのでおすすめです!

蟻鱒鳶ル」紹介ムービー 岡啓輔『バベる!』(筑摩書房)発売記念

ちなみに、蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)には月刊誌「月刊 蟻鱒鳶ル売り鱒」があります。美学校の同級生の木村奈緒さんが、編集に関わっているようなのでいくつか買わせていただきました☆

月刊 蟻鱒鳶ル売り鱒

・沢田マンション 〜夫婦が独学・自力で建てたマンション〜

沢田マンションHPより

セルフビルド界では伝説的な物件。戸建てではなく、マンションです。
夫婦が、独学と自力で制作したマンション。

沢田マンション外観 「artscapeレビュー 金峯神社、沢田マンション」より
沢田マンション スロープと階段 「artscapeレビュー 金峯神社、沢田マンション」より
沢田マンション 屋上庭園 「artscapeレビュー 金峯神社、沢田マンション」より

圧巻のスケールです。屋上庭園には池にはびっくりです。
ご夫婦がひとつひつつ作り上げていった桃源郷です。
一定の、領域を超えていききったセルフビルド建築です。

・徳島のセルフビルド喫茶「大菩薩峠」

大菩薩峠外観 『四国お出かけスポット「大菩薩峠(だいぼさつとうげ)廃墟のような阿南の名物カフェ♪(徳島県・阿南市)」より』

つづいては、大量のレンガで作られたお城のような喫茶店「大菩薩峠」
レンガも頼める業者さんが見つからなかったらしくて、自分でレンガも焼いたみたいです。

大菩薩峠外観 『四国お出かけスポット「大菩薩峠(だいぼさつとうげ)廃墟のような阿南の名物カフェ♪(徳島県・阿南市)」より』

・シュヴァルの理想宮 フランス郵便配達員によるセルフビルド
33年の月日を経て宮殿の「建設」は終了したとされます。膨大な作業量に圧倒されます。いつか行ってみたいです。


フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』シュヴァルの理想宮より
Gzen92 
Pabix - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=235594による

装飾が凄すぎて、生き物のようなとてもつもない存在感があります。
映画化もされました。

https://www.youtube.com/watch?v=UNNcvUg-d34


この芸術系は人生をかけて取り組んでいることが伺えます。

自分が「セルフビルド」という選択をする時に、
①ガチDIY系
②ハーフビルド系
③芸術系(仮称)
この3つの類型のうちどれに惹かれるのか。
どれが、今現代の自分にとって適したものなのか。

自分としては、①ガチDIY系を考えていたのですが、
③芸術系(仮称)の要素もいいなと思ってきていまして、、笑
セルフビルドといっても実にいろんな方向性があるということがわかりました。

今日はこの辺で。

その他 参考資料・メモなど

・伴野一六さん

伴野一六さんがシュヴァル達と同じに何十年も賭けて、独人で作った家は、ヤシの実ならぬ、黒潮に乗って浜辺に辿り着いた漂流物の寄せ集めでもあった。貝ガラや砂はとも角、木片も様々な断片も、自作の家には実に多くの漂流物が嵌め込まれ、集積されていた。TVやバックミラー、自動車のフロントガラス等の工業製品のゴミと、それ等、黒潮と共に打ち寄せられた漂流物が併用されていた・・・中略

カバーコラム6 石山修武 「057 伴野一六さん亡くなるの報に接して」


・沢田マンション


・岡さんについて

・大菩薩峠

・シュヴァルの理想宮

・ワッツタワー

・ハーフビルド

・阪口さん

・ハーフビルドホームさん

・月刊 蟻鱒鳶ル売り鱒 編集 木村奈緒さん


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