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夏と花火と私の死体の日記

読書感想文なんて小学生ぶりだぁ。

乙一さんのデビュー作、夏と花火と私の死体を読ませていただきました。
          面白かった。
            完

最初僕はサスペンス小説の舞台でジュブナイルを描く試みなんだな、とそう思っていました。なんでジュブナイル小説としての感想を書きますね。
未成熟な男の子と女の子とそれ以外の何か、がいて一緒に苦難を乗り越えて目標を達成する、オーケー通ってよしです。
問題となるのはここからで当初三人の少年少女の物語だったものが、1人が死体になって、一人と一人の一つのお話に変化する。

ところで既読の方に質問なんですけどこのお話って主人公誰だと思います?
僕は漠然と弥生かなぁと思います、かわちぃしね。
非力で怖がりですがヤルときはヤル女の子です、指先一つでダウンです。

語り手(?)の五月は動的に物語を動かす能力はありません、しかしギミックとしてE.T.の役割を兼用しているあたりうまいなぁと思います、こういう登場人物に無駄のないお話好きです。
今更ですがこのお話は、「9歳で、夏だった」五月の回顧録なんですよね。
かごめかごめの遊びをしながら、そういえばこんなことがあったんだよとお友達に話してるんじゃないかなぁという解釈です。
信用ならない語り手も動く死体もサスペンス読んでたら時々出てきますけど、信用ならない動かない死体の語り手は初めてかもしれない。
子供らしい平易で柔らかい文章や調子に乗った言い回しをしたり、弥生や登場人物の心情を代弁したりとあくまで五月のままな素朴な語り、怖いはずなのに全然怖くないんですよね。うらめしやとは言わない当たり前に幽霊がいるっていう感覚にぞわぞわします。
地の分で幽霊がでそうとか言い出すのはブラックで笑えますが。読み返してて一番悩んだのがのこの子がTPS視点で語っているのか、伝聞を組み込んでいるのかでした。
この辺は後でもう一回検証します。

最後に健くんです。
僕一回目読んだときにこの子の立ち位置ってよくわからなかったんですよ。
ただ二回目読んだときに納得して、ああこの子は探偵ものにおける偽探偵、4人目の人物に対する人物なのだなと、つまり犠牲者ですね。
今回のお話の被害者は五月、加害者は弥生。健くんは共犯者で当て馬で犠牲者ですね。
この小説読んでて一番物悲しい描写は、弥生を必死に守って庇う健くんとそれをもはや嫉妬もできずただ描写する五月の視点だと思います。
繰り返されるその描写こそが弥生の犯した罪そのものという気がします。
ワトソン君に関しては正直そこまで語ることないんですよね、ただ大人でないでも子供よりできることの多い導き手、兄、年長者。
冒険する子供だからこそ強く賢く愚かでいなければならない、いや色々と気づいてそうですけどね、それを込みで楽しんでいたんじゃないかという気がします、男子ってそういうもんです?

で、4人目ですよね。
緑さん。探偵兼ホラー映画の怪物兼、大人の導き手。
やなやつ、やなやつが来た!ってのが最初の登場の印象でしたね。オチ要因ですね、もしくは物語は拡大して少年少女の物語はここでオシマイなのか。
連続誘拐殺人鬼です。
でも要領がよくて頭がいいいたって普通のねーちゃんって感じですね。
弥生がそうしたように、緑も手を伸ばしたらそれができたから続けてるという気がします。
描写的にもあんまり隠す気ないんですよね、なのでわかる人はかなら早くにわかると思います。

最終章の前に*で段落が空いているんでおそらくここでもう一回時間が経過したんだと思います。健くんは連れてかれたんですかね、僕はそうじゃない方がお話として綺麗だと思います。

ふくらみ続ける風船を見るように時間を意識させる言葉描写が多い小説でした。表題の"夏"と"花火"と"私の死体"もそうですが。田干し、アイス、火、
朝、同じ時間は誰かによって繰り返されるけど二度と戻ってこない。夏の明け方に見る悪夢のような楽しい苦しいおはなしでした。

夏は終わり秋が来て 私の死体 は冬の中で遊び続けます。
二人じゃ始められなかったかごめ遊び、今度はたくさんのお友達と終わらないかごめ遊びを。

いついつ出やる?
後ろの正面だあれ?

一発書きで読みづらい文章ですみません。
それではこの辺で。

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