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20代前半ゲイ 友達が友達じゃなくなった瞬間(2) #50

大学を卒業して僕は地元の企業に就職をしました。
僕の配属先は県庁所在地から車で片道二時間半ほどの場所でした。
地元までは車を二時間走らせれば帰れる距離でしたが、近所に知り合いが全くいない環境は僕にとってとても心細かったです。

そんなときにゲイマッチングアプリで知り合った配属先の近所に住んでいる人と意気投合し友達になりました。彼は僕より1歳年上で金髪・ピアスもたくさんしていて足首にはタトゥーが入っていました。
昔はけっこうやんちゃしてたんだよとタバコを吹かしながら話していました。

彼は仕事をしていませんでした。
実家に住んでおり、のらりくらりと毎日なんとなく楽しそうにしている印象がありました。

彼はいつも6人組のグループでつるんでいて
僕もその中に入れてもらいました。

その6人はみんなゲイで、全員20代。
その彼と同じように髪の色が明るかったり、ピアスをたくさん開けていたり
悪い言葉を使うと“チャラチャラしてそうな”そんな印象を受けました。


正直、最初は少しビビっていました。


彼らは僕のこれまでの人生において、絡んだことのない人種の人たちでした。
絡んだことがないというよりは、交わることを避けていたという方が適切かもしれません。


しかしそんな僕と彼らは意外にもすぐに打ち解け、仲良くなるまでに時間はかかりませんでした。気づけば一週間のうちの半分くらいは彼らと過ごしていました。

僕は残業が多くて、いつも仕事の帰りが遅かったのですが
帰宅すると連絡もなく玄関の前に彼らがいて僕の帰宅を待っていることも多々ありました。

「今日も遅かったなー。今からご飯食べに行こうぜー」

と言った感じで軽いフットワークで僕をいつも連れ出してくれていました。


彼らはとても自由で、僕はそんな彼らと一緒にいると仕事での嫌なことも忘れることができました。


みんなでお弁当を作ってお花見に行ったり
よくカラオケやボーリングにも行きました
近所の銭湯にもよく行きました
僕の家で、みんなで集まって朝まで飲んだりもしました。



彼らは僕にとって心許せる友人たちでした。



ある日、グループのメンバーの元彼が県外から地元に帰省してくるので
ひろトにも紹介したいと言われました。


そしていつもの6人組とメンバーの元彼とで遊びました。


僕はメンバーの元カレくんと意気投合してLINEを交換し
その日以降も時々、その元カレくんとやり取りをしていました。


やりとりの中で、今度元カレくんが帰省するタイミングで二人で遊ぼうという話しになり
みんなで会った二ヶ月後に、元カレくんと二人で遊びました。







それから数日後、いつもの6人と遊んでいたときに何気なく


「そういえば、こないだ元カレくんと遊んだよ」


という話しをしました。


その話しをしたときに、一瞬空気が変わった気がしました。




(え、なんかまずいこと言ったかな…)




なんとなくの気まずさを感じました。


特に、元カレくんと以前交際していたメンバーの表情が一瞬曇った感じがしました。


「いの間に、仲良くなったん?」
「二人なんかあるんやない?」
「え、やったの?」


こんな感じで質問攻めでした。


僕は、元カレくんと純粋に仲のいい友達になれると思っていたし
下心もありませんでした。


でもそのメンバーからは、下心で会っているんじゃないかと
なんとなくそういうふうに疑われている雰囲気を感じました。



その日を堺に、僕はその6人の友人たちと連絡が取れなくなりました。
LINEを送っても返信がくることはありませんでした。


僕はグループから孤立しました。





とても悲しかったです。





そして数日後に元カレくんから連絡がきました。
元カレくんも、僕と二人で会ったことをメンバーから咎められたようでした。

でも元カレくんは僕の味方をしてくれて
メンバーにもひろトのこと無視しないであげてと言ってくれていたようでした。


元カレくんの話しを聞く感じでは
メンバーに声をかけずに二人でこっそり会っていたのが許せない
というのが僕がメンバーから無視されるようになった理由だったみたいです。


ほんの数日前までは、すごく仲が良かったと思っていたのに
こんなに簡単に人間関係って切れてしまうんだって思うと本当に悲しかったです。



そしてそれからまた数日たってから
メンバーの一人が連絡をくれました。

そして事情を教えてくれました。



「ひろトが元カレくんと二人で会ってたことにAが怒ってて、もうひろトとは連絡とるなってみんな言われたんだよね。本当にごめんね」


Aはグループの中でも一番決定権がある存在で、元カレくんの元カレでもありました。
Aは気性が荒く、怒らせるとみんな手がつけられないような存在でした。


なんとなくAがそういうふうに仕向けたんだということは分かっていました。


事前に元カレくんと会うことをメンバーに伝えておけばよかったのか
そもそも二人きりで会う選択をしなければよかったのか


いろいろ考えてしまうけど
でもきっと僕は彼らとは元々、合わなかったんだと思います。


彼らとは約1年半くらい仲良くさせてもらいました。
人懐っこくて自由な彼らのことが大好きでした。

新社会人、新天地での生活。
何もかもが不安だったときに彼らと出会い
毎日毎日、仕事に疲弊していた僕は
彼らとゲラゲラ笑ったり、はしゃいだりする時間にたくさん救われました。

結果的に僕は彼らとうまく付き合っていくことはできませんでしたが
僕は彼らと出会えてよかったと思っているし、彼らにとても感謝しています。

彼らを責めたい気持ちはないし、むしろ嫌な気持ちにさせてしまって申し訳なかったなと思います。


僕は今回の件で6人の友人を失いましたが、ありがたいことに元カレくんとは今でも仲良くさせてもらっています。もう10年以上の付き合いになります。
僕が地元に住んでいるときには元カレくんが帰省してくるタイミングでは必ず遊んでいたし、恋愛の相談もたくさん聞いてもらいました。
失恋したときに何度か泣きながら電話をかけたときも優しく話を聞いてくれました。


当時は、友人関係も恋人関係もうまくいかない経験が多かったですが
こうやっていろいろな失敗がありながらも、ずっと長く友人でいてくれている元カレくんのような存在がいてくれることが
本当に嬉しいし、失敗した体験があるからこそ
僕のことを大事に思ってくれる友人がいることのありがたさを実感できるんだと思っています。


失敗した体験も含めて、僕は本当に人との出会いに恵まれている人生だと思います。


これからも一つ一つの縁に感謝を忘れずに、僕のことを大切に思ってくれている人たちを大事にできるようにしていきたいです。

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