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僕の職場にはオネエがいる #57

僕の職場にはオネエがいる。


その人は50代前半の独身男性。
見た目は普通のどこにでもいそうな年相応のおじさん。

しかし所作、言動、立ち振舞が明らかに“オネエ”なのである。
彼はとても陽気な性格で誰に対しても気さくで話しかけやすく、職場のムードメーカー的存在だと僕は思っています。


僕は約半年前に、転職をして今の職場に就職しました。
慣れない環境の中で、気さくに話しかけてくれたのはその“オネエ”でした。


最初はびっくりしました。

ナチュラルにホゲている(オネエ言葉を話している)彼をみて、混乱しました。

僕の偏見ですが、僕たちのようなセクシャルマイノリティの人たちって
当然、職場では自分のセクシャリティは隠しているものだと思っていて
たとえ、普段プライベートでホゲていたとしても
自分の所作や立ち振舞い、喋り方はその場に合わせていくものだと
そう思っていました。


僕の中の常識が壊された瞬間でした。



そして職場の人たちも、そのオネエのことを自然と受け入れていました。
特別扱いするわけでなく本当に自然なんです。


田舎出身の僕からすると、出る杭は打たれるイメージがあって
表向きは普通に接していても
本人のいないところで陰口を言っていたりとかそんなイメージがありましたけど
そんなこともありませんでした。


彼がセクシャリティを表向きにカミングアウトをしているわけではないけど
だけど僕は、彼はきっとゲイだと思う。




実は先日、そのオネエに誘われて飲みに行ってきました。
僕とオネエと、そのオネエの女友達の三人で飲みに行きました。


ちなみにそのオネエの女友達というのは僕は全く面識がなく、初対面でした。


僕はてっきり、職場の他のメンバーも誘ってくれるのかと思いきやそういうわけでもなく
なんならこの流れでマルチ商法の勧誘なんてされちゃうのか…?

なんて疑いたくもなりましたけど
お誘いしてもらったことは素直に嬉しかったので
僕はそのオネエと、オネエの女友達との三人の会合に臨みました。

結果的にはすごくたのしかったです。
そのオネエの女友達もとても気さくで素敵な方でした。


2時間ほど、オシャレな個室の居酒屋での会合が終わったあと二次会に行こうかという雰囲気になっていました。

僕は先に並んで歩くオネエとオネエの友達の後ろをゆっくりとついて歩いていました。





「ねえ、このあとどうする?二丁目でいいかな?」

「え、でもいいの?あの子に言ってないでしょ?」

「まあでも分かってるでしょ、なんとなく」




二人の会話が聞こえてきました。

どうやら新宿二丁目に行こうという話しをしているようでした。

僕の中で、疑いが確信に変わりました。

いや、疑う余地もなかったけどやっぱりゲイだったんだ。


そして二丁目に連れて行こうとされているこの状況が本当にカオスすぎると感じました。
僕は彼にも職場にもセクシャリティをカミングアウトしてなかったし、今のところはカミングアウトするつもりはありません。

二丁目に行って、もし友達に会ったりでもしたらどうしよう。
友達に会わなかったとしても、ゲイバーでボロが出てゲイバレしちゃったらどうしよう。

と、いろいろと頭の中を考えが巡りました。




それから数分が経った頃。
オネエの友達が急にその場にしゃがみこんでしまいました。

一次会でけっこうな量のお酒を飲んでいたので、歩いている間に酔いが回ってしまったようでした。

僕はとりあえず近くのコンビニに走り、水を購入。
2人のもとに戻るともう彼女はいませんでした。

僕がコンビニに走っている間にタクシーを捕まえて彼女は帰路に就いていました。

僕と職場のオネエ二人きりになってしまいました。

このまま二次会に二人で行ってもよかったのですが、二丁目に行く流れになると僕は少し気まずく感じるので

二次会は次回、三人で行きましょうと提案してその場で解散しました。




今思えば、僕もその場で彼にカミングアウトしたかった。
そんなふうに思ったりもします。

僕も、僕自身の話しをしたい。
素直にいろいろ話したい。

僕は、僕に向けられる差別や偏見の目が怖い。
きっと僕が思っているほど、周囲は僕に関心なんてなくて
僕がゲイだとカミングアウトしたところで

「へえー、そうなんだ」で終わる話しなのかもしれない。

だからこそ、僕は彼の強さの秘密が知りたい。
どうしてそんなに堂々としていられるのか。
過去に僕と同じように悩んだり、苦しんだ経験はなかったのか。
どうやってそれを乗り越えて今、そんなに強くいられているのか。

僕から見える彼は、とても強い人だ。

僕はそんな彼の強さの秘密を知りたい。
僕も強くなりたい。

いつか僕も、僕自身のセクシャリティを打ち明けて生きていけるような
そんな生き方ができる未来を作っていきたいと
そんなふうに思うのでした。

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