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Rose and Nightingale "Güller ve Bülbüller" セルフライナーノーツ

先日、発表したアルバム「Rose and Nightingale "Güller ve Bülbüller"」のライナーノーツを書いてみました!どのように作曲されたか、制作秘話など盛りだくさんです!作品と共にお楽しみください!

1.小さな劇場で- In a small theater

この曲は春休み、自分の多くの曲がそうであるように、大阪の実家の電子ピアノを何気なく弾いている時に思いついた曲。このメロディーが実家の電子ピアノから奏でられた時、雪が降っていて、そこに湖と水車がある映像が見えた。この架空の映画のサウンドトラックというコンセプトでアルバムを作ることはこの曲ができる前に決めていたので、私はこの曲を作曲している時、このアルバムに使える、そして歌詞をつける必要はないと思った。このアルバムのタイトルは「Rose and Nightingale」なので当然、表題曲をオープニング・トラックにしようと思ったが、この曲の描く風景はバラとナイチンゲールの住む街、つまり舞台を描いていると思った。だから、私はこの曲をオープニング・トラックにした。

2.Rose and Nightingale "Güller ve Bülbüller"

この曲は2022年の11月に当時住んでいた大学の寮でガットギター片手にメロディーを口ずさみながら作った。最初、歌詞を付けようとも考えたがどうもぴったりと来る言葉が浮かばなかった。そして、少しの間、「ディズニーっぽい曲」という呼び名でiPhoneの中に眠らせておいた。年も明け、2023年の2月にトルコの大地震があった。自分はその時、これまで自分の言いたいこと、住みたい世界について音楽で表現してきたが、それは少しだけエゴイスティックな音楽になっていないかと思いだしていた。そんな時、このトルコの地震のニュースを聞き、一度、誰かに捧げる祈りの音楽を作ってみようと思った。そして、私はこの曲をトルコの皆さんに捧げることにした。幸いその時、まだ大学の寮に住んでいたので、そこで知り合ったスリランカ人の友人にトルコ人の友人を紹介してもらい、Rose and Nightingaleのトルコ語の翻訳をお願いした。ちなみに彼の家族は無事だったとのことで大変安堵したことを覚えている。スリランカの友人とそのトルコの友人とは今でも交流が続いていて、今でも互いの誕生日を祝いあったり、一緒に勉強したりしている。私はこの曲を作って本当に良かったと思っている。

この曲のアルバムヴァージョンの最初の鳥の鳴き声は残念ながらナイチンゲールの鳴き声ではなく、自分が散歩する時に集めていた名も知らぬ鳥たちの朝の鳴き声です。

3. Forest

この曲は2022年の8月、実家の大阪に帰省しているときに作った曲。この時期、私はスランプといってよいほど曲が浮かばなかった。私の好きな作家に宮本輝さんがいる。彼が彼に小説の魅力を教えた「あすなろ物語」を書いた井上靖さんに「書けないときはどうするんですか」と聞いたときに、井上靖さんは「書けないときは、書くんです」と答えたらしい。この高度な会話を引用するほど私の作曲は立派なものではないが、私はこの曲をとにかく書いた。ギター片手にひたすらこのシンプルなメロディーを奏でた。私はこの曲の意味が分からなかった、というよりは言葉で表現できなかった。この曲を描いているのは今まで描いていた人間の日常ではなく、自然やその根底に流れるリズムのことについて描いた気がする。どこか深層心理についての曲。そんなわけで自分すら未だこの曲の解釈に困っているが、私はこの曲、どこまでも不思議に満ちたもの、つまり自然の象徴としてForestと名付けた。もし、これを聴いてくれたリスナーの皆さんがこの曲に新たな解釈という息吹を吹き込んでいたただければ幸いです。

4. Run! Little Girl!

この曲は笑っちゃうほどシンプルな曲。誰だって陽気な気分の時、鼻歌でこんなメロディーを思いつくだろう。本来ならスケッチ程度に録音してiPhoneの片隅でずっと眠っていたかもしれない曲である。しかし、この曲を思いついている時に見えた小さな女の子が港町でサイダーを持って、まるで逃げるようにして走る情景が映画のワンシーンみたいだなと思いこの曲をこのアルバムに加えることにした。ちなみ、エンディングの不思議な終わり方は、私の大好きなオードリー・ヘップバーン主演の「ティファニーで朝食を」の「ムーン・リバー」の不思議な終わり方のオマージュ。あの映画、原作の作者トルーマン・カポーティのイメージでは主演はオードリー・ヘップバーンでなくマリリン・モンローで、最後の原作と違うハッピー・エンドな終わり方に激怒したという話をどこかで読んで、原作と映画版の両方が好きな私は小説と映画の関係は面白いなと思った。やっぱり、「ムーン・リバー」はオードリー・ヘップバーンに唄ってほしいなと思う。

5. ひぐらし-Higurashi

この曲は2022年の8月、実家の大阪に帰省中にもらったばかりのガットギターで描いた曲。実家はひぐらしの鳴き声が聞こえるような田舎ではないが、夏の夕方といえばなぜか私はひぐらしの鳴き声を連想する。夏休み、私には時間がたくさんあったので、ひぐらしの鳴き声をひたすらにギターで表現してみようと思った。それがこれである。音源で使っているのはマイクで録音したものではなく、iPhoneのボイスメモにあったスケッチ段階のものをそのまま使っている。実はこのアルバムにはそういった自分のどこで使ってよいか分からない、サウンドスケープを世に出す目的もあった。あと、実はこの曲を作ったのは私であるが最初のコード進行が全く思い出せない。誰か教えてください。

6. Can I Take a Picture?

この曲は今年(2023)の3月、春休み、実家の大阪に帰省している時に書いた曲。最初はピアノの音でクラシックっぽい曲調にしようとしたが、シンセの音で遊んでみようと思い、こんな曲調になった。遊びで作ったのと、他の曲と曲調が違うのでこのアルバムに入れるか迷ったが、自分の春休みの思い出の一つとして入れることにした。今回のアルバムは真面目な曲とスケッチブックに鉛筆を使って、走り書きで描いた下書きのイラストみたいな曲を混在させている。

7. Mr. Wang’s Theme

この曲はこのアルバムの最後の曲であるCold Windに次いで2番目に古い曲。たしか高校3年生の終り頃に作ったと記憶している。その当時、YMOやFirecrackerのオリジナルの作曲者であるマーティン・デニーのエキゾチカのサウンドにハマっていて、その影響でこの中国っぽいメロディーを書いた。録音は15分くらいで終わった。ほぼ即興で作ったようなもの。その後、私はこの曲をどこかで使おうと思い2年間、シンプルにChinaと名付けて、フォルダに保存していた。今回、架空の映画のサウンドトラックというコンセプトでアルバムを作ると決めたのでこの曲を使うのに絶好の機会だと思い、アルバムに収録した。タイトルをMr. Wang’s Themeにしたのは、この架空の映画にお調子者の王さんという中国人の登場人物が出てきて、主人公を予期せぬ波乱に巻き込むみたいな架空の設定も面白いと思ったからである。

8. Cold Wind

この曲は私が高校3年生だった2年前の10月にYouTubeで出した曲である。この頃、私は心の片隅に冷たい風が吹きつけているかのような訳も分からぬ、少し寂しい気持ちを抱えていて、この曲を作った。最近、この曲を作った日の日記を見返してみたら、なんとこの曲は自分が夜、シャワーを浴びている時に思いつき、慌てて、ピアノでスケッチを録音したと書いていた。我ながら、こんな曲の思いつき方はすごいなと思った。よく音楽家はメロディーが降ってくると言う。私も時々、この曲のように頭の中でメロディーが降ってきることもあるがそれはしばしば起きることはない。私はどちらかと言うと、机の前に紙と鉛筆を用意して座って、曲を仕上げていくタイプ。それでも、自分にメロディーが降ってくる時はある。それは自分の中に何か強い感情を抱いていたりする時が多い。自分の頭の中で、耳をつんざくような大音量で不快なメロディーが聞こえてきたこともある。その時は、少しの間、耳鳴りが続いたことを覚えている。あと、ビートルズのイエスタデイのように時々、夢でメロディーが聞こえるときもあるが、それは残念ながらあまり使い物にならないことの方が多い。やはり、自分にとって音楽とは言葉よりも強い自己表現の手段であり、自分を守ってくれるものなのであると、私は思う。

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