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『家出少女は危険すぎる』 小説概要・ネタバレ無し

「きゃああー、なっ、なにするのっ!」
少女にとって、それだけ叫ぶのが精いっぱいだったのだろう。
次の瞬間、男の脚が大きく舞った。足の甲が少女のこめかみに命中する。
少女は短い呻き声と共に、棒きれのように道に倒れた。
「ふっ、ようやく気づいたようだな」
溝口はそう言うと、少女の上に覆いかぶさってきた。
「大人しくしてろっ、殺すぞっ」

 高校三年生の向井陽菜は父親と喧嘩して家出をする。
 陽菜は高校時代の先輩のアパートに泊めてもらう。
 溝口恒也はネットカフェで見つけた少女を誘拐し乱暴する。
 殺されることを恐れた少女は溝口に狂言誘拐を提案する。
 陽菜の家に誘拐犯と名乗る男から身代金要求の脅迫電話がかかる。
 脅迫電話は一回きりで、犯人との連絡が途絶える。
 警察が捜査を開始する。
 家出した陽菜を泊めた女子大生の麻野久美子に事情を聞く。

「十月五日なんですが。どうです。ここに立ち寄ってはいませんか?
身長は百五十三センチ。こういう服装をしていたと思うんですがね」
山賀見はボウタイブラウスとスキニーデニムの写真を見せた。
「ああ、あの子か。ええ、来ましたね。でもキャリーケースは持ってなかったな」

星野は死体の肌と接触している土を慎重に剥がして小さなポリ袋に入れた。
「事故死でも自殺でもない。吉川線がはっきりある」
「どっちが先に殺されたか?」
「しかしなぁ、死体は殺人を犯せない。どっちが先であろうと」

 麻野久美子と坂本勇樹は二人で素人探偵さながらに事件を追う。
 警察の捜査で誘拐犯と思われた溝口恒也が死体となって発見される。
 陽菜が溝口を殺して逃走しているという疑惑が持たれる。
 陽菜の死体が発見される。死体には溝口に屍姦されていた痕跡があった。
 死体は殺人を犯せないから陽菜が溝口よりも先に死んでいたと考えられた。

約束の時刻、高木の部屋の玄関チャイムが鳴った。ターゲットは変装していた。
「金は?」
「用意しています」
「女は?」
「用意しています」
高木はターゲットの後ろを覗き込んだ。しばらくしてニヤリと笑った。
「そういうことか、いいだろう」

 久美子と坂本は陽菜が誘拐される直前に利用していたネットカフェを調べる。
 ネットカフェ店員の高木勝彦は真相の一部に気づき関係者に接触する。
 高木は自宅で死体となって発見される。
 刑事は坂本にサディスティックな性癖があることをつかむ。
 刑事に疑われた坂本は久美子にまで乱暴する。
 久美子は坂本が真犯人であって欲しいと思うようになる。

勇樹にはアリバイがある。そのことを勇樹から聞いていた。
でも、そんなこと、どうでもいい。勇樹が陽菜を殺した犯人であって欲しい。そして逮捕されて欲しい。久美子は目を瞑って祈った。

「死者が犯した殺人。溝口を殺したのは、やっぱり誘拐された向井陽菜なんだ。向井陽菜はもう死んでいる。だから逮捕できないんだ!」
「そんな……。先輩、疲れていますね」
岸谷は同情と失笑が混じった視線を山賀見に送った。

 坂本の疑惑は深まるが、坂本には鉄壁のアリバイがあった。
 刑事は久美子が次の被害者になることを懸念しボディガードをする。
 刑事は誘拐犯の溝口を殺したのは誘拐された陽菜だと確信していた。
 死体は殺人を犯せない。そのことがずっと刑事には引っかかっていた。
 刑事を訪ねて一人の女性が警察に来る。
 そこから重大なヒントをつかむ。そして真相に辿り着く。

「岸谷、おまえ、顔洗ってこい」
山賀見は濁声を無骨に重ねた。
岸谷は走り出した。刑事の仕事は辛い。しかし、若い刑事が成長する姿を見るのはいいもんだ。山賀見の視界の中、岸谷が駆けていく背中が流れた。


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