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【オリジナル小説】令和な日々 を書いています。 陽稲と可恋。ふたりの女子中学生を中心…

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【オリジナル小説】令和な日々 を書いています。 陽稲と可恋。ふたりの女子中学生を中心とした日常系小説です。 大きなストーリーはありませんが、現実世界と同じように作品世界も1日に1日ずつ進行します。 あなたも彼女たちと同じ時間を過ごしませんか?

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【オリジナル小説】令和な日々【目次】

陽稲と可恋。ふたりの女子中学生を中心とした日常系小説です。 陽稲は妖精のような外見のコミュ力Max系少女。 可恋は高スペック和風美少女。 大きなストーリーはありませんが、現実世界と同じように作品世界も1日に1日ずつ進行します。 あなたも彼女たちと同じ時間を過ごしませんか? 『令和な日々・プレストーリー編』 平成31年4月1日(月)「令和」日々木陽稲 平成31年4月2日(火)「桜」日野可恋 平成31年4月3日(水)「新しいクラス」藤原みどり 平成31年4月4日(木)「帰

    • 【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

      令和3年10月18日(月)「茶道部」真砂大海 「まるでクラスを1軍2軍に色分けしたようね」 「そんなことないだろ。ゆめだって1日目じゃん」  ゆめはスマートフォンを手に持ち、臨玲祭で行われるクラス発表の出場順を眺めている。  生徒会組が揃って2日目に組まれていて、確かに見映えの面では2日目の方が豪華だ。  だが、ゆめのように部活動でも参加する生徒は1日目に出演するので全体のバランスとしてはそう偏った印象は受けない。 「臨玲的な基準では、ゆめがこのクラスの頂点なんだし」

      • 【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

        令和3年10月17日(日)「演技力」古和田万里愛 「どうしてうまくできないの……」  菜月が苦痛に満ちた表情で呻く。  頭脳明晰、運動神経抜群、類い希なる美貌の持ち主で、大手IT企業の創業家のご令嬢。  非の打ちどころがない才色兼備で、あらゆることを軽々とこなすというイメージしかなかった。  自負心の強さが高飛車な発言に繋がり、周りとのコミュニケーションがうまく取れないという欠点はあるが、これは意識の高さの違いと言えなくもない。  やろうとさえ思えばなんでもできるんじゃな

        • 【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

          令和3年10月15日(金)「チケット」網代漣 「ねえ、真夏に臨玲祭のこと教えたの、ひより?」  2学期から授業によっては習熟度の差に別れて受けることになった。  文系の科目ならわたしもそこそこの点を取れているが、理系は壊滅している。  そして、習熟度別クラスが導入されているのはほぼ理系科目だった。  よってこれらの授業では、満遍なく平均より上の点を取れるキッカとは別々のクラスになってしまっている。  幸い、ひよりや淀野さんとは同じクラスなので絶望するほどではないものの、学

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        【オリジナル小説】令和な日々【目次】

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

          令和3年10月14日(木)「チケット」麻生瑠菜 「はい、チケット。1枚でいいの?」 「わあ! ありがとう、いぶき」  あたしはちょっと大げさに喜んでいぶきの身体に抱きついた。  普段はパーソナルスペースに侵入すると困った顔を見せるいぶきだが、いまは苦笑程度で許してくれる。 「すっごく、楽しみだよ、臨玲祭」  離れるものかと抱きついたまま、あたしは嬉しさを精一杯声に乗せた。  いぶきの目は一瞬戸惑いを見せたあと、優しさを湛える。  そして、「これだけ感激してくれたら、

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

          令和3年10月13日(水)「向上心」初瀬紫苑 「向上心のないものは馬鹿だって言ったのは漱石だったっけ?」  昼食は1階のカフェから運んでもらい生徒会室で摂ることが多い。  可恋のために作られたと言ってもいいこの生徒会室は空調に優れ、匂いが残ることもないので快適だ。 「『こころ』の中で鍵になっているセリフだね。『精神的に向上心のないものは馬鹿だ』は」  私の言葉に即座に答えたのは可恋だ。  陽稲も知っていたようだが、こういう時は出しゃばってこない。 「ホントにそうだと

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年10月12日(火)「才能」足利柊子 「負けたからっていちいち泣くんじゃないよ」 「だって……」  将棋盤を挟んで対面している相手は目を真っ赤に潤ませていた。  幼さが残る中性的な顔立ち。  肌は白く、髪は男の子のように短い。  腕は棒きれのように細く、ちゃんと食べているのか心配になってくる。  泣き虫で、いつも怯えているような雰囲気なのに、将棋だけは人が違った。 「春からは中学生なんだよ」  わたしの声には怒気とともに羨望が含まれていた。  将棋の世界では若

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年10月11日(月)「演劇部」湯崎あみ  講堂の裏手、普段ほとんど足を踏み入れることのない場所にわたしはつかさと一緒にやって来た。  鎌倉の一等地にある臨玲高校は見掛け以上に敷地が広い。  その中で一般の生徒が訪れる場所は限られていた。 「こんなところがあったんだね」  緑が多く、静閑で、秋の透き通る陽光にさらされて空気も澄んでいるように感じる。  お昼にこんなところでお弁当を広げたら美味しく食べられそうだ。  3年生の仮校舎からは遠いので実行するのは難しいかもし

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年10月9日(土)「インタビュー」日野可恋 『インタビューですか』  私が代表を務めるF-SASにその依頼が来たのはまだ緊急事態宣言が解除される前の9月のことだった。  過去に何度かメディアの取材に応じたことはある。  十分に話す時間を確保してもらうという条件でテレビに出演したことだってあった。  だが、基本的にメディア対応は私ではなく共同代表の篠原アイリスさんに任せていた。  彼女は有名アスリートだし、メディアに対する受け答えにも定評がある。  それに私は母の七光

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年10月8日(金)「地震」香椎いぶき 「昨夜の地震、スゴかったね!」  今朝の教室の中はどこもかしこもその話題ばかりだ。  大雨などと違い地震は突然襲ってくる。  少しくらいの揺れなら気にも留めないが、さすがに昨夜のそれは衝撃的だった。 「おはよう。いぶきは平気だった?」  凛が真っ先にわたしに声を掛けてきたのは、こちらの事情を知っているからだろう。  彼女はクラス委員としての義務感からわたしの登校を待ち構えていたようだ。 「下宿は古い建物だからギシギシいって

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年10月7日(木)「関係」網代漣 『毎日、漣のことだけを考えて生きているよ』  真夏からこんなメッセージが連日届く。  これまではわたしが一方的にその日の出来事を語ることが多かったのに、つき合いだしてからは彼女が自分の思いの丈を綴ることが増えた。  それが悪いって訳ではない。  わたしのことを好きだと言ってくれることは嬉しい。  ただ、その熱量を重く感じてしまう。  わたしの”好き”と彼女の”好き”との温度差に押しつぶされそうになってしまうのだ。 「漣、最近元気な

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年10月6日(水)「出逢い」日々木陽稲  下校中いつものようにハイヤーの後部座席に腰掛け、スマートフォンを見つめていた。  突然、隣りに座る可恋がわたしの身体を引き寄せた。  何ごとかと顔を上げようとした瞬間、急ブレーキの音とともにハイヤーが急停止した。  可恋が庇ってくれたので、衝撃はほとんどない。  何かに接触した感じもしなかった。  しかし、停止した車の前に立ち竦む少女の姿を見て背筋が冷えた。  可恋は道路脇に車を駐めてもらうようお願いし、慌ただしく車を降りた

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年10月5日(火)「決意」九条山吹 「卒業してもずっと一緒にいようね」  そう固く誓い合った日から信じられないほどの月日が過ぎた。  女子高生でなくなることは世界の終わりのように感じていたのに、あたしはいまも生きながらえている。  彼女と一緒ならどんなことでもできると信じていた。  世界はあたしたちを中心に回っていると本気で思っていたのだ。 「楽しかったよ、山吹」  4月に十数年ぶりに日本に帰って来たクレアが海外に戻ると言い出した。  元モデルで、まるで時を止め

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年10月4日(月)「恋愛小説」嵯峨みるく 「サナエって絶対にあたしのこと好きだよね?」 「そ、そんなことないよ!」 「ほんとに?」と言いながら翼は早苗の顎を持ち上げる。  早苗はいつにも増して緊張した面持ちだ。  その瞳の輝きに含まれているのはこれからされることへの期待か不安か。  翼は普段見せないような真剣な表情でゆっくりと顔を近づける。  世界から切り離されたようにふたりは感じていた。  だから気づかなかったのだ。  ふたつの唇が触れ合う瞬間に教室のドアが開

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年9月13日(月)「剣持先輩」梶本史 「絶対に映画にするべきよ」  2学期に入り、あたしが所属する映研は臨玲祭で何をするかで揉めていた。  正確に言うと、ひとりを除いて例年通りの展示で良いと考えている中で剣持先輩だけが映画の撮影を主張しているのだ。 「そうは言うけどさー」  顔の半分がマスク、もう半分が小顔に不釣り合いな大きな眼鏡で覆われた鳥打部長が眉尻を下げている。  多数決を採ればすぐに決まるだろうが、彼女は剣持先輩に納得してもらいたいという気持ちを滲ませて

          【オリジナル小説】令和な日々 女子高生編

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          令和3年10月2日(土)「呪われた奇書」湯崎あみ  土曜日だけど、いつものように部室に顔を出す。  3年生なので大学受験という現実が迫ってきているが、せめて臨玲祭までは部活を頑張ろうと目を逸らす日々が続いている。  いや、それ以上につかさと過ごす時間が尊すぎるので、受験勉強どころではなくなっていると言えた。  せっかく告白し、良い返事をもらえたのに、会えないなんてあんまりだ。  わたしはこの1分1秒のために生きていると言っても過言ではない。 「捜し物?」 「あ、先輩。お

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