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西新宿で働こうと思った20代前半のころの話

20代の俺は将来どうなりたいとか、どんな仕事がしたいというのが無かった。だから最初の就職もろくに就活もせずに1か所行って決めてしまったけど、ITの営業職みたいな仕事が嫌でわずか2か月で辞めてしまった。そこから20代後半まで6年近くはフリーターだった。

ちょうどその頃、フリーターは「新しい働き方」みたいな言われ方をされていたものの、世間ではまだまだ認知されてもいなければ、それどころか白い目で見られるような立ち位置だった。当時まだ実家住まいをしていたけど、隣の家の親父からは「フラフラしてる」と思われていたようだし、学生時代に駅の近くで同級の奴が「財布忘れちゃって電車賃貸してくれない」と頼まれ貸して、翌日うちにその金を返しに来た際に「やっぱ持つべきものが友達だね」なんてメモを残していったくせに、会社を辞めた頃にばったり会ったら俺をゴミを見るような目で見て無視しやがって。そして両親からも当然将来を心配されるしといったところだった。

農家の住み込みや工場やショップ、ルート販売などいろいろなバイトをしていたが、次の仕事を「フロムA」で探しているときに、西新宿のロックビデオを販売する会社の募集があった。たしか内勤で社員というものだった。

当時付き合っていた女がいたから、そろそろ1か所に定着したほうがいいかなという思いもあったので、俺は履歴書を書いてその会社へ電話して面接の日取りを決めた。

西新宿だし、ブートレグ販売か、いいねぇなんて思いながら面接に出向いた。事務所では女の人が2人ほど事務仕事をしてた。そこで待たされて出てきたのはひとりのおっさん。一通り面接でのやり取りをしたあと、そのおっさんは俺にこう言った。

「仕事の面接だというのになんでそんな格好で来た?扱うものがロックのものだからだらしない格好でもいいと思ったのか?」と。

俺はTシャツにジーンズといういで立ちで面接に行った。そしてそのおっさんの言う通り、ブートレグ販売なんだからラフでもいいだろうと思っていたのだ。そう質問されて俺は言葉に詰まった。内心は「その通りだよ」と思ったものの、どう答えたのか今では覚えていない。そしてその後もおっさんからは説教のようなものを食らって面接は終わった。

なんだよふざけやがって!と思いながら女と待ち合わせ、「たぶんダメだ」と一言だけ伝えた。

家でも母親に「当たり前でしょ、どんな仕事でもちゃんとした格好で行かなきゃダメだ」みたいなことを言われたが、当時の俺はそんなのクソ喰らえと思ってて聞く耳を持たなかった。

後日、その会社から電話があって、西新宿にある店舗で「バイト」としてなら雇うと言われた。だけど面接が終わった後からずっとふざけんなクソがと思っていたので断った。あんだけ説教されてバイトなんかでやれるかよ、こっちから払い下げだ!ぐらい思っていた。

ただ、あのとき面接に行ったのに説教されて返されたことについては、正直自分でも情けないと思っていた。強がってそれを表に出すことは無かったけど。

20代の頃の俺は本当にバカでどうしようもねえな思う。あれから30年経ったいまでは、あんなの説教されて当たり前だと思うし、もしあの頃の自分にアドバイスするなら、将来苦労するからもっと自分のことを真剣に考えろと言ってやりたい。でも当時の自分はそんなのは戯言と思って聞き入れないのかもしれないけど。

もしあの時、ちゃんとスーツとかを着て面接に行ってたら、違った生活をしているのだろうか。いや、もっと以前に遡って就職する前にちゃんと将来のことを考えて行動していたら今とは状況もちがっていたのだろうかとか考えてみるが、何をいまさらだし、後悔してもしょうがないな。

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