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Annette Peacockのアルバム2枚

長年音楽を聴いているが、全貌がまったくつかめないアーチストってのがたまにいる。このアネット・ピーコックは俺にとってまさにいい例だ。

1941年生まれのアネット・コールマンは1960年にジャズ・ベーシストのゲイリー・ピーコックと結婚。アネットはゲイリーがポール・ブレイと活動を共にしていたことがきっかけで前衛ジャズに関心を持ち始める。後にアネットはポール・ブレイと一緒になり、「ザ・ブレイ/ピーコック・シンセサイザー・ショウ」といった名義で活動を始める。

そして1972年にはシンセサイザー・プレイヤーとして"I'm The One"というアルバムをリリース。デヴィッド・ボウイの事務所であるメインマンと契約するも、メインマンがボウイばかりに力を入れるため活動の機会に恵まれず、そうこうしているうちにメインマンが潰れてしまい、路頭に迷う形になったのが1974年のこと。

と、まあ知った風なことを書いているが、CDのライナーノートを要約しただけで、俺も改めてそうだったのかと思っているぐらいだ。

それから様々なミュージシャンとセッションを重ねて1978年になってリリースしたのが "X-Dreams"だ。

X-Dreams(1978, Aura Records)
  1. My Mama Never Taught Me How To Cook

  2. Real & Defined Androgens

  3. Dear Bela

  4. This Feel Within

  5. Too Much In The Skies

  6. Don't Be Cruel

  7. Questions

多くのロックファン・・・というか、プログレファン限定かもしれないが、アネットの名を知ったのはこのアルバムがきっかけではなかろうか。

Bill Bruford ”Feels Good To Me” (1977)

ビル・ブルーフォードの最初のソロ・アルバム "Feels Good To Me"で3曲、ヴォーカルで参加し、独特な存在感を放っている。そもそも、どういう経緯で彼女がこのアルバムに参加したのかは分からないが、こちらの方のnoteにちょっとヒントがあった。

最後の方の「追記」に、1975年にアネットとビルがセッションをしたとの記述があって、俺は "X-Dreams"の2曲目に収録されている"Real & Defined Androgens"がそれなんじゃないかと思っている。

と言うのも、このアルバムの英語版Wikipedhiaで「Recorded 1975」と記述されていて、メインマンから離れてイギリスの田舎に居を構えて、全部で22名のミュージシャンとセッションをしながら曲を録音している。1975年といえばビル・ブルーフォードは前年にキング・クリムゾンが解散し、ゴングのツアーに参加した後はセッション・ミュージシャンとしていろいろなアルバムに参加している。なので、この時期にアネットともセッションをしたのだろうと推測している。ただ、そのファースト・コンタクトがどのようなきっかけだったのかとかは不明だ。

ちなみに、このアルバムに参加をしているのは他に、ミック・ロンソンやクリス・スぺディングといったところが有名どころではないかと思う。アナログで言うところのA面にあたる最初の3曲はアグレッシブで、B面にあたる後半4曲はロマンティックとはアネットの弁だ。

The Perfect Release(1979, Aura Records)

そして翌1979年には早くも次のアルバムがリリースされている。こちらは前作のようなセッション形式ではなく、マックス・ミドルトンやリチャード・ベイリーといったメンバーによる「バンド」形式で録音がされている。なんでもアネットがジェフ・ベックの"Blow by Blow"を聴き、バンドでのレコーディングをしたいと思ったようで、先に挙げた2人はベックのアルバムにも参加している人だ。

  1. Love's Out To Lunch

  2. Solar Systems

  3. American Sport

  4. A Loss of Consciousness

  5. Rubber Hunger

  6. The Succurus

  7. Survival

言われてみると、ベックのアルバム(どちらかというと"Wired"みたいな響きがするけど)とか、同時代のフュージョンが入ったような音作りになっている。アネットは前作ではシンセサイザーをプレイしていたようだが、このアルバムでは曲作りとヴォーカルに徹しているらしい。

スティール・パンがフィーチャーされているこの曲が個人的にはかなり好き。

"X-Dreams"と"The Perfect Release"は最初にCD化されて日本盤がリリースされたときに購入し、今も手元にあるが、ブルーフォードのアルバムでの存在感に圧倒され、だけど他に何の情報も無かったのでこの2枚が再発されたときは速攻買いに行ったのは言うまでもない。

その後もマイペースな活動をしているようだが、情報がほとんど入ってこないし、2000年にECMから"An Acrobat's Heart"というアルバムが出ていたけど未だチェックしていない。なお、1983年の"Been In The Streets Too Long"にも1曲だけビル・ブルーフォードが参加しているようだけど、それも未聴。

初めてヴォーカルを聴いたときから30年ぐらいは経つけど、今なおミステリアスなミュージシャンだ。

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