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Fiona Apple / Extraordinary Machine

フィオナ・アップルは「孤高の人」という表現がとても合う。18歳でデビューしてから28年間でリリースしたアルバムはわずか5枚。それでもその存在感は翳ることなく、他のどの女性ミュージシャンにも劣らない唯一無二の存在だ。

俺がフィオナ・アップルを知ったのは1999年にリリースされた2枚目のアルバム『When The Pawn…』からだったが、遡ってデビュー・アルバムの『Tidal』を聴いたときの驚きといったら半端なかった。1曲目の歌いだしからして、18歳の女性シンガーのデビュー・アルバムとは思えない力強さと迫力、そして曲の重さ。シンガーというよりは表現者、そんな印象だった。

以来、俺のお気に入りミュージシャンのひとりとなったわけだが、2003年になって次のアルバムの情報が入ってきた。『Extraordinary Machine』というタイトルまで伝わってきたが、しばらくしてこのアルバムをレーベルが拒否したというニュースが入ってきた。4年も待っているのに拒否だと~!と世界中のファンが憤慨し、あるファンが "Free Fiona"というサイトを立ち上げ、ソニーに抗議するというキャンペーンを始めた。俺も当時、Free Fionaにて『Extraordinary Machine』をリリースしろという署名に参加した記憶がある。

なぜソニーはアルバムを拒否したのかというと、アルバムの内容がコマーシャルではないのと、当時のソニーの幹部連中がメインの商材にしたかったものがヒップホップと売り上げが確実に見込めるオールド・ミュージシャンであったからというのがあった。なんだか、2003年頃から徐々にCDが売れなくなってきたのだろうと改めて思う商材だな。

その後、タイトル曲と"Better Version Of Me"、その他合計11曲がネット上に流出し、なんやかんやあって2005年になってようやくアルバムのリリースが決定した。

Fiona Apple / Extraordinary Machine (2005, Epic)
  1. Extraordinary Machine

  2. Get Him Back

  3. O' Sailor

  4. Better Version Of Me

  5. Tymps (The Sick In The Head Song)

  6. Parting Gift

  7. Window

  8. Oh Well

  9. Please Please Please

  10. Red Red Red

  11. Not About Love

  12. Waltz (Better Than Fine)

アルバムにはマイク・エリゾンド、ブライアン・ケヒュー、そしてジョン・ブライオンという3人のプロデューサーがクレジットされているが、当初2003年に制作したものはジョン・ブライオンがすべてプロデュースをしていた。

後に判明することなのだが、アルバムはソニーが発売を拒否したのではなく、フィオナ自身が出来に満足できなくてストップをかけたというのが理由だった。当時、Free Fionaで活動していた人たちは、2005年にEpic本社前で抗議活動まで行っていたのに・・・。

ただ、結果的にフィオナ本人が満足のいく作品が出せたのだと思っている。彼女は歌う言葉や理由がなければ歌わないだろうし、クオリティが低かったら納得いくまでやり直すタイプの人だと思う。だからアルバムリリースの間隔が広がっていくし、よりオリジナルな個性を放っているのだろう。

フィオナ・アップルの音楽を聴くのは正直疲れる。歌詞(訳詞だけど)を読むと何かしらの痛みのようなものを心の中に感じるし、ハッピーな展開なんて無いんじゃなかろうか。だからカップルの若い男女がヘラヘラしながら聴くようなBGMにはなり得ない。

俺にとってはこの『Extraordinary Machine』は現在ある5枚のアルバムではもっとも聴きやすいので、リピート率が高い。それに、曲調もやや明るい感じがする。

ちなみに、フィオナが納得いかなかったジョン・ブライオン単独プロデュースによる2003年バージョンの音源も所有しているが、いくつかの曲ではストリングスが大げさなほど入っている曲があり、こういうところが彼女のイメージと違っていたのかなと思うところがある。しかし個人的にはジョン・ブライオン・バージョンでも良いと思うテイクがいくつかある。

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