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「パンクなんか聴いたら気が狂っちまうよ」と言ったやつの気を狂わせてやりたいと今でも思っている

あれは高校3年の時だった。俺はレンタルレコード屋でセックス・ピストルズの『Better Live Than Dead』という、当時リリースされたばかりのライヴ盤を借りて、帰りの電車に乗り込んだ。

そこに同じクラスのKとWが乗っていて、俺に「何借りたの」と聞いてきたので、ピストルズと言ってもどうせ分からないだろうと思って「パンク」と答えた。するとKが吐き出すかのようにこう言った。

「パンク?パンクなんて聴いたら気が狂っちまうよ」

俺はバカじゃねこいつと思いながら鼻で笑ってやった。

時は流れて2000年代。「レコード・コレクターズ」が創刊25周年ということでランキング特集をしていて、「70年代ロック・アルバム・ベスト100」というのをやっていた。ライターが10枚選んで点数をつけてその総数でランキングをつけたもので、70年代の1位はセックス・ピストルズの『勝手にしやがれ(Never Mind The Bollocks Here's The Sex Pistols)』だった。

Never Mind The Bollocks Here’s The Sex Pistols (1977, Virgin)

当時、mixiにレコード・コレクターズのコミュニティがあって、管理人不在だった時に俺が名乗り出て管理人をやっていたことがる。上記のランキング特集号はちょうどその頃で、この号についての書き込みとして、ピストルズの1位に納得いかない人もいたようで「パンクなんて流行り病みたいのが1位とは納得いかない」と書いていた人もいた。

その時に俺は「私はピストルズ『勝手にしやがれ』の1位は納得です。
たとえパンクが流行り病だとしても、60年代後半から70年代半ばまでのロックの流れをリセットし、若者の文化も大きく変えたという点で後世に大きな影響を与えていると思います」と意見を書いた。

まあ、パンクが嫌いとかくだらないと思う人は一定数いるだろうし、別にそう思うのは構わないけど、お前の聴いているものがなんぼのもんだってことですよ。俺がmixiで書きこんだ意見は15年以上経ったいまもそう思っている。

ちなみに、去年レコード・コレクターズは創刊40周年ということで、15年ぶりにランキング特集をやり、『勝手にしやがれ』は4位でした。相変わらず評価高いね、あたりまえだろうけど。

レココレ2007年6月号(左)と2022年6月号(右)。ピストルズ「2CD」とはどういうことかな。

俺は年に何度も『勝手にしやがれ』を聴いている。なんなら今年に入ってすでに3回は聴いているだろう。そして時々思い出すのが冒頭のKの言葉だ。

「パンクなんて聴いたら気が狂っちまうよ」

そうかいそうかい、キミ、俺が悪人じゃなくて良かったよな。俺が悪いやつだったらオマエをとっ捕まえて隔離し、椅子に縛り付けてヘッドホンで延々とパンクを聴かせて本当に気が狂うのかどうか観察してやったのに。

そう、俺はいまでもKにパンクを浴びるほど聴かせて気狂わせてやりたいと思っている。オナ中(同じ中学)だったけど、たまたま高校3年で同じクラスになっただけで、別に仲が良かったわけではないから卒業後どうしているかなんて知らないけどね。

なんならルー・リードの『メタル・マシン・ミュージック』とかメルツバウとかも併せて聴かせてやりたいものだが、ノイズ・ミュージックなんて聴かせたら〇んじゃうかもしれないからそれは危険だなw


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