見出し画像

【台湾の地質環境】台北盆地

前回台北に流れ込んでいる2本の主要な河が、地形の変動のために、本来の流れを変えて台北盆地に流れ込む様になったことを説明しました。
今度はこの台北盆地そのものの地質環境の変動を見てみましょう。

まるで泥の湖のような

台湾で建築現場の様子を観察していて、この土地の様子をとても実感することがあります。それは台北盆地というのは、泥で埋め尽くされた湖の様な場所だということです。
建築工事の説明の時に、地中連続壁のことに触れました。この工法が採用されている理由は、台北市と新北市の土壌が、この工法に適しているからです。例えば地下15mを掘って建物を計画する場合、地中連続壁はその倍の地下30mほどの深さまで作ることになります。台北市と新北市の平地部ではこのくらいの深さでは,全てが泥です。何度かこの泥を手で触ってみたことがありますが、シルトと呼ばれる泥と粘土の間のような、粒子のとても細かい均質な泥が、掘る限り現れてきます。

そしてこの泥の層は、60mから深いところでは100mにも及ぶということです。これはもちろん山に近いところでは異なるのでしょうが、市の中心部に当たるような場所では大体がこの状況です。
僕はこの様子は、巨大な湖に水の代わりに泥が詰まっているようだと理解しています。

台北の土地は陥没している

そして、台北の地質環境を説明している文章では、この状況は、台北盆地の土地が地下深くに陥没したからであると説明しています。
これは、台北の土地のボーリングデータを集積した結果です。本来地上の丘陵地にあるような地層、植物が生い茂り、小石が多い、そのような地層が、泥の層の底にある。これは本来地上面近くにあった地層が、遥か地下深くに沈み込んでいる。このように理解されています。
基隆河と大漢溪の流れが台北に向かうようになった理由の一つが、この台北盆地の陥没であったと考えられています。

山腳斷層

林口台地の淡水側に山腳斷層と呼ばれる断層があります。この断層は新莊から五股を経て、淡水を横切り陽明山まで続いています。この断層面を見ると、驚くべきスライドがここで起こっていることが分かります。

山腳斷層の断面の様子。台北側が大きく落ち込んでいます。

このような断層が発生したことが、台北盆地が陥没した理由だというわけです。そして、このような大規模な陥没が起こるほどの地質環境的な理由があるはずです。今のところ,そのことを直接説明した文献は見つけていません。しかし台湾島の全体環境の中からその理由を類推することはできます。

林口台地の東側にあるのが山腳斷層です。

沈みゆく台湾北部の大地

この台湾の地質環境のシリーズで最初に紹介した動画「臺灣大地奧祕系列 - 山起山落蓬萊島」に、台湾島は南で隆起し、北で沈下していくという説明がありました。
恆春半島からフィリピンに伸びている尻尾の様な形は、山の尾根のように海面から姿を表している台湾島の姿を表し、これは段々と南に拡張している。
それに比べて、台湾島はこれ以上高くなるとは考えにくく、その分北側では沈下を続けている。南は新しく、中は古い地層になっているということです。

この台湾島全体で、北側は沈みゆく運命にある。その沈下運動の中で地殻が割れて、台北盆地の陥没が起こっている。巨視的にはそういうことなのだろうと考えています。
そのため、地殻の変動は現在でも続いており、陽明山は現在でも活火山なわけです。

古台北湖

もう一つ、台北盆地は過去巨大な湖であったということも言われています。大屯山と八里の観音山は元々繋がっており、ここで水は堰き止められ、台北盆地は湖となっていた。
これは、清朝の時代にそうであったという記録もある様ですが、それは大雨或いは台風による一時的なもので、湖であったのは地質学的なスケールでの過去だとされています。
この様な過去の姿が、泥の堆積という台北の地盤の特徴の理由なのだろうと考えています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?