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『はしか(麻疹)報道』/馬鹿馬鹿しさと危うさと。


こんにちは、医師・医療経済ジャーナリストの森田です。

今月に入ってから、俄かに『はしか(麻疹)』のニュースが目立つようになりました。

Yahooニュースでもこんな風に短期間にたくさんの記事が上がっております。


テレビでもたくさんやってましたね。

では、果たして「麻疹」は日本でそんなに大問題になっているのでしょうか?

今回は公式データと関連論文などからその圧倒的な馬鹿馬鹿しさと危うさを解説したいと思います。


麻疹患者は非常に少ない


まずデータを見てみます。

こちらが国立感染症研究所が発表している公式データです。



出典: https://www.niid.go.jp/niid//images/idsc/disease/measles/2024pdf/meas24-09.pdf


今年、2024年の麻疹患者報告数は最新データの第9週(3月6日)で2人。「非常に少ない」というレベルですね。

こちらはおなじみ忽那先生のYahooニュース解説。ここではさらに新しい国立感染症研究所の最新データ(3月13日)が掲載されています。

それがこちら。

今年、2024年は少し増えましたが麻疹感染者はまだ13名。
2019年の744名・2018年の279名には遠く及ばないレベルです。

ていうか、忽那先生も、記事内にこのデータ載せておいて「麻しんが日本国内で増加中」ってタイトルつけるの、自分でも『あれ?』って思わないのかな?


「医療が過剰に煽る」ことの馬鹿馬鹿しさ


そう思って調べてみたら、実は忽那先生、去年も全く同じような記事を書かれていました。

それがこちら。

タイトルもほぼ同じ、サムネイル画像も同じ、『〇〇から麻疹が国内に持ち込まれた…」から始まる内容もほぼ一緒。でもよく見ると、日付が2023年です。

この時も『麻しん患者増加中』と恐怖を煽るいつものやり方。で、結局去年も大流行になんて全然ならず、上の表の通り1年間でたったの28名の感染で終わっています。

つまり、忽那先生は去年も麻疹の恐怖を煽っていてて、しかもそれが結果として見当違いだった…それなのに、今回もまたそこにはダンマリでまた恐怖煽りの記事を書いている、ということになります。

ちなみに2019年の記事も。



煽れそうな年は必ず煽るのがもうお仕事みたいなものなんでしょうね。

では、果たして我々はこのニュースをどう受け取れぼいいのでしょうか?


感染症の恐怖を日常にしてはいけない


京都大学教授・藤井聡先生の最近の研究で、こんなものがあります。

「驚くべき事に、コロナの報道量を支配していたのは、単なる「経過時間」(コロナが流行し出してから何年何ヶ月経ったか、という数値)であり、客観的な致死率や感染者数、死亡者数の影響はやはり、限定的あるいは皆無であった」

とのこと。(出典:https://38news.jp/economy/27381

つまり、国民の不安や恐怖感を増幅し続けた「コロナ報道」の量は感染症の被害の大きさや致死率などの本質的な問題によって決まってくるわけではなく、「時間経過」(受け手が興味あれば煽るし、飽きたら終了)という本来どうでもいい要因で決まっていただけ、ということです。

そう考えると、麻疹の報道もその通りですね。だって、大して増えてもいないのに、「恐怖を煽る」いつものやり方がまかり通っているのですから。

コロナ禍を通して、大量に浴びせられたこうした「感染症の恐怖」。
我々はもう慣れてきてしまっている面がないでしょうか?

しかし、現実を見るとこれは本当に恐ろしいことです。



未だに残る「感染症の恐怖」


今この記事を読まれているような方々、健康に日常生活を送られている方々は、もうすでにほぼ通常通りの日常生活を取り戻しているでしょう。

しかし、日本の国内にはまだまだ「感染症の恐怖に基づくシステム」から抜け出せない方々も多くいらっしゃいます。

それは病院・高齢者施設などで生活されている多くの高齢者の方々、障害者施設の方々などです。日本国内に何百万人をおられるこうした方々の多くは、未だに「面会制限」「外出制限」の管理下に置かれています。もうコロナが始まって4年が経ちます。4年間も家族にもほとんど会えず、買い物に行くことすら出来ない、ずっとこうした制限の中で生活を強いられてきた方々は、いつこの生活から抜け出せるかも全くわからないのが現状です。

本来、これは「移動の自由」「集会の自由」という基本的人権を毀損する、明らかな「人権侵害」です。
しかし、コロナ禍において人権は公衆衛生の大合唱の声にかき消されてしまいました。
「感染症蔓延防止!」「クラスターになったらどうするんだ!」という「感染症的正義」の前で人権は「一回置いといて」ということが世界でまかり通ってきたのです。

また、あまり知られていませんが、こうした公衆衛生の大合唱の中で、「日本人の自殺数」は2020年から激増してしまっています。


出典: MedicalFacts.info/https://medicalfacts.info/cod.rb?l=ja&years=2012~2013~2014~2015~2016~2017~2018~2019~2020~2021~2022&ages=all&sex=both&graph_type=yearly_reg_2020&top=none&columns=3&death_codes=all~02112~02114~02119~09300~09301~09302~09303~09304~10601~15000~18100~20100~20101~20102~20103~20104~20200&align_max=&per_capita=&adjusted=&i=false


こんな世の中で、本当に大丈夫なのでしょうか?

もちろんそれは、世界を席巻し甚大な被害を出した「新型コロナ」なのだから、仕方なかったかもしれません(日本や東アジアでは被害は非常に小さかったので別の議論が必要ですが)

でも…百歩譲って新型コロナではそうだったかもしれませんが…、今回の「はしか(麻疹)」でそのような騒ぎが必要でしょうか?

感染症専門家が毎年のように喧伝するオオカミ少年的な「感染症の恐怖」に毎回付き合っていたら、本当に大事な「国民の健康な生活」は確保できるのでしょうか?

医師法第一条には

「医師は(中略)国民の健康を確保するものとする」

と書いてあります。
感染症専門家は本当に「国民の健康」に目を向けてくれているのでしょうか?

今、世界はすでにコロナ禍を脱しています。
マスクをしているのはほぼ日本人だけです。

大して流行もしていない「はしか」の馬鹿馬鹿しい騒ぎは、こうした本質的な問題を考えるいいきっかけになるのではないでしょうか。

そんな「国民的議論」が巻き怒ることを僕は期待しています。


以上、「『はしか(麻疹)報道』/馬鹿馬鹿しさと危うさと。」でした。



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■僕の本


目次

はじめに

第1章 人は家畜になっても生き残る道を選ぶのか?
「人は家畜になっても生き残る道を選ぶのか?」
南日本新聞・南点
コラム1 入院?在宅?…誰が決めるのか

第2章 日本の新型コロナ感染症対策を総括する
「医療崩壊」を叫ぶほどに見えなくなる「日本医療の根本の問題」
コラム2 医療・介護は下流の処理班
専門家がゼロコロナを目指してしまうのは構造的問題であることを「取引の2類型」で確認した話
コラム3 文系?理系?医学はどっち?
感染対策はどこまで効果があったのか?
コロナ禍における『人新世の「資本論」』の意味
『すべり台』が街から消える?ダブルスタンダードな安全至上主義報道が社会を締め付ける
コロナ死1万8千人の陰であの感染症は2017年に死者が2万人も減っていた

第3章 日本の医療と孤独
コラム4 「生・老・病・死」は誰の課題?
医療による対応に限界が見えたとき、僕たち医師は何ができるのだろう
コロナ禍におけるジェネラリストの意義
日本人の「孤独度」は世界トップクラス⁉ 〜きずな貯金のすすめ〜
コラム5 「孤独」は最も重い病気
女子会に学ぶ、(傾聴+共感+承認)×100=答えを求めない会話術
〜女子は男子に、患者さんは医師に、答えを求めていなかったのか! の絶望的な気付き〜
コラム6 医療が人を不幸にするとき
10年後に消える医療者・消えない医療者
コラム7 「この管を抜いてください」

第4章 新型コロナワクチンについて
コロナワクチン、打たない夫と打った妻
コラム8 患者さんの味方になる医療
新型コロナワクチンについて
「エビデンスのないものはすべてデマである」というデマ

第5章 コロナ禍を生み出してしまった日本の医療の構造的欠陥
〇〇〇が多い県に住むと医療費が2倍に⁉
責任者の一番の仕事は「責任逃れ」ではない
コラム9 寝たきりの人が国会議員に?
医療市場の失敗
コラム10 医療・介護は「刑務所ビジネス」か

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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)