泥に咲くひまわりの赤

「『泥に咲くひまわりの赤』」
「何それ」
「いい感じの言葉を思いついたけどストーリーが浮かばないからとりあえず言ってみた」
「言ったところで話にはなんないでしょ」
「分かってるよ。その点、歌は楽だよね」
「なんで?」
「だってなんかサビでそれっぽいタイトル言っておけば、前後とかあんまり関係ないし、ストーリーとかないじゃん」
「作詞家に謝れ」
「でもさぁ」
「ストーリー性のある歌詞だってあるでしょ」
「あるけど」
「それにそういうのっていい感じの比喩になってたりするわけでしょ。逆に難しくない?音に合わせたりとか」
「正論で返さないでよ」
「タイトルができてるなら、頑張ってストーリー考えればいいじゃん」
「それができれば苦労してません」
「なんだっけ?」
「タイトル?」
「そう」
「『泥に咲くひまわりの赤』」
「ストーリーになりそうだけど」
「そう?」
「例えばひまわりって元気とか前向きとか明るさとかそういうイメージがあるでしょ?でも泥っていうと、困難とか苦境とかそういうのの象徴だったりする。つまり明るい人が困難の中で、それでも一生懸命に生きてるってストーリーになるじゃない」
「朝ドラみたいなやつね」
「赤っていうのがなぁ。そのひまわりが赤いのか、ひまわりが何か赤いものを持っているのかによっても解釈が違うね」
「『泥に咲くひまわりの赤』。あぁそうだね、たしかに」
「赤っていうと、やっぱり危険信号だしちょっと不穏な感じがする。泥に咲いてなおかつピンチ、みたいな。赤から血を連想させれば2時間ドラマみたいにもなるんじゃない?」
「ほー。すごいね」
「どう?書けそう?」
「うーん…」
「まだピンとこない?」
「いや…」
「ん?」
「この会話で一応お話になったからいいや」