ひるま奈津

小説でも脚本でもない“読むボイスドラマ”を書きつつ、自分の考えたことを“正解じゃないも…

ひるま奈津

小説でも脚本でもない“読むボイスドラマ”を書きつつ、自分の考えたことを“正解じゃないもの。”としてまとめています。

マガジン

  • 読むボイスドラマ

    小説でも脚本でもない、”読むボイスドラマ”を書いています。 −いつかの話、だれかの話、なにかの話、どこかの話。ふたつの命が出会って生まれた、これはそんな、”かのはなし”。−

  • 正解じゃないもの。

    ぼんやり考えたことを書いています。

最近の記事

  • 固定された記事

書いているものを紹介します。

はじめまして。「ひるま 奈津」(ひるま なつ)と申します。 小説でも脚本でもない“読むボイスドラマ”を書きつつ、自分の考えたことを“正解じゃないもの。”としてまとめています。 だいたい毎週土曜日にどちらかを更新できればと考えていますので、もしよろしければ読んでみてください。 “読むボイスドラマ”も“正解じゃないもの。”も「マガジン」にまとめています。 ちなみに、それぞれにどんな思いを持っているのか。そもそもどういうものが更新されているのか。以下に紹介していますのでご参考

    • シュヴァルツバートンの森

      “行けば戻れぬ黒い森”。そう呼ばれる森がある。二度と戻って来られぬ代わりに、死者に会える場所だという。最愛の妻を亡くした男は友に最後の別れを告げ、今日、出発する。 「本気か!? シュヴァルツバートンの森って言ったらお前…」 「………」 「……行けば戻れぬ黒い森」 「あぁ」 「考え直せ。そんな迷信、信じるタチじゃないだろう!?」 「迷信だろうがなんだろうが、あいつに会えるならなんだってする。離せ」 「死んだ人間には二度と会えないんだよ…!」 「……」 「…彼女が亡くなってお前

      • つまらない人生

        「僕が死んだらあの森に帰るんだ。今はただの通過点。だから関係がないんだよ、興味もないし」 「なんにもないのね」 「帰る場所がある」 「それだけでいいの?」 「十分だ」 「無欲な人」 「他に必要なものがある?」 「あるわよ、たくさん」 「欲張りな人」 「そうね。欲しいものが多い分、あなたより長生きする」 「長生きして何になる?」 「さぁ。やってみなきゃ分からないわ」 「帰る場所はあるの?」 「どうかしら」 「じゃあどこに向かっているの? どこに行き着くの?」 「どこかに行き着く

        • 恋を知らない人

          「また会えるなんて、思っていませんでした…」 「薄情な人」 「だって…あなたが急にいなくなったんじゃないですか」 「また会える、会いたいなと思って待つのが恋人でしょう?」 「そういうものですか?」 「そういうものよ」 「どこに行ってたんですか?」 「内緒」 「別の人のところ?」 「そうだと言ったら…」 「…」 「嫉妬する?」 「…でも、僕と恋人だったときも他の人と会ってましたよね?」 「まだ恋人でしょ?」 「誰がですか?」 「私たち」 「そうなんですか?」 「別れるなんて言っ

        • 固定された記事

        書いているものを紹介します。

        マガジン

        • 読むボイスドラマ
          45本
        • 正解じゃないもの。
          1本

        記事

          生きている証

          「生きていると思うから死にたくなるのさ」 「どういうこと?」 「そのまんまの意味だよ。生きていると思うから、死にたくなる。死にたくならないようにするには、生きていると思わなければいい」 「死んでるって思えばいいの?」 「簡単に言えば」 「無理でしょ」 「やる前から諦めちゃダメだよ」 「私は死んでる…私は死んでる…」 「そう」 「…不毛すぎる。だって私は生きてるもの」 「生きているってなんだろうね」 「急になに?」 「どういう状態なら人は生きているって言えるんだろう」 「心臓が

          生きている証

          思考と感情

          「思考は感情と折り合いをつけるための行為だ。思考を放棄したということは、折り合いをつけるのを辞めたということだろう」 「よくないことでしょうか?」 「さぁ? 君の好きにしたらいい。それなりの理由があったんだろう?」 「…あった…んでしょうか」 「無意識ということだってあるかもしれない。人間は案外高性能だが、それをすべて認識できるほど上手に作られてもいないからね」 「折り合いのつかない感情はどうなりますか」 「どうにもならないよ。折り合いをつけていないんだから」 「…」 「むし

          赤くて甘いイチゴジャム

          「帰る道を忘れたの。今夜は泊めてくださらない?」 「街からここまで一本道ですよ?」 「もう夜だわ。女ひとりで帰すおつもり?」 「ここも対して変わりませんよ。独り身の男の家なんて」 「あなたも狼?」 「自覚はありませんけど」 「あら残念」 「夜道が心配なら送っていって差し上げましょう」 「それは悪いわ」 「家に泊まられるより何十倍もいいですよ」 「ケチね」 「ケチって…」 「いいじゃない一晩くらい。宿代がわりに少しだけなら触ってもいいわよ?」 「そう安売りするものじゃないですよ

          赤くて甘いイチゴジャム

          来世の希望書

          「今ちょっと立て込んでて…お待たせしてしまって申し訳ないです」 「いえ」 「書類、分からないところありました?」 「あの、ここなんですけど」 「はい」 「希望の性格ってなんですか?」 「希望される性格をご記入ください」 「いや、それは分かるんですけど…」 「生まれ変わったときにどのような性格になりたいか。すべての希望が通るわけではありませんが、できる限り叶えられるよう我々も尽力いたします」 「性格って選べるんですか?」 「もちろん。せっかく生きてきたんだから、何か未来につなが

          来世の希望書

          ピエロ/パターンB

          「パンパカパンパンパーン!!」 「なに!?」 「おめでとう!ピエロ!」 「何よあんたどこから来たの!?」 「おめでとう! ついに1万回だ! いやよくぞここまで! 飽きもせず、諦めもせず、何もせず! ただ思うことだけを続けたよ! ピエロ、君は本当にすごい! ………って何してるの?」 「警察呼ぶのよ。ピエロ姿の不審者がいるって」 「やめておいた方がいい。イタズラ電話だと君が怒られるだけだ」 「はぁ? わけ分かんない」 「ほら」 「え?」 「見えるだろ? 僕の後ろのカーテンが」 「

          ピエロ/パターンB

          愛を知る人

          「あぁ、愛されている、愛している。自分の居場所を持っている人は強いわね。だって、帰る場所があるんだから」 「あなたにはないの?」 「ないわよ」 「どこにも?」 「どこにもない。あるわけない。愛されていないし、愛してもいないんだから」 「それはどうして?」 「…どうして?」 「愛すればいいじゃない。愛されればいいじゃない。あなたはすてきな人だから、きっと誰かいい人がいるわ」 「…」 「どうしたの?」 「…そうやってあなたたちは勝手なことを言う。自分が簡単に手に入れられたから、他

          魔女の娘

          「魔女がイバラを飲んだそうだ。棘が喉を裂くさまは、目も当てられないほどむごたらしかったとか」 「酒場でする話じゃねぇな。せっかくの酒がまずくなる」 「たまには珍しい肴で飲んでもいいだろう。次の酒は俺が奢るさ」 「魔女ってあれだろ? 人の心が読めるという、国ざかいの」 「あぁ。隣国との戦争でこの国に勝利をもたらした」 「そうは言ったって、その後は王様に辺境まで追いやられたじゃないか。俺だって心を見透かす魔女がいては気が休まらない。それで? その魔女がどうしたって?」 「イバラを

          人が生きる意味

          「人が生きてる意味ってなんだと思う?」 「え?」 「人が、この地球上で生きている意味だ。存在している理由といってもいい」 「どういうこと?」 「だって植物は光合成をして酸素を作るだろ? 動物は食物連鎖に則って、生命の理として正しく循環している。それじゃあ人間は? 最上位の生き物を気取って、自分の腹を満たす以上の搾取を繰り返す。自然を破壊し、自分たちだけが住みやすいように作り替えてしまう。すべては地球のためではなく、人間というたった1種族のためだけに。そんな自己中心的で傲慢な生

          人が生きる意味

          君が生きる幸せな世界

          「あなたは大きいね」 「お前が小さいんだ」 「ふさふさしていてあたたかそう」 「毛皮がなくて寒くないのか」 「お洋服を着ているから大丈夫よ」 「布をまとうなんて窮屈だな」 「あなたはそのままですてきだもの」 「お前はどんな姿でも好ましいが」 「あなたと私はすべてが違う」 「人から見ればそうなのだろう」 「あなたはそう思わないの?」 「目に見えるものだけがすべてじゃない」 「心が一緒なのはうれしいわ」 「まったく同じではつまらんが」 「違っても良いと思ってくれるの?」 「違うか

          君が生きる幸せな世界

          毒の味

          「それを飲んだら死んでしまうと言ったら、君は飲むだろうか」 「え?」 「僕の淹れた紅茶、好きでしょう?」 「えぇ」 「今日はとても上手に淹れられたんです。君と出会ってから、一等美味しくできたかもしれない。…飲んでくれますか?」 「毒を?」 「紅茶の香りも味も損なわないよう、無味無臭なものを入れました」 「用意がいいんですね」 「知っているでしょう?旅行の準備だっていつも僕がしていたんですから」 「行ったことないじゃないですか、旅行なんて」 「僕は計画を立てていましたよ。国内も

          地獄で待つ

          「あんた人殺しだろ、極悪人だろ。死んだら地獄に行くんだろ。なのに、なんでそんな幸せそうなんだよ」 「死のうが死ぬまいがどちらも地獄だよ」 「この世は地獄って?」 「あぁ」 「あんたがみんなを地獄に落としたくせに」 「俺は閻魔大王じゃない」 「閻魔大王よりタチが悪い。あんたにはなんの理由もない」 「この世が地獄なら落ちた場所はどこだろう」 「地獄だろ」 「あぁそうか。そうだったな」 「…幸せなのか、死ぬのが」 「どうだろうな。どう思う」 「俺が知るかよ」 「……なぁ、考えたこと

          ごめんなさいで赦されること

          「『ごめんなさい』と言うけれど、お前が赦されたいだけだろう? 謝罪は態度で示せばいいし、本当に悔やんでいるなら二度としなければいい。お前は自分が赦されたいという一心で、薄っぺらな言葉を吐いているだけだよ」 「ごめんなさい」 「ほら見ろ。そうやってすぐ謝る」 「ごめんなさい」 「お前は何に謝っているんだ?」 「だって怒っているから…」 「怒っているから? 私が怒っているから謝るのか? それでは怒っていなかったら? 怒った態度を見せていなければ、同じことをしていてもお前は謝らない

          ごめんなさいで赦されること