『幻肢の夢』

夢を見た

見知らぬ家の中。
親族の誰か、分からないけど、右腕の無い男性が目の前にいた。
私はどうしてかその人を見つめていて、気付くといつの間にか私の右腕も無くなっていた。

痛い、痛い、怖い、悲しい。

この身を引き裂かんばかりに様々な感情が湧いてくる中、失ったはずの腕が痛くて、仕方なかった。
幻肢痛なのだろうか。
ただただ何も分からず恐怖に叫んでいた。

次第にこれが夢だと、私は今ベッドの上に寝ているだけだと思い出す。
朝日で明るい部屋の中、目を開ければ右腕はちゃんとあるし、左には彼が起きている。
それでもまだ失ったままのような、ときどき腕の部分が透けるような感覚に苛まれては、必死に腕を動かして存在を確認する。

起きたばかりで意識が混乱して、まだうなされている私を彼が心配そうに見ている。
大丈夫?と声をかけてくれる。
私は、右腕を失う夢を見たんだ、とても怖かったんだ、と乱れた呼吸を整えながら彼に説明する。
彼は改めて、大丈夫だよと慰めてくれる。

そのときだった。

スマホのアラームが鳴り渡り、私はようやく夢から目覚める。
まだまだ外は暗い時間、隣を見るとぐっすり眠る彼がいた。