土下座してると思ったら虫撮ってる人。
なんだっけ、あの、黒くてモフくてポンポコしてるやつ。全体的に丸っこくて、脚が短くて、よくうどん屋さんの前に立たされてるやつ。そう、タヌキ。
突然ですが、みなさんはタヌキと間違われたことはありますか。
ボクはあります。
こんにちは、昼杉です。
老夫婦にね、言われたの。「あ、タヌキかと思った」って。山沿いの水路に入って虫を撮っていたときだね。背中だけ見えたんだと思う。
あれ、太った?
前は痩せてたよね。
ランニングしてるんじゃなかったっけ?
もういい、たくさんだ。久々に会った人たち、毎日顔を合わせる人たち。みんな言うんだ。俺を何だと思ってるんだ。
言うに事欠いて「あ、タヌキかと思った」、ですか。
で、なんとか誤解が解けました。
このとき撮ってたのがこのオニヤンマの羽化。黒と緑のカラーリングでお馴染みだと思うんだけど、羽化したては蛍光イエロー。だんだんと色が変わっていくわけ。老夫婦に教えてあげたら、ほえーーーーーー、ほっほっほ、ほっほっほ・・・、と繰り返しながら山ん中に消えてったわ。お前は狸か。
まぁ、こういうのはイレギュラーなんだけどさ。山で虫を撮っていると色んな人と出会うのよ。ラジオ体操のために毎日山を上り下りしながら自然を楽しむお婆ちゃんもいたし、俺のテリトリーだと包丁を持って激怒してたお爺ちゃんもいた。俺を刺してくる蚊をひたすら代わりに潰してくれるチビっ子もいた。
で、この前は良い人がいた。お帽子を召した、紅茶が似合いそうな穏やかなおば様。「なにしてるんですかー」って。
カメムシ撮ってます!!!!!!!
もう元気いっぱい。爽やか。枯れ木も思わず花が咲いてる。
なんで虫を撮って、noteを書いたり、SNSに載せたりしてるかって、単純に楽しいからなんだけど、やっぱり自分が好きなものを知ってほしいからだと思うのね。一緒に楽しんでもらったら最高じゃん。
で、いま千載一遇のチャンスが舞い降りたわけですよ。
俺「カメムシ撮ってます!」
おば様「えー、カメムシ?見せてもらってもいいですか?」
ちょいちょいちょい、俺が欲しい言葉を全部くれるじゃん。え?ドッキリ?虫に興味ある人がいたら昼杉はどうなるかモニタリングしてる?
俺「これこれ、これです。」
おば様「え、どれどれ?どこ?」
わかる。わかるよ。茶色い地面に1.5cm程度の茶色い虫。遠目で分かるわけがなかった。しかもカメムシ。ただでさえイメージが悪いのに、そのなかでも屈指の地味さを誇るクサギカメムシ。あまりにも最弱。見られたところで呆れられるのは明らかだった。
だが、このまま帰すわけにはいかない。
""" いま一番良い角度で撮るんで待ってください! """
俺はカメムシを手に乗せて叫んだ。
俺「この首の下!クサギカメムシはこの裏側の首の下が綺麗なんです!!!キラキラ輝いているでしょう!見て下さい!!!見て!!!!!」
一息で言い切ると我に返った。
オタクの暴走。伝う冷や汗。時は戻せない。
おば様「色んな色があって綺麗ね~!裏側なんて気にしたことなかったわぁ。良いもの見せてくれたから飴あげる。」
エンダァアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイヤァァアアアアァァァァァーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
虫撮り中のフィールドでは、撮影よりも話しかけられたときの交流のほうを優先しています。こういう出会いがたまんねえんだ。
満足したので下山した。
ほろ苦いコーヒー味の飴。だけどとっても甘かった。
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