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“これが最善” がん治療の選び方 その2

「どの治療法を選べばいいのか?」という疑問は、“がん”という病気にかかってしまわれた方みんなに共通する悩みかと思います。
さらに “がん”になってしまっただけではなく、「進行しているから手術は難しい」と言われても、すぐに納得することなどできようがありません。
しかし、残酷なことに、悩んでいる時間も“がん”は待っていてはくれませんので、しかるべき時期に何らかの選択をしていかなければなりませんが、100%自信がある選択なんてできないことの方が多いでしょう。
そのような中で、どのように治療法を選択していけばよいのでしょうか?
前回は、“抗がん剤治療を受けないこと”に関して考えてみました。
今回は一歩進んで、“抗がん剤治療”は受けることにしたものの、どんな抗がん剤治療を選ぶのが正解なのか?について考えていきたいと思います。

最後までお読みいただけたら嬉しいのですが、“予後”や“死”に関する話題が含まれていますので無理なさらずにお願いいたします。
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▼“抗がん剤治療” のメリットとデメリット
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手術が困難な進行がんにおいて、抗がん剤治療を受ける最大のメリットは"残りの時間の延長“、つまり”延命”ということになります。
二つ目のメリットは、”がん”が小さくなることで、痛みなどの"がん"に伴う症状が緩和されることがあります。
一方、デメリットは何といっても“副作用”だと思います。
前回も述べましたが、抗がん剤治療に“副作用”がなければ、受けないという方はほぼいらっしゃらないだろうと思っています。
抗がん剤治療に限らず、どのような選択であってもメリットとデメリットがあり、メリットがデメリットを上回る可能性が高い場合には選択されやすくなりますし、デメリットの方が多いと感じる場合には選択されにくくなります。
ある商品の“値段”のような、目に見える尺度であれば、比較しやすく、「○○円まで値下がりしたから買おう」とか、「こっちでは●●円だが、さっきのお店では○○円で売っていたから、あちらで買う」など選択も容易です。
しかし、同じ“お金”でも“株式”となると話は変わります。“株式”の場合は、今後値段が上がるのか下がるのか、不確定な要素を含んでいます。現在は銀行にお金を預けていてもほとんど増えませんから、株式投資してお金を増やそうという方も多いようです。そして大きく増える可能性もありますが、その会社自体が倒産などでなくなってしまえば、最悪ゼロになる可能性もありますので、“株”は怖いから手を出さないという方も多いです。
“抗がん剤治療”の選択は、“株式投資”の方がイメージ的に近いと思います。
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▼“抗がん剤治療” 選択の実際
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A治療を受けた場合は効果(生存期間中央値)が12ヶ月、B治療の場合は18ヶ月だった場合、B治療を選択すれば良いかというと、そう単純ではないから困ります。
デメリットとして副作用があり、この場合A治療の方が副作用は少なめで、B治療の方が副作用は多いことが普通です(なぜなら、B治療の方が副作用が少ないのであれば、A治療を選択する理由がないので、そもそも選択肢に上がらないからです)。
大雑把に言えば
A治療は、副作用は少ないが、効果が少し弱い
B治療は、効果は高いが、副作用も強め
という状況で、「さて、AかBか、どちらを選択しますか?」となります。
これだけの条件であれば、自分の体力に自信があればB治療を受ければいいし、高齢などで体力に自信がない場合はA治療を受けるなどでいいかもしれません。
しかし、問題はもう少し複雑です。
副作用が少ないとされていたA治療を受けた場合でも、10-20%くらいの確率で強い副作用が出現してしまう可能性があります。そのような人が副作用の強いB治療を受けていたら、もっとひどいことになったかというと、「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」としかいえません。
逆もしかり。
頑張ってB治療を受けてみたものの副作用が大変だったので、A治療に変更してみたところ、B治療よりもひどい副作用が出てしまったなんてこともありえます。
さらに、「効果を期待してB治療を選択したが、副作用が強く途中でやめた。もうこれ以上の抗がん剤治療は受けないことにした。」となると、はじめからA治療を選択して、継続できていた方が結果的に良かった可能性がでてきます。
更にさらに、A治療の効果が12ヶ月といっても、皆が12ヶ月の効果というわけではありません。あくまでも中央値が12ヶ月ということになりますので、中には全く効果が出ない人(治療期間2ヶ月くらい)もいらっしゃいますし、とても長―く効果が持続する人(数年レベル)もおります。B治療も同じですので、ある人にとってみては、A治療の方が良く効いたということも起こりえます。
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▼結局、どういうこと???
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余計に混乱させてしまい申し訳ございません。
先ほど抗がん剤治療の選択は、株式投資に似ているとお話しさせていただきました。
“株”は、値段が上がると信じて買ってみたものの、残念ながら値段が下がってしまうかもしれないわけです。
抗がん剤治療の効果や副作用も、期待通りにいかないことがありえるという点でとても似ていると思っています。
「ある程度予測不可能なことが起こりえるのだ」「うまく行くこともあるし、うまく行かないこともある」ということ、つまり”リスク“があるというです。
抗がん剤治療に限らず、何らかの医療行為を受ける場合には、多かれ少なかれ”リスク”はあります。それが例え”風邪薬”であっても、人によってはアレルギー反応を起こしてしまう場合があることはご存知のことだと思います。ましてや“抗がん剤治療”には副作用が残念ながらほとんどの方に出てしまいますし、副作用が出たからといって効果があるかというとそういうわけでもなかったりします。
つまり、”リスク“は背負いたくないけれども、抗がん剤治療は受けたいというワガママはできないということです。
ですので、重要なのは”リスク”をいかに管理するかだと考えます。
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▼抗がん剤治療における”リスク管理”とは?
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効果は高いが、副作用が強めの治療(B治療)を選択した場合を例に考えて行きます。
ここでの”リスク管理”とは、まず第1に「どこまでの副作用なら許容できるのか?」です。
下痢とか吐き気など、個別の副作用というよりは、それらの副作用が総合的に考えてどのくらい生活に影響があるかという方が目安にしやすいと思います。
仕事をしながら抗がん剤治療を受ける場合、仕事を休んでも抗がん剤治療を優先するのか、逆に仕事に影響しない範囲で抗がん剤治療の方を調整(減量や変更)するのか、といった具合です。
ある程度の“ライン”を事前に決めておけば、自分が想像していたよりも多少副作用が強く出てしまったとしても、そのラインを下回らない限り、継続を悩む必要はなくなります。
また、副作用を仕方がないとあきらめてしまうのではなく、対処方法を色々と工夫してみましょう。そうすることで、結構、改善する場合が多いです。自分で良いアイデアがない場合には、担当医や看護師・薬剤師さんに相談してみると、何かアイデアがもらえるかもしれません。これも重要な"リスク管理"だと思います。
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▼”リスク管理”②
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第2のリスクは、“効果”についてです。
効果が高いといわれていた抗がん剤治療を受けたとしても、少ないながらも“効果”が出ない人がいます。
“効果”と“副作用”は基本的に相関しないので、“副作用”が強く出たからといって必ずしも“効果”がでるわけではありません。
この点を勘違いしてしまうと
「つらい副作用に耐えて頑張って治療を受けてきたのに、効果がなかったなんてガッカリだ!」ということになりかねません。
もちろん“効果”がなかったことはガッカリなのですが、それに加えて「つらい治療を耐えたのに」となってしまうと、ガッカリも2倍になってしまいます。
その結果、「次の治療は“必ず”効くんでしょうね!」なんて担当医に言ってしまい
担当医から「私の治療が気にくわないのなら、他の病院にいってみてもらってください!」とか言い返えされてしまったりするかもしれません。
つまり”リスク管理②”としては、「効果と副作用は一致しないことを忘れない」です。
残念ながら、努力が報われないこともあるということです。
また蛇足ですが、担当医と効果も基本的には一致しませんので、「あっちの医者にみてもらっていたら、効いていたかも?」という後悔は不要と考えます。
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▼まとめ
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長くなってしまったので、今回はココまでといたします。
治療選択という意味では、直接関係のない内容になってしまいましたが、知っているのと知らないのとでは、選択した後の後悔度が大きく違ってくると思いますのでお話しさせていただきました。
つづきます。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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