大堀ヒサツグ抗がん剤治療研究所

抗がん剤治療を専門にしている腫瘍内科医です。短い診察時間では伝えきれない、抗がん剤とう…

大堀ヒサツグ抗がん剤治療研究所

抗がん剤治療を専門にしている腫瘍内科医です。短い診察時間では伝えきれない、抗がん剤とうまく付き合っていく方法を発信していきます。

最近の記事

“これが最善” がん治療の選び方 その3

「がん治療の選び方」、特に進行がんにおいて、抗がん剤治療を勧められた時にどうすればいいのか?についてお話ししてきています。 “その1”では、抗がん剤治療を受けないという選択肢について考えました。 “その2”では、抗がん剤治療を受けると決めた場合の、メリットだけではなく、デメリットにも目を向けましょうというお話しさせていただきました。 "その3”となる今回は、治療の目的(ゴール)についてお話ししていきたいと思っています。 最後までお読みいただけたら嬉しいのですが、“予後”や“死

    • “これが最善” がん治療の選び方 その2

      「どの治療法を選べばいいのか?」という疑問は、“がん”という病気にかかってしまわれた方みんなに共通する悩みかと思います。 さらに “がん”になってしまっただけではなく、「進行しているから手術は難しい」と言われても、すぐに納得することなどできようがありません。 しかし、残酷なことに、悩んでいる時間も“がん”は待っていてはくれませんので、しかるべき時期に何らかの選択をしていかなければなりませんが、100%自信がある選択なんてできないことの方が多いでしょう。 そのような中で、どのよ

      • “これが最善” がん治療の選び方 その1

        進行がんと診断され、腫瘍内科に紹介されていらした方の最初のハードルは、何といっても「どの治療を選べばいいか?」だと思っています。 “がん”になってしまっただけではなく、“進行している”と言われて不安や焦りを感じない方はまずおりません。 そして、そのようなこれまで経験したことのない極度の不安や焦りを感じている状況で、いくつかの選択肢を提示されても、「どれを選べばよいのか?」、迷うのは当然だと思います。 どのように治療法を選択すればよいのでしょうか? 今回から、何回かにわけて、こ

        • 抗がん剤の副作用はどうして生じるのか? その9

          前回は「がん悪液質」についてお話させていただきました。特に「不応性悪液質」に進展してしまうと、後戻りがきかなくなってしまうため、そうなる前に手を打ちましょうという内容まででした。 今回は、では具体的にどのような対応をすれば良いのかについてお話ししていきたいと思います。 最後までお読みいただけたら嬉しいです。 ――――――――――――――――――――――――― ▼復習:悪液質の診断基準 ――――――――――――――――――――――――― がん悪液質の診断基準は・・・ ①過去

        “これが最善” がん治療の選び方 その3

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その8

          ここ数回にわたって、抗がん剤の副作用というよりは、「体重減少」についてお話ししてきています。 もちろん副作用でも体重が減ってしまいますが、「がん」自体の影響で体重が減ってしまう場合があります。 その原因の一つが、「がん誘発性体重減少(cancer-induced weight loss : CIWL)」です。 今回は、そのCIWLの中でも、「がん悪液質」についてお話ししていきたいと思います。 最後までお読みいただけたら嬉しいです。 ――――――――――――――――――――――

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その8

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その7

          体重が減ってしまうと、がん治療に悪い影響がでかねません。 とはいえ、「体重減らないように頑張っているけど、どうしても減ってきてしまう」という方も多いです。 がんにかかるとどうして体重が減少するのか? 前回は原因の一つである「がん関連体重減少(cancer-associate weight loss : CAWL)」についてお話ししましたので、今回はもう一つの原因である「がん誘発性体重減少(cancer-induced weight loss : CIWL)」についてお話しして

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その7

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その6

          前回は、体重が減ってしまうことのがん治療に与える影響に関してお話しさせていただきました。 今回は、なぜがんになると体重が減ってしまうのか? その原因についてお話ししていきたいと思います。 最後までお読みいただけたら嬉しいです。 ――――――――――――――――――――――――― ▼CAWLとCIWL ――――――――――――――――――――――――― 「がん」に関連して体重が減少してしまう原因としては、大きくわけて2つあるとされています。 それは、「がん関連体重減少(canc

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その6

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その5

          抗がん剤治療による副作用には個人差が大きいので、実際にはやってみるまでどうなるかわからない状況なのではありますが、そうはいっても、以下のような人は副作用が出やすい、ということがわかっております。 それは、 ①高齢(70歳以下に比べて、70歳以上) ②全身状態(パフォーマンスステータス:PS)が悪い人 ③栄養状態が悪い人 でしたね。 ①-②に関しては、既にお話ししましたので、今回は③からお話ししていきます。 ――――――――――――――――――――――――― ▼体重について ―

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その5

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その4

          抗がん剤治療による副作用には個人差が大きいので、実際にはやってみるまでどうなるかわからない状況なのではありますが、そうはいっても、以下のような人は副作用が出やすい、ということがわかっております。 それは、 ①高齢(70歳以下に比べて、70歳以上) ②全身状態(パフォーマンスステータス:PS)が悪い人 ③栄養状態が悪い人 でしたね。 前回①高齢者に関してお話ししましたので、今回は②からお話ししていきます。 ――――――――――――――――――――――――― ▼パフォーマンスステ

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その4

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その3

          「抗がん剤の副作用はどうしてでるの?」という題名をつけておきながら、それに関する内容を記載していないことに今更ながら気がつきましたので、今回はまずはその点からお話ししていきたいと思います。 なお、抗がん剤と一口にいっても、分子標的治療薬だったり、オプジーボのような免疫に作用する薬剤なども増えてきましたので、ここでは昔ながらの抗がん剤、殺細胞性抗がん剤についてお話ししていると思ってください。 ――――――――――――――――――――――――― ▼抗がん剤の副作用はどうしてでるの

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その3

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その2

          抗がん剤治療にもし副作用がなければ、受けたくないという人もほぼいないだろうし、やめるか続けるかで迷うこともなくなるのでしょうが、 現実的には抗がん剤には困った副作用がたくさんあります。 何とか頑張って続けたいという思いから、少しでも副作用が軽くなればと担当医に相談してみたが、「ガマンするしかない」と言われ対応してもらえなかったり、「じゃあクスリ使ってみましょうか」と言われて飲んでは見たものの、全く効果が実感できなかったり・・・ やっぱり辞めるしかないのでしょうか? ―――――

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その2

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その1

          抗がん剤治療には吐き気などの副作用がつきものです。 副作用が心配で、抗がん剤治療を受けたくないとおっしゃる方も多いですし 受けてみたら副作用が大変でやめたいという方も居られます。 副作用は仕方がない。耐えて頑張っていればそのうち良くなるだろうと耐え忍ぶ方も多いと思います。 そんな抗がん剤の副作用に対して、どのように対応していけば良いのかを考えていきたいと思います。 ――――――――――――――――――――――――― ▼ひどいのは自分だけ?? ―――――――――――――――――

          抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その1

          がんと『運』その4

          抗がん剤では治すことが難しい進行がんの状態でも、僕の体感では数百人に一人くらいの割合で、がんが治ってしまう方がおります。 抗がん剤治療を受けずに治った方には残念ながらまだお目にかかったことはございませんので、進行がんが治癒した方は抗がん剤治療が非常に良く効いたということになるかと思います。一方、残念ながら抗がん剤の効果が全く現れない方も時々いらっしゃいます。これら抗がん剤の効き方に、『運』の要素が大きく関与するのであれば、『運』を良くするためにできることは何かを複数回に分けて

          がんと『運』その3

          つらい副作用に耐えて抗がん剤治療を受けたのに、全く効果がなかったら・・・ 「がっかり」を通り越して「怒り」になってしまい、その怒りの矛先を担当医へぶつけてくる人もしばしばいらっしゃいます。 それをきっかけに、担当医との関係まで悪化してしまい、その後の治療にまで影響してしまう・・ なんてことまで連鎖的に起こってしまいかねません。 抗がん剤治療が効く効かないに、『運』の要素が大きく関与するのであれば、『運』を良くするためにできることは何かを考えてきました。 3回目の今回もどうぞよ

          がんと『運』その2

          同じ抗がん剤治療を受けても、効果が出る人とでない人がおり、 どちらになるかは『運』の要素が大きいのではないか 『運』であれば、あきらめるしかないかというとそうではなく、運の方程式に則って『運』は鍛えることができそうだというのが前回のお話しでした。 今回は、抗がん剤治療を受けていく中で、実際にどうすれば良いのか?というお話しをしていければと思っております。 今回もどうぞよろしくお願いいたします。 ――――――――――――――――――――――――― ▼おさらい ――――――――

          がんと『運』

          同じ抗がん剤治療を受けても、すごく良く効く人もいれば、全く効果が出ない人がいます。 中には、治らないといわれていた進行がんが完治してしまう方も非常に少ないながら存在します。 これらの違いはどこから生じるのでしょうか? 年齢、性別はほとんど関連がないとされています。 「お金」を持っているかどうか?もおそらくは関連しないでしょう(関連がないと信じたい)。 それまでの人生でどのくらいの「徳」を積んできたかどうか?がもし関連するのだとすると、僕は抗がん剤が効かないだろうからはじめから