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“これが最善” がん治療の選び方 その3

「がん治療の選び方」、特に進行がんにおいて、抗がん剤治療を勧められた時にどうすればいいのか?についてお話ししてきています。
“その1”では、抗がん剤治療を受けないという選択肢について考えました。
“その2”では、抗がん剤治療を受けると決めた場合の、メリットだけではなく、デメリットにも目を向けましょうというお話しさせていただきました。
"その3”となる今回は、治療の目的(ゴール)についてお話ししていきたいと思っています。
最後までお読みいただけたら嬉しいのですが、“予後”や“死”に関する話題が含まれていますので無理なさらずにお願いいたします。
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▼抗がん剤治療の“ゴール”は?
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A治療は、副作用は少ないが、効果が少し弱い
B治療は、効果は高いが、副作用も強め
という2つの治療選択肢を提示された状況で
B治療を選択した場合を考えていきたいと思います。
効果は期待できるが、副作用が大変そうという場合ですね。
この場合の”効果”とは、がんがどのくらい小さくなるか(縮小率)やそもそも小さくなる確率(奏効率)のことを言っているわけではないことに注意が必要です。
抗がん剤治療の優劣を比較する場合の最重要ゴール(主要評価項目)は、全生存期間の延長です。つまり、その治療を受けた人が「(他の治療に比べて)どのくらい長生きできたか?」となります。
もちろん、そのような効果がある治療はがんの縮小率や奏効率も高いことも多いのですが、それらはあくまでもサブ的なゴール(副次的評価項目)です。
ですので、がん自体は全く小さくならなくても、ずっと大きくならないで長期間経過できれば、治療としての目標は達成となります。
一方、どれだけ”がん”が小さくなろうとも、効果が一時的で、持続期間が短い場合には、本来のゴールが達成できないという場合も想定されます。
CTを撮影して、“がん”が小さくなっていれば、それは担当医にとってもとても嬉しいことですが、そこで満足して治療を終了してしまうのではなく、その後も引き続き効果が持続するように、治療を継続していくことがとても大切であるということにもなります。
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▼ゴール、達成???
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生存期間の延長という"ゴール"はかなり厄介です。
実際にゴールが達成できたのかがわからないからです。
A治療よりも高い効果を期待して副作用が強くてもB治療を選択したという場合のゴールは、もしB治療ではなくA治療を選択していた場合の“もう一人の自分”に比べて、「より長く生きられたか」です。
B治療を受けた人の平均値(中央値)でもなければ、A治療の平均値(中央値)でもなく、もしも自分がA治療を選択していたら生きられたであろう期間と比べてどうか?がゴールとなるため、現実的には検証することができないということです。
できないことを考えても仕方ありませんから、「やっぱりA治療にすれば良かった」という後悔はしてはいけません。
とはいえ、ゴールがわからないと、その治療選択が正解だったのかどうかもわからないということになりかねません。
ではどうすればいいのでしょうか?
それは、”自分で好きなゴールを設定“すれば良いのです。
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▼好きなゴールを設定するのは、実はとても難しい・・・
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ありがちなゴールとして、「5年生きる」というものがあります。
「私のがんの5年生存率が○○パーセントだから、そのくらい生きられれば良い」
インターネットを検索すれば、「●●がんで余命半年と言われた私が、元気に5年過ごしています」みたいな話はいくらでもでてきます。
また、5年生存率は、がん治療のひとつの重要な指標になっているので、そこを目標にするのはよくわかります。
B治療を受けた人の平均値(中央値)が△年だから、そこを目標にするというのも、似たような発想だと考えます。
しかし、”5年”などの、時間の長さをゴールにすることは、オススメしません。
それはなぜか?
ワクワクしないからです。
私の担当しているがん患者さんにも、何人も「5年、元気」で過ごしている人がいます。
そのような人も”がん”が治っているわけではなく、抗がん剤で進行を抑えている状態です。
“がん”が治っていないということ、抗がん剤で抑えているということは、いずれ抑えることができなくなる日が来ること、最終的には”がん“で命を落とすことという”運命”は変えられていないということです。
「5年生きられたから満足。もう明日死んでもいい。」という人はまずおりません。
たとえ10年生きられたとしても、”がん”で命を落とす時がきたら「もっと生きていたい」と思うのが普通でしょう。
つまり、生きている時間の長さをゴールにして、それを達成しても”達成感”や”満足感”を味わうことはできないことが多いようです。
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▼オススメの”ゴール”
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では、どのようなゴール設定が良いのでしょうか?
私がオススメしたいのは、
第一に、達成できたら”ワクワク”すること
第二に、達成するまでの過程(プロセス)にも”ワクワク”すること
第三に、達成までに少し時間(10年くらい?)がかかること
この3つの条件を満たせるゴールがいいと考えています。
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▼なぜその条件?
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5年という期間をゴールにすることはオススメしませんが、5年間で何かをやり遂げるということをゴールにすることはとても良いことだと思います。
担当医に「平均余命2-3年です」とか言われてしまうと、何か新しいことにチャレンジすることはもうできないとか、これまでやってきたこともその時間では完成しないから続けることはムダだと考えてしまいがちです。そうでない人も、2-3年でできることを考えてしまいがちですが、2-3年かかりそうなこともやってみると案外すぐにできてしまって、すぐに目標がなくなってしまう人をよく見ます。
何もしない人や早々にゴールに到達してしまった人よりも、長い期間何かにワクワクしながら取り組んでいるひとの方が、気のせいかもしれないけど、がん治療もうまく行っている気がします。そして、そのような人が口をそろえて言うのは、「気がつけば5年経っていました。早いものですね。」というものです。
ゴールできたら嬉しいけど、ゴールできなくても、その過程を楽しんでやっているから、時間が経つのが早いのだと思います。
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▼まとめ
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治療選択の方法と言いつつ、今回もあまり選択時には関係のない”ゴール”の話じゃないかとお叱りを受けそうですが、コーチングでは、”ゴール”から逆算するという手法が良くとられますので、治療を選択するのに先だって”ゴール”の設定はとても重要だと考えてお話しさせていただきました。
ということで、ご自身にあった良いゴールが見つかるといいですね。
もう少し続きます。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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