見出し画像

寿司屋のエキストラ

24時間営業の場末の寿司屋。18時前に入ると角の席には60代の店内でもジャンパーを脱がないおっちゃんと、金髪で化粧の下手なよく喋る女。会話の内容から同伴ではあるのだが、同伴と呼ぶにはあまりにも生々しさのない、色気のない、年の離れた友人のようなふたりだった。「私さ、◯◯◯48ができるときオーディション呼ばれたんだって」「ははは」「興味なかったから行かなかったんだけど、なっとけば良かったな」「ははは」「(寿司がきて)ありがとうございます〜」。良くできたドラマの中に入りこんだようだった。リアルとは毎日の中にある。などと偉そうに言う私がその場で語っていたのは「広島死闘篇、あれ実は直前まで北大路欣也と千葉真一の役が反対だったんですよ」というような話で、私ふくめてまあ実に良くできたエキストラというか、場末の寿司屋にこれ以上ない配役と台詞であった。人生に、いい舞台を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?