見出し画像

芸術の中の時間


クリムゾンホロウという村は、どこにでもあるようなどこにもないような村だった。山の中にひっそりと佇んでいて、外部との交流はほとんどなかった。村人たちは自分たちの暮らしに満足していて、他のことには興味がなかった。
そんな村に、アリアという女性が住んでいた。彼女は赤いマントを身にまとっていて、風に吹かれるとまるで血のように流れているかのようだった。村人たちは彼女を魔女だと思っていた。彼女は何か不思議な力を持っているらしく、時々村の中で奇妙なことが起こった。でも、彼女は決して村人に危害を加えるようなことはしなかった。むしろ、時々彼女の家から漂ってくる甘い香りや美しい音楽に癒されることもあった。

エコーは画家だった。彼は東京で生まれ育ったが、何かを求めて旅をしていた。彼は色々な場所を訪れて絵を描いていたが、どこにも居場所を見つけられなかった。
ある日、彼はクリムゾンホロウという村に辿り着いた。彼はその村の雰囲気に惹かれて、しばらく滞在することにした。
彼は村の風景や人々を描いてみたが、どれも満足できるものではなかった。彼は何かが足りないと感じていた。

そんなある日、彼は散歩をしているときにアリアの家を見つけた。それは村の端にある小さなコテージで、扉には複雑な模様が刻まれていた。それはエコーの目に飛び込んできた。彼はその模様が何か意味するものではないかと思った。
彼はドアをノックした。すると、中から赤いマントを着た女性が出てきた。それがアリアだった。

「こんにちは」とアリアは言った。「あなたは誰ですか?」

「こんにちは」とエコーは言った。「私はエコーです。画家です」

「画家ですか」とアリアは言った。「それは面白いですね。私も画家です」

「本当ですか」とエコーは言った。「あなたの絵を見せてもらえますか?」

「もちろんです」とアリアは言った。「どうぞ中に入ってください」

エコーはアリアの家に入った。すると、壁には不思議な絵が飾られていた。それらは時間や空間や記憶や夢や現実や幻想や恐怖や喜びや悲しみや愛や死や生や無限や有限やすべてや何もかもを表現しているようだった。エコーはその絵に圧倒された。

「これらはすべてあなたが描いたのですか」とエコーは言った。

「そうです」とアリアは言った。「私は時間の流れを描いています。時間は私にとって最も興味深いものです。時間は変化し続けますが、同時に不変でもあります。時間は私たちを束縛しますが、同時に解放してくれます。時間は私たちの魂を映し出します」

「すごいです」とエコーは言った。「私はこんな絵を描けません」

「あなたも描けますよ」とアリアは言った。「あなたにも魂がありますから」

「魂ですか」とエコーは言った。

「そうです」とアリアは言った。「私は自分の魂の一部を絵に吹き込んでいます。それで絵が生きているように見えるのです。あなたも自分の魂を絵に吹き込んでみましょう」

「どうやってですか」とエコーは言った。

「私が教えてあげます」とアリアは言った。「私と一緒に絵を描きましょう」

そこから、エコーとアリアは一緒に絵を描き始めた。アリアはエコーに自分の技術や哲学や感性を教えてくれた。エコーはアリアの教えを素直に受け入れて、自分の絵に反映させた。彼らは絵を描きながら、色々な話をした。宇宙のことや人生のことや音楽のことや本のことや食べ物のことや愛のことやセックスのことや何でもないことや何でもあること。彼らは話しながら、笑ったり泣いたり抱き合ったりキスしたりした。

夕暮れ時、彼らは最後の一枚の絵を仕上げた。それは時間そのものを表現した傑作だった。彼らはその絵を見つめながら、満足感と幸福感と安らぎと感謝と愛情と尊敬と信頼と希望と憧れと不安と恐怖と悲しみと別れと死と生と無限と有限とすべてと何もかもを感じた。

物語はそこで終わる。でも、それは始まりでもある。彼らの絵は永遠に残るからだ。彼らの絵は誰かの心に触れるからだ。彼らの絵は時間を超えて生き続けるからだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?