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「球場を満員に」という武蔵の呼びかけに「Xデー」を思い出した

智さんの「高速スライダー号」もすごい企画だったが、これも相当にすごい。
8月3日に上尾市民球場で行われる、埼玉武蔵ヒートベアーズvs栃木ゴールデンブレーブスの試合。東地区リーグ戦の単なる1試合が、全く別の様相を帯びてきた。
武蔵の角晃多監督(角盈男さんの息子さん)が、自腹を切ってチケットを用意するという。合言葉を言えば、その日の入場チケットがもらえることになっている。
人を呼びたい。満員の球場でプレイをしたい。たくさんの人に試合を見て欲しい。BCLを知って欲しい。武蔵の魅力を伝えたい。
そんな気持ちで仕掛ける一大イベントだ。

この企画を知った時、すぐに思い出したことがある。
Jリーグが始まる前の、サッカー日本リーグだ。当時、サッカー人気は高校サッカーが頂点で、国立競技場が満員になるのは、国際試合を除けば高校サッカーの決勝戦くらいだった。高校でいかに脚光を浴びても、大学リーグ、日本リーグのサッカー場はガラガラだった。
そこに、「日産vs読売の試合を満員の国立競技場で」という企画が立ち上がる。その日を「Xデー」として、様々な宣伝がされた。結局その日、何人動員されたのか、満員にはならなかったと思うが、ぐぐっても情報が出てこなくて定かではない。自分も行かず、テレビを見ていた。
しかし、サッカーではその後、華々しくJリーグが発足した。爆発的なブームが起こり、その後もそれぞれのチームが長く地域に根を張るようになった。仕掛けの勝利だ。

あの時代は、アマチュアからプロリーグへと転換する時期でもあり、組織的な宣伝もあった。今のBCLとは状況も規模も全く違う。でも、「変えよう」とする熱意と、でっかいことをぶち上げようとする企画力を、どちらにも感じるのだ。これは「前夜」かもしれない、というようなワクワクする期待感。

BCLは歴史が浅い。それだけにどんどん変わっていける可能性がある。
チームも次々と新しい地域が参入している。東地区では福島、新潟、群馬、栃木、埼玉に、今年から茨城が加わった。神奈川も参入予定。
武蔵もまだ球団創立5年。
若いチームに若い監督。角監督は何と28歳。元楽天の片山兼任コーチよりも若いくらいだ。それだけに自分でもどんどん動くのだろうし、アイディアも活発に出しているのだろうと思う。
武蔵は応援団も熱く、応援団メンバーと応援パフォーマーが「武蔵大使」として公認され、ファンの先頭に立っている。また、選手会があるのも注目すべき点。ホームゲームには「選手会ブース」があって、選手自らブースに立ち、写真くじなど行っている。
選手主導での動きがあるのは面白い。ファンとの距離が近いのはBCLみなそうだろうが、これからも楽しい企画が出てきそうだ。

あとは、チームが強くなって勝てば、見ている方だって面白い。能力のあるすごい選手がいれば人気も出る。強いチームを作ることがやはり、ファンを増やすことになる。
この辺は田臥の栃木ブレックスとか、村田のいた栃木とか(あれ両方栃木だ)の動員力が凄かったのを見ても分かる。
皆目標はNPBだから、けた外れにいい選手がいれば、その選手はいなくなる。その繰り返しかもしれないが、応援するチームがいい試合をして勝つことが、やはり見ている側には一番嬉しい。チーム全体、リーグ全体でもレベルアップが出来るといい。

昨年1年間、富山GRNサンダーバーズを見てきた。その中からNPBに行く選手があり、指名漏れした選手もいた。
今年を最後と賭ける選手も多い。年齢制限もあるし、充分な収入が得られるわけではなく、無給期間はバイトをして過ごす。長くいられるところではない。
来年を思うと、今から寂しくなる。ずっとサポートを続けている店の店長は、毎年寂しさと嬉しさを味わいつつ、これからも支えていくのだと力強く言っていた。
経済的にも物質的にも恵まれない。そんな印象があるBCLだが、でも人は魅力に溢れている。
レベルの違いはあるけれど、一生懸命で、熱くて。チームが小さいだけに、その繋がりは密で、NPB出身の指導者のもと、成長していくのを間近で見る喜びがある。それぞれが、それぞれに魅力のあるチームになってくる。

ファンとしては、応援のし甲斐があると言っていい。
何しろ、自分が支えるのだという気持ちを強く持てる。応援の声もしっかりと届く。一緒に泣き笑いし、サポートしていく実感がある。
何だか部活みたいだなと思ったこともある。何年かしたら、卒業していく選手がいて、新しく入ってくる選手がいて。新しいチームになって。練習に試合に必死に打ち込んでいて。
それを家族のように熱心に応援して支えていく。
その選手の進路までも応援しに行ったり。選手が変わってもチームを応援していったり。
そんな身近な感じがする。
NPBもそうではあるけれども、BCLではより一層強く思う。今のチームは今だけしかない。今の選手たちを知って、見て、応援して、そうして一緒に喜びたい。

武蔵を見に行くきっかけは吉田大就くんの入団だったけど、地元のヒートベアーズを知る良い機会になった。選手を覚えて、チームを知れば、応援する楽しみは大きくなっていく。
大就くんは来年もいる予定だけれど、今年限りと決めてやっている選手もいる。今のチームは今しか見られない。
きっかけは何でもいい。有名な選手でも、縁のある人でも、地縁でも。そこから見る面白さ、応援する楽しさが伝わるといい。

自分も1試合でも多く見に行って、一緒に勝ちたい。
8/3は上尾に行って、その日を見届けよう。満員の観客と選手が声を合わせて「勝利の歌」が歌えたら、言うことはない。



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