「名言との対話」4月1日。見田宗介「新しい世界の胚芽となるすてきな集団、すてきな関係のネットワークを、さまざまな場所で、さまざまな仕方で、いたるところに発芽させ、増殖し、ゆるやかに連合する胚芽をつくる」
見田 宗介 (みた むねすけ、 1937年 8月24日 - 2022年 4月1日 )は、日本の 社会学者 。享年84。
東京都出身。東大文学部社会学科卒業。講師、助教授を経て1982年に教授に就任。見田ゼミは人気が高く、吉見俊哉、宮台真司、小熊英二、上田紀行などの多くの優れた研究者を輩出している。
1988年の社会学科長時代には、中沢新一を助教授に推すが教授会で否決されるという事件(中沢事件)が起こる。
著作のタイトルには「現代」と「社会」という言葉が多い。現代社会の中で生きる青年像、生きがい、社会意識などを追及し、メディアを通じて影響力があった。代表には作は1996年刊行の『現代社会の理論』などがある。見田の著作には私も何冊か触れている。
見田は社会学の課題は、未来を予見し、未来を構想することと語っていた。その構想とはいかなるものであったか。
2018年8月に刊行した『現代社会はどこに向かうかーー高原の見晴らしを切り開くこと』(岩波新書)で、見田宗介の次のようなメッセージを聴いた。
貨幣経済と都市の論理の原理が社会全域に浸透し、無限性を生きる理想を600年かけて追求したのが「近代」である。それが1970年代に世界の有限性に気づき、反転し急速な減速に陥った。世界の有限性を生きる思想を確立するという課題に直面している。
その課題を解決する方向として、以下を提言している。
新しい世界の胚芽となるすてきな集団、すてきな関係のネットワークを、さまざまな場所で、さまざまな仕方で、いたるところに発芽させ、増殖し、ゆるやかに連合する、ということである。
一人の人間が、一年間をかけて一人だけ、ほんとうに深く共感する友人を得ることができたとしよう。10年で10人。20年で100人、30年で1000人、40年で1万人、50年で10万人、60年で100万人、70年で1000万人、80年で1億人、90年で10億人、100年で100億人。前回の革命に600年を要したとすれば、速い革命である。これは破壊する革命ではなく、創造する革命である。
近代の終焉、そして見田のいう現代が始まって半世紀が過ぎた21世紀初頭の現在に生きる私たちに送る最後のメッセージを重く受け止めたい。
現代社会はどこに向かうか-高原の見晴らしを切り開くこと (岩波新書)
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