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5月12日。木下是雄「事実と意見を区別せよ」

木下 是雄(きのした これお、1917年(大正6年)11月16日 - 2014年(平成26年)5月12日)は、日本の物理学者。

1953年に 学習院大学理学部教授に就任。1956年に 学術会議オブザーバーとして米国南極観測隊に参加。1968年に 応用物理学会会長に就任。1973年に 学習院大学理学部長、1981年には 学習院大学学長に就任。

薄膜や固体表面に関する研究を進めていく一方で、日本の物理学者の同人会であるロゲルギストの一員として、雑誌「自然」に科学に関するエッセイを多数発表した。

この人を有名にしたのは、『理科系の作文技術』(中公新書)だ。1981年9月の初版刊行から、35年間で80回増刷されるロングセラーとなり、ついに100万部を超えている。中公新書で100万部を突破したのは、1993年に刊行された野口悠紀雄の「『超』整理法」以来2冊目である。私が書いた『図で考えれば文章がうまくなる』(PHP)では、谷崎潤一郎『文章読本』、清水幾太郎『論文の書き方』、本多勝一『日本語の作文技術』、野口英世『「超」文章法』と並んで、この本を歴史的な名著と規定している。

『理科系の作文技術』の主張は以下のとおり。「主題の吟味」では、一文書一主題と読者の想定によって、目標規定文を一つの文にすること。次に「事実と意見の区別」。証拠を挙げて裏づけできる事実と判断である意見を区別することとし、事実については書くべき内容を吟味、明確に、修飾語を入れなと主張。意見については「私は」と書き、事実を踏まえた判断を書く。「わかりやすい文章」として、序論・本論・結びの構成をとることとし、序論で結論の要旨を書いて読むべきかの判断材料とする、本論のパラグラフではトピックセンテンスで内容を述べ、次に詳細を展開する。結びではポイントを列挙し将来の発展への道を示唆する。

理科系の仕事上で用いる文章術を学ぶことは、文章を書く上で大いに参考になる。主題を吟味し、事実と意見を区別し、パラグラフを外観から細部へと書いていくことによって論理的な文章が書ける、それがこの名著の結論である。特に事実の上に立って論理的にみちびきだした意見を述べよ、はこの本の核心だ。私を含めて文科系の人も心したいところだ。一冊の代表作がその人の生きた証となって、そのロングセラーを書いた著者は影響力を保持しつ長く生き続けるのである。 ある時点のベストセラーよりも、時代を越えて影響を与えるロングセラーの方が重要だろう。それがもっと永く生き続けると古典になる。

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