2月7日。河上和雄「はたして、この仕事だけで一生を終えていいのか?」

河上 和雄(かわかみ かずお、1933年4月26日 - 2015年2月7日)は、日本の検察官・弁護士・法学者。東京地検特捜部長、法務省矯正局長などを歴任し、最高検公判部長を最後に退官し弁護士となった。駿河台大学名誉教授。作家の三好徹は実兄。

人間は性悪であり、大多数は家庭・学校・環境という後天的な教育によって、かろうじて踏みとどまっている、また人間の精神生活は進歩していない、むしろ退化している。それが検事生活34年で得た、悪人と渡り合った仕事師の人間観だった。

河合はしないことを決めておく、判断基準を持っておく、とすっきりと生きていけると言う。

・「こういうことはしない」とか「人に背中を見せない」とか「人をうらやむことはしない」と自分の縛りを作っていけばいいんですよ。そうやっていくうちに気がついたころには、自分なりの生き方っていうのが見えてきますから。

・「最初にきたから」と判断すれば、面倒臭くなくていいんですよ。「どっちがいいだろう」なんて、いちいち悩むよりはスッキリしていてわかりやすいから。

陽の当たるところを歩いてきた。あとは検事総長になるか、最局裁の判事になるしかない。そういう未来が見えたとき、「はたして、この仕事だけで一生を終えていいのか?」という疑問が湧いた。そして「つまらないな」と考えた。

「過去に何人ものトップを見てきたけど、本当に尊敬できる人っていうのはせいぜい2人ですよ。あとは、どうしようもないヤツばっかりで……。もちろん、形の上では仕事をちゃんとやってますよ。だけど、精神的にはなんの魅力もない、そんなつまらない人生は歩みたくないですから」と、58才で退官する。

自分なりの決め事、判断基準を持っていた河合は、意義のある仕事の限界をみて、先の見えない人生を歩むことを決断している。ひからびた精神状態で過ごすであろう高い地位を捨てたその後、監査役などで関与した企業などは、ニチレイ、京都ホテル、キューピー、リキッド・オーディオ・ジャパン、ルシアン、遊戯産業健全化推進機構、石油資源開発、ROKIなどだ。2007年には、74才で「折鶴」「宗谷岬」などのヒット曲を持つ歌手の千葉紘子(63才)と再婚している。そしてテレビの真相報道 バンキシャの『ご意見バン!』としての発言している古武士の風格がある姿はよく知られている。没するまでの20数年間は、退屈ではなかっただろう。


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