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「名言との対話」1月14日。夏木陽介「パリ・ダカは人生によく似ている。爆発力の問題ではない。持続の問題だ」

夏木 陽介(なつき ようすけ、1936年昭和11年2月27日 - 2018年(平成30年)1月14日)は、日本の俳優、ラリードライバー。

爽やかさと野性味を兼ね備えた二枚目映画俳優として、現代アクション、戦争映画、時代劇、怪獣映画、青春映画、サラリーマン物、文芸映画、コメディと多彩な領域で活躍した。

1965年に放送開始された日本テレビ日曜20時枠青春ドラマシリーズの第1作となった『青春とはなんだ』の主演教師・野々村健介役があたる。後に様々なバリエーションで作られる学園ドラマの魁となったこの作品は高視聴率を誇り、一気にお茶の間での知名度を上げる。翌年の主演映画『これが青春だ!』も大ヒットした。当時高校生だった私はこのテレビ番組のファンであり、主役の夏木陽介のさっそうとした教師にあこがれたものだ。

しかし夏木陽介は、たまたま縁のあった俳優稼業に没頭することはしなかった。50歳を過ぎてサハラ砂漠を疾走するパリ・ダカール・ラリーに魅入られる。1985年1986年にドライバーとしてダカール・ラリーに出場している。その後1987年から1993年までは「チーム三菱シチズン夏木」の監督として篠塚建次郎増岡浩らを出場させた。総合2位にもなっている。

『男がひとりでいる理由』(講談社)を読むと、生涯独身をとおした理由がわかる。

・自分だけの、生の情報をつかむためには、自分自身でやってみるしかない。

・楽しくなければ仕事も遊びもしたくない。

・一番の楽しみは自分と違う生き方、考え方を持った人達との出会いである。

ノーサイドの笛が鳴るまで一生懸命遊び、一生懸命働き、一生懸命生き続けたい。

パリダカは22日間という長丁場で、自分と闘いながら平常心でいられるかが勝ち負けのカギになる。それまでにどれだけ修羅場を踏んできたかが問われるのだ。技術と体力だけでは勝てない。精神力がキモになる。自分の限界に挑戦した経験の豊富さ、それを乗り越えてきた自信、それが男のプライドになり、完走と勝利を得ることになる。「男の価値は踏んできた修羅場の数に比例する」という夏木陽介は、修羅場を乗り切るためには一時の爆発力ではなく、悪環境に耐えて平常心で前に進む持続力がカギであり、このことは人生と同じだと語っているのだ。

「持続力」についての考えを深めておきたい。

  • 時間的な持続力をもった人間が例外的な偉人として珍重される。、、もしも何十年かの人生を通じて、なにごとかについての持続力をもつことができるなら、それは、とりもなおさず、「生きがい」のある人生であった、ということである(加藤秀俊

  • 深く強い呼吸法と精神の集中力、持続力があって、初めて能は成立するのである(観世栄夫

  • 生産力は集中力プラス持続力です。(船曳建夫

  • 幸福になるためには勇気をもって第一歩を踏み出すことが必要であり、歩みを止めずに、次の一歩を踏み出さねばならない。果てしない一歩の積み重ね、それが「歩む」ということなのだ。ほんとうに試されているのは、歩み続ける勇気である。(アドラー

  • 意思の持続力には、損得の計算を越えたにぶい、しかし堅牢な情念というものがその性格の底にある(司馬遼太郎の家康描写から)

  • 福地源一郎桜痴、この人の本質は、ジャーナリストだったと思う。新しいことにすぐに飛びつくが、持続力に欠ける体質である。

それぞれに納得感のある説明だ。それをまとめておこう。

能の観世栄夫の「精神の集中力、持続力」、東大の船曳建夫の「生産力は集中力プラス持続力です」が同じことを言っている。その持続力が、加藤秀俊のいう「生きがい」に、そしてアドラーが指摘する「幸福」につながるということだ。その失敗例が福地源一郎であり、成功例が徳川家康であり、夏木陽介である。


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