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すべての始まりはリゾートバイトだった。#6『男の選別』

2〜3日勤務してだんだんと仕事も慣れてくると、一緒に働くメンバーの名前も覚え始めてきた。
リフトマンなので男性の方が多めの職場。年齢の近い人たちもたくさんいた。
歳の近い男女が集まると、女子たちは決まって寮で『男の選別』トークで盛り上がる。

「見た目めっちゃおとなしめなんだけど、すっげーいい子だし仕事できるんだよねー。あれでまだ20歳っていうんだからマジびっくりした!彼女いるらしーよー」

タバコを片手で持って話し始めたのはりょうちゃんだった。

「確かにええ子やったなぁー。あんなしっかりした20歳の子なんてなかなかおらへんよな。」

荷物を整理しながらそらがりょうちゃんの話に答えている。

「でもさー、さすがに20歳の子はもう男としてみれないなぁ。いくらしっかりしてても6個下は私の中ではちょっと無理かも。」

あかねちんが髪の毛にヘアオイルを毛先につけながら話す。

私はまだその子に会ったことがなくて、へぇーそうなんだぁーと思いながら聞いていた。

りょう「あと、悠太とかめっちゃモテるとおもうんだよね!スノーボードめっちゃくちゃうまいし、爽やか系だし。ゆうじ(りょうちゃんの彼氏)よりぶっちゃけスノーボードうまいと思う!」

そら「いやーゆうじもあれはモテるやろー。女の子にめっちゃ優しいしイケメンやし。」

あかねちん「そういえば今日は斉藤さんと仕事一緒だったよ。なんか自分で言ってたけどマッチョらしいよ。なんかあんまりいいイメージなかったけど、話したら結構面白かった!でも、タイプではないから友達でいいかなーって感じだよ。」

りょう「自分で言ってくるとかウケる!!!確かに冬だとさー、みんなウェア着たり制服のウェア着たりしてるから、マッチョとかぜんぜんわからんよなー!」

そら「確かに斉藤さんめっちゃええやつやった!!でもうちは彼氏にするならもう自分よりスノーボード上手くないともう嫌やねん。それか、まったくもうスノーボードやりませーんって人じゃないと付き合えへん!でも、たっちゃんはホンマ優しい!いつも心配してくれたり、気遣ってくれてええなーと思う。」

自分に彼氏がいてもいなくても、女同士はこういう話が結構好きな人も多くて、盛り上がる。でも、私自身は、ちょっとこういう話が人を失礼に選別しちゃっていることかもと思って、自分からあまりこういう時自分の意見が言えないからただ聞いていることが多い。

あかねちん「え、でもさ、やっぱりリゾバでカップルってできやすいんでしょ?りょうちゃんはゆうじさんとここで出会って、みちも前、ここで出会った人と付き合ってたって言ってたし。」

そら「すぐカップル誕生するで!!でもその分、すぐに別れる。今は同じ空間にいるから楽しいけれど、ここが終わったらリゾバってお互い住んでるところも離れ離れやん。強制的に遠距離恋愛になるから、離れたらだいたい別れる。やから、続いているのはすごいことやし、めっちゃ珍しいんよ。」


りょう「そうそう、あとさ、一緒に働いてた友達も言ってたけど、ゲレンデマジックって本当にあるって。かっこいいウェア着てスノーボードやって、グラトリでぐるぐるまわってた時は死ぬほどかっこよかったのに、夏その彼と会った時、ぜんぜんかっこよくなくて、むしろ別人に見えて別れたんだって。急に魅力を感じなくなるってまじであると思う!」

あかねちん「りょうちゃんはゆうじさんにオフシーズンそういうふうに感じたことはなかったの?」

りょう「たしかにスノーボードやってるときのゆうじはめちゃくちゃかっこいいから、多少はわからなくもなかったけど、それでもゆうじのことは好きだったんだよねー。あと私の場合、地元がふたりともたまたま近かったから、よく会ってたし離れるって感覚も少なかったのはでかいかも。」

純愛だねぇ・・とりょうちゃんの話を聞いて和む3人。
出会いあり別れありが繰り返されるリゾートバイトは、ある意味これがくる人たちの醍醐味でもあるのかもなぁーと思っていた時、

そら「ひそかは、索道課(今のリフトの部署)のメンズの中だったら、誰がお気に入りー?」

一瞬戸惑った・・・ここで「誰々さんがいい」とかいうと、なんか好きみたいな解釈になってしまうのでは?と不安になったからだ。

りょうちゃんやそらはもう長年リピーターだから、こういう話はもう周りとなん度もしているんだろうけど、私はまだどう言っていいのか迷った。
恋愛をしたくて出会いを求めてリゾバに来たわけではなく、ただただ自分の足で冒険しにきたかった私にとって、だれがお気に入りとか、誰がかっこいいとか正直そんなのはまだなく、仕事を覚えることや人と円滑に話をするのに必死だったからだ。

私「そ、、そうだなぁ、、そらが言ってたように確かに、たっちゃんはいいと思ったなぁ。言葉とかも優しい男性は安心するから好きだし^^」

りょう「たっちゃんかー!そかそか!たっちゃんもうちらと一緒でリピーターなんだよー!ほんとちょうどうちらと同じくらいリピしてる!もう4年目かなぁ?でもひーちゃんがたっちゃんのことお気に入りだって言ったらたっちゃんめっちゃ喜ぶと思う!」

私「本人には言わないでね!!笑 恋愛感情とかじゃないからさ!」

普段こういう話をし慣れていないため、余計にうまく誤魔化せなかった返答になってしまった。。。

私にもここで恋愛とかすることになるのかなぁ?なんて他人事のように感じながらも、女子トークは寝る前まで続いた。


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