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トラベルボイスで学ぶ観光経営学Vol.4「星野リゾート、「星のや」ブランドを再定義」で学ぶーポジショニング


記事のポイント

外部環境の変化で自社のポジションは変わる。自社の強みを活かした差別化の重要性が増している。

同窓会での思い出

皆さん、同窓会とかやってますか?同窓会って定期的にやるグループとやらないグループで別れますよね。同窓会はいまだに漫画やドラマなんかでよく扱われるくらい、なんというか普通の飲み会とは違う。ある一定の年齢を超えて行われる同窓会には色んな悲喜こもごもが密集していることでしょう。ミステリーだと、久しぶりに開催される同窓会では事件がおきるわけなんですけども。生意気な蝶ネクタイをしたメガネの子供がいたら100%殺人事件がおきますのでご注意ください。きっと、周囲に黒ずくめの人がいるはずです。

さて、同窓会に参加すると当然ながら当時の面影とはだいぶ変わっています。かつてしゅっと瘦せていた人の体型が大きく変わっていたり、地味な感じだった奴がめっちゃ明るくなっていたり。なお、若いころの同窓会では痩せた姿で現れると「えー、ダイエットしたの?すごーい!」とかいう反応が多いのですが、一定の年齢を超えて痩せた姿で現れると「病気してるの?大丈夫?」って心配されます。

そんな見た目、性格、立ち位置色んなものが変わるのですが、面白いもので「その人らしさ」というのはあまり変わりません。しばらく話していると「お前は変わらないなー」って盛り上がります。人間というのは、環境に適応して変化していくのですが、変わらない芯のようなものがあるようです。

さて、そろそろ今回のニュースに入りましょう。今回取り上げるトラベルボイスのニュースはこちらです。

今回は超有名企業、星野リゾートさんのニュースです。

ニュースの概要

ニュースの概要について見てみましょう。

このほど開催された星野リゾートのプレス発表会で、代表の星野佳路氏が同社のブランド展開について説明。温泉ブランド「界」や 都市観光ホテル「OMO」については、既存施設のリブランドが主となるため 「今後、展開スピードは増していく」(星野代表)と話した。このため、特にOMOではスケールを活かしたマーケティングを模索しているという。

一方で、「星のや」や「リゾナーレ」については「地域ごとに工夫が必要。インバウンド比率、オン・オフシーズンなど地域性を反映していく苦労がある」として、展開スピードは「界」よりはスローペースになると見通した。

また、同社の旗艦ブランドとなる「星のや」では、このほどブランドコンセプトを再定義。従来の「もうひとつの日本」から、新たに「その瞬間の特等席へ」と定め、外資系ホテルにできない日本ならではのおもてなしを追求してブランド力を高めていく方針だ。

トラベルボイス 2023年10月13日
「星野リゾート、「星のや」ブランドを再定義、「界」と「OMO」は出店を加速、来年は東京・五反⽥にも」より引用

観光経営学を学ぶための背景

星野リゾートさんは宿泊施設運営の会社ですが、様々な施設(プロパティともいいます)を持っています。大規模になってくると、ある特徴でまとめた宿泊施設グループを1つのブランドとして販売することになります。ニュースを参考にすると温泉ブランド「界」や 都市観光ホテル「OMO」といった感じですね。例えば「界」は日本国内に複数存在していますが、必ず温泉がついている施設です。いわゆる温泉旅館といった感じです。

で、もう一つ重要なのが「既存施設のリブランド」という点です。宿泊施設は運営会社が変わると名前が変更されることが多いのですが、特にマリオットとかハイアットみたいな有名ブランドが運営になると、その名前を冠することになります。既存施設のリブランドとはこういうことをさします。要するに、「界」や「OMO」は既存宿泊施設というベースが存在しているので、そこに自分たちのやり方をプラスしていけばいいから展開がやりやすいわけです。(もっとも、運営会社と施設の相性が大事。星野さんはこの辺ノウハウをお持ちな感じですよね)

ところが、そんな星野リゾートブランドの中で課題になっているのが「星のや」や「リゾナーレ」といった星野リゾートの顔ともいえる施設だそうです。この課題解決のために星野リゾートはリ・ブランドを掲げました。


今回の事例で学ぶ観光経営概念「ポジショニング」「ブランド」

では、なぜ苦戦しているのでしょうか。ニュースによれば

この背景について、星野代表は、近年、日本各地に外資系高級ホテルの開業ラッシュが続き競争が激化していることをあげた。日本旅館を起源とする同社として「和のおもてなし」で差別化を図る。「海外向けのメッセージも強く入っている。どこを切り取っても『星のや』らしくなるよう、スタッフ全員でブランド浸透してく」と意欲を示した。

とあります。つまり、外資系高級ホテルの開業ラッシュという「外部環境」の変化により、顧客の頭の中で競合ホテル施設と比較した時の自社の立ち位置がずれてきたということです。

上記のような考え方はポジショニング戦略と呼ばれています。競合他社との相対的な比較の中で優位な場所をとろうという考えです。例えば、喫茶店しかないようなエリアにカフェを出店するみたいな話です。もしくは、エリアで一番安いとかもそうかもしれません。ですが、この戦略はあくまで他社との相対的な違いからくるものなので、競合の状況が変化すれば当然自社の立ち位置も変化します。星野リゾートさんは外部環境の変化により、自社の立ち位置が変化したと考えたわけですね。本当はいろいろあるんでしょうが、一言でいえば高級路線のライバルが増えたわけなので、高級宿というだけでは弱いということでしょう。

では、上記の対策として星野リゾートさんはどう考えたのか。それが「日本旅館を起源とする同社として「和のおもてなし」で差別化を図る」という記述です。ここには、星野リゾートのブランド戦略が見えます。ポジショニングを固めるためにも、しっかりとしたブランドという変わらない立ち位置を決めようという姿勢です。

「日本旅館を起源とする」という視点は外資系ホテルが手を出しにくい分野です。まず単純な事実なので変えられない。そして、同時に星野リゾートの歴史と文化が培ってきたソフト資源だからです。ハード資源は作ればいいのですぐに模倣されますが、長い年月をかけて培ってきたソフト資源はすぐに真似はできません。

星野リゾートさんは、外部環境の変化に対応するために、自社の歴史的淵源を使ったブランドへとリブランドしようとしているようです。

ポジションとブランドという考えはバランスが重要なので、比重のかけ方は違えど両輪で回す必要があるのですが、近年ではブランドの価値が上がってきています。星野リゾートさんの事例もその1つではないでしょうか。

企業も人も、外部環境の変化でいろいろと変わります。ですが、どんなに変化しても変わらない個性。それがブランドなのかもしれませんね。



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