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【共通テスト2024本試】日本史B第1問雑感

はじめに

 今年も大学入学共通テストの時期になりました。いくつかの試験会場では試験時間が短くなったり、繰り下げて実施されたりとトラブルもあったようですが、数年前の痛ましい事件のようなこともなく、1日目が終わったのは何よりでした(私も今朝はある会場へ受験生の激励に行ったのですが、パトカーがやたらうろついていたような気がしました警戒されていたのでしょうか)。受験生のみなさんの、あと1日の健闘を祈っています。
 さて、ここ数年X(旧Twitter)に投稿していた、共通テスト日本史Bの問題への雑感を、今年は始めたばかりのnoteに投稿してみようと思います。以下の注意をふまえてごらんください。

注意事項

  • あくまでこのnoteは「現職教員の立場から教育について考えたことを発信する」がコンセプトです。そのためこの分析noteは現職の高校教員や教育関係者に向けたもので、高校生が日本史の点数を上げるのにはあまり参考にならないと思います。

  • 「共通テスト 日本史」などで検索した受験生がこのnoteに辿り着き、2日目を前にして答えを目にしてしまうことのないように、個別の問題の解答には(直接は)言及しません。

それでは行ってみましょう。

第1問雑感

  • 第1問でリード文形式の問題が用いられているのには、かなり驚きました。本試に限って調べてみると、センター試験時代の2007年以来のようです。

  • この大問以外は全て生徒の学習活動の文脈で生じたもの(会話文・発表原稿・生徒作成のプリントなど)で、そういう形式がここまで続いていた中で、ある意味「脱文脈的」な問題設定をあえて採用したのか、それともたまたまなのか、気になるところ。

  • テーマは「印刷の歴史」。個人的には予想外のテーマでしたが、確かに全時代を貫けるテーマであるなと感じました。

問1について

  • 年表の中に出来事を当てはめる問題だが、歴史的事象が何年に起こったのかという、いわゆる年代の知識は不要。「この出来事は⚪︎年に起こった」ということを教え込む必要は全くないと感じた。

  • この問題の考え方は、
    ①まずリード文中の情報から、「下線部aで述べられている人物および出来事」を判断し、
    ②その上で年表から「下線部aで述べられている人物が行った出来事」はどれかを選び取る。
    ③その上で、「下線部aで述べられている出来事」は、「下線部aで述べられている人物」が敗死した出来事であることを念頭におくと、自ずとその出来事が起こった時期が決まる。

  • すなわち歴史的事象を、時期や推移に注目して配列するという、社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせる必要がある問題だったと言えると思います。

問2について

  • 日本と朝鮮との関係についての年代整序問題。Ⅰ・Ⅲは日朝貿易にかかる文であり、論理的整合性を意識すれば前後関係は判断できそう。

  • また、Ⅰ・Ⅲが室町時代の日朝貿易のことだとという知識を踏まえ、Ⅱが何について述べているのかを判断できれば、Ⅲが最後に来るはずだという判断も十分できるだろう。

問3について

  • 史料を落ち着いて読めば解ける問題だと思いますが、史料1・2それぞれに「罠」があるように感じました。

  • 史料1は全体を読み、かつ注を活用することがマストの問題。1行目だけに注目していては判断を見誤る恐れがあります。文字資料問題における「注の活用」への意識づけは、しっかりと行っていきたいところです。

  • 史料2は「織田信長が楽市楽座を行った」という知識が先入観として働くと、読み違える恐れがあると感じました。むしろ受験生がそういう先入観を持って読むだろうというねらいのもとに、この問題は作られたような気がします。余念なく史料にあたる力を育むための学習機会としても、この問題は有用であるように思います。

問4について

  • 空欄 ア は、「16世紀後半」が何時代かを想起できれば、比較的容易に判断ができたのではないかと思います。

  • 空欄 イ は、『吾妻鏡』がどういう性格の書籍なのかの理解をもって判断する問題でした。歴史資料における「資料の立場性・性格」に注目をした授業作りが求められているように思います。

問5について

  • センター試験時代にも見られたような、一問一答的な問題。X・Yそれぞれから判断するためのキーワードを抽出し、当てはまる語句を選べばいい問題でした。

問6について

  • a、bのどちらが正しいかは、史料を読み解いて判断する。ただし誤文の方の選択肢は「明確に誤文である」との判断が史料からできるわけではないので、正文が「明確に正文である」と、史料の内容をもとに判断していきたい。

  • c、dのどちらが正しいかは、設問文中の「明治時代」に注目した上での時期判断による。ただしこの問題では、両者の選択肢の冒頭に「明治時代には」の語がついているため、それ以降の内容と矛盾する内容が事実的に誤文となってしまうのが勿体無い。「明治時代には」の語がなければ、どちらも事実的には間違っていないが、問題設定の「明治時代」に対応するのはどちらかを判断する問題になるのに。

 以上、第1問の雑感noteでした。こんな感じで第2問以降もやっていこうと思います。残りの大問は明日(1/13)の日中以降に投稿予定です。

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