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ちゅーおじさん

小学校低学年の時の話
家が建設業をしている友達がいた、一番の仲良しだった。
その子の部屋は20畳位の広さがあり、遊びに行くと何時もその広い部屋で遊んでいた。

ある日友達(以下Aちゃん)が
「知ってるおじさんの家に行こう」
と言った。
その家は通学路の途中にあり、Aちゃんの会社で勤めているおじさんだった。
今考えると35歳位だったと思う。
「優しいおじさんだから一緒に行こう」 
と言うが、知らない人に不信感持っていた私は断った。

だがAは押しが強い、リーダータイプの子でハキハキとした子だった
押し切られ仕方なく行くことになった。
道々そのおじさんについて詳しく話しく聞くと。
何時も「可愛い」と言ってチューしてくれるのだという。
・・・怪しい。 低学年ながら
『余所の子供に可愛いと言ってチューをしてくる大人などいるのだろうか?』 
と考えた
Aからすると従業員のおじさんだが、私からすると全く知らないおじさんだ、不信感しかなかった。

そのおじさんは古く痛みきった賃貸の一軒家に住んでいた。
外観は薄汚れ、屋根は下から見てもわかる年期が入ったトタン屋根だ。
Aちゃんは手慣れた感じで玄関の引き戸をガラガラと開け。
「おじちゃーん!きたよー!」
と叫ぶと、身長が低い痩せた体の、目がギラギラとしたおっさんが奥から。
「Aちゃんよく来たね~」
と言いながら出てきた、そしてAちゃんをぎゅーっと抱きしめ頭にチューをしていた。
常に獲物を狙うようなギラギラした目をしている。
その頃、子供を性の対象をして見る大人がいるのを知らなかったのだが。 
「あ、こいつヤベー奴だ」
と瞬時に感じた。
Aちゃんは何やら、ぺちゃくちゃとしゃべり。
「じゃぁーねー、またねー」
と言い正味3~4分でその家を後にした。
私はホッとした。

「チューするのはいつもなの?」
と聞くと。
「いつもだよ」
とケロリとして言う。
あのおっさんのギラギラした目を思い出すとゾッとした。
私とAちゃんがいる間、そのおっさんの家のテレビには、ずーっと女子プロレスが流れていた。
   
家に帰り母親に事の次第を話して聞かせると一言。
「もう行かないんだよ」
と言われた。
当然だ、そんなキモい家になんか絶対に行かない。

そんなある日、Aちゃんが突然消えた。
大人達が言うには夜逃げをしたのだという。
それきりAちゃんの姿を見ていない。