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薔薇(ばら)の漢字は、難しいですよね…。

見ればわかる、読めるんですけれども、
いざ、書け!と言われると
「くさかんむりはあったはず…」
なりがちです。

私は自分の長編小説である
『凸凹バラ姉弟 ミシェルとランプ』において
バラをたくさん出しているのですが、

作中では漢字で「薔薇」と書かず
カタカナで表現してしまいました。
(全体的な画数、書く数が多くなりそうで…。
手書きではないんですが、何となく)

本記事は、薔薇、バラについて書きます。

そもそもなぜ「バラ」なのでしょうか?
バラバラ、バラ肉、などと同じ意味なのか。
それとも「腹」から来ているのか…?

少し調べてみますと、どうやら、
「イバラ」から来ているようですね。
「茨城県」の「茨」。イバラ。
この「イ」を除いて、バラになった。

では、イバラとは何なのか、と言えば、
「刺(とげ)の多い低木類の総称」です。
つまり、カラタチとかサルトリイバラとか、
いわゆる「バラ」ではないものも含む。
範囲が広いんです。

しかし、共通点がある。
それは「トゲがある」こと。

一説によれば、「痛い」「針」、
「いたいはり」「いはり」「いばら」
と変わっていったそうですね。
(色んな説があります)

つまり、バラとは、針、なのか…?
バラバラとか腹とかでは、ない…?

「綺麗なバラにはトゲがある」
などとも言われますよね。
そう、バラと言えば、
針のようなチクッとするトゲがある。
「イ」は取り除いたものの、
「針」の部分の「バラ」は残して
綺麗な花をバラと呼ぶようになった…?

そう考えますと、バラ、という名前は
美しい、綺麗だけれども
どこか妖艶な、どこか危険な、
あまりにのめり込むと針に刺されて
一巻の終わり
、そんなイメージに
ぴったりの呼び名かな、とも思うのです。

「はあ、そうですか。
バラ、という日本語の読みについては
何となくわかりましたけれども、
なぜそのバラを漢字では
『薔薇』と書くんですか?

羽裸とか婆羅とかでは、だめなの?」

…うん、それは不思議ですよね。
そもそも「薔」も「薇」も
あまり他の言葉では、使わない。

強いて言えば「吝嗇」(りんしょく・けち)
の「嗇」に、くさかんむりをつけたもの。
「薇」は微生物の「微」に似ているけれども
ちょっと形が変わっている…?

まずは、それぞれの漢字から確認。

「薔」
音読みで「ショウ・ソウ・ショク」。
訓読みでは「ばら・みずたで」です。
中国では「垣根」の意味のある漢字。

「薇」
音読みで「ビ」、
訓読みで「ぜんまい・のえんどう」。
中国では「風にそよぐこと」を意味する。

垣根で、風にそよぐ…?

つまりは「ツルで垣根に巻き付いて
風にそよいで咲く花=つるバラ」

を表しているそうなんですよ。

ここで、劉義慶、りゅうぎけい、という
人物を登場させましょう。

そうですね、『ちびまる子ちゃん』の
「花輪くん」をイメージしてください。

403年に生まれ、444年(死死死)に死んだ。
「劉備」が出てくる「三国志」から
二百年ほど後の時代の人です。

中国は、この頃「南北朝時代」でした。
劉義慶は、南朝宋(劉宋)の皇族の一人。
初代皇帝であった劉裕の甥っ子でして、
とてもかわいがられた。出世して、
荊州や江州の刺史(長官)になります。

この人、文人を招いて
サロン的なものを作っているんです。
いわゆる「文化人」。
そこで話したことや聞いたことを
フィクションもからめて、本にまとめた。
『世説新語』と言うんですが。

「徳の高い人の話」「左遷された人の話」など
いろんな人のお話が乗っている。
「断腸の思い」という言葉がありますが、
これは「左遷された人の話」で出てくる言葉。

それで、この劉義慶、南朝貴族らしく
(イメージでは花輪くんっぽく)
おしゃれで美を愛するところがありまして、

彼の別荘では、木を組んで、垣根を作り、
そこに「薔薇」のつるを這わせて、
遠くからはその姿を楽しみ、
近くからその花の香りを味わった…。
そんな話が残っています。

この別荘には、観賞用の薔薇がたくさん。
今で言う「バラ園」英語風に言えば
「ローズガーデン」があったそうなんです。

…彼が活躍した五世紀あたりで、
「薔薇」という言葉が出てくる。
垣根にそよぐ花=バラ、というわけ。

視点を転じて、世界的に見てみると、
すでにメソポタミア文明、
バビロン王朝の『ギルガメッシュ叙事詩』
「バラのトゲ」についての記述があります。

ギリシア、ローマとわたるにつれて
品種改良が進み、貴族たちに愛された。
エジプトの女王クレオパトラ
ローマ皇帝のネロ、いずれも
バラの愛好家だったんです。
クレオパトラはカエサル(シーザー)を
誘惑するために、バラの香水を使った。

そんな経緯もあってか、
あまりにもその姿が美しく、
香りも良い、ということで
「人々を惑わすもの」とレッテルを貼られ、

中世ヨーロッパ、教会の力が強い時代には
タブーとされて、修道院で密かに薬草として
栽培される程度だったそうです。

その反動か、ルネサンスの時代になりますと
再び愛好されていき、
『ヴィーナスの誕生』などの
有名な絵画でもバラが描かれています。

洋の東西を問わず、たくさんの人に
親しまれてきたバラ、薔薇。
その魅力は、たくさんの人々を
虜にしてきた
、というところでしょうか。

まとめます。

本記事では、その由来や歴史を
簡単に書いてみました。

先日、私はとあるバラ園を
見かけたんですが、まあその姿が
素晴らしかったこと!

田んぼと山に囲まれた個人宅でしたが、
続々と見物客が詰めかけて
(私もその一人でしたが)
写真を撮ったり
香りを楽しんだりしていました。
みんな、その美しさの虜になっていた。

バラの時期は、五月中旬から
六月初旬がピークだと言われています。

ぜひ、皆様もお近くの「バラ園」で、
「垣根で風にそよぐ」薔薇を楽しんでは
いかがでしょうか?

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