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1965年制作開始、1968年公開!
監督は高畑勲さん、
宮崎駿さんも制作に携わった作品です。

アイヌの伝承をモチーフにした
深沢一夫さんの戯曲(人形劇)である
『春楡(チキサニ)の上に太陽』を基に
つくられたアニメ映画。

この作品が「ジブリの基」
なっているとは、よく言われます。
宮崎駿さんが本格的に
制作に携わった初めてのアニメ作品なので。

宮崎駿さんのジブリ設立までの
略歴はこちらです。

◆1941年 東京生まれ
◆1963年 東映動画に入社
◆1965年 制作開始
◆1968年 『太陽の王子 ホルスの大冒険』公開
◆1971年 東映動画退社
◆1971年 高畑勲とTV『ルパン三世』演出
◆1972年 映画『パンダコパンダ』
◆1974年 TV『アルプスの少女ハイジ』
◆1978年 TV『未来少年コナン』
◆1979年 映画『ルパン三世 カリオストロの城』
◆1984年 映画『風の谷のナウシカ』
◆1985年 スタジオジブリ設立

…新卒で初めて入った会社で
本格的にアニメ制作に参画したのが
『太陽の王子 ホルスの大冒険』!
22歳頃に入社して、
24歳から27歳頃の時に携わった作品。

…新卒の頃に携わった仕事は、
社会人生活が長くなっても
強く印象に残っているもの、ですよね。

おそらく『ホルス』はずっと
宮崎監督の心の中に残っていたのでは
ないでしょうか?

本記事ではこの作品の
背景などを書いてみたいと思います。

この作品ができるには、
「大塚康生さん」というもう一人の
キーパーソンが重要になります。

大塚康生(おおつかやすお)さん。
1931年~2021年。

1951年に山口県庁に就職するも
翌年には漫画家を目指して上京。
厚生省の採用試験を受けて合格し、
麻薬取締官事務所に勤めた人。
彼がアニメを独学していた時に、
ちょうど東映(映画会社)が
アニメ映画制作を開始する、と聞く。
1956年、東映動画に1期生として
入社することになります。

安定した公務員の地位を捨てて、
まだどうなるかわからない
アニメの世界に飛び込んだ人。
まさに「好き」に人生を賭けた人。

彼が、高畑勲さん・宮崎駿さんの二人を
見出した、といってもいい。

大塚さんは1965年『太陽の王子』の
映画監督に任命されると、
無名の新人だった高畑さんを
「演出」(実質の監督)に抜擢、
まだ入社したての宮崎さんを
メインスタッフに起用します。


大塚さんは労働組合の二代目書記長。
副委員長は高畑さん。
宮崎さんも労働組合に入ります。
喧々諤々、色々と顔を突き合わせて
話すことも多かったでしょう。
おそらく、それぞれの作品への想いや
アニメ談義も交わされたことでしょう。

さまざまな事情もあって、
『太陽の王子 ホルスの大冒険』
改題され、改めて監督は
高畑勲さんとして公開されます。

この作品は、会社の命令というより
自分たちで作り上げるんだ!という
空気があったのだ、と思われます。

『ホルス』には、ともに戦うべき
仲間たちに裏切られたり、
しかしその裏切りにも理由があったり、
子ども向けというよりは
かなりリアルな「大人の事情」が
深く投影されています(東映だけに)。

ただ、あまりにもほろ苦い、
深刻でビターな味付けだったせいか、
その当時の子どもたちにあまり受けず、
『ホルス』は興行的に失敗…。
多くのスタッフが
降格処分になってしまうのです。

深刻な悩みを抱える主人公が
決断を迫られて、どうするべきか、
いかに生きるべきかを悩む…。

『鬼滅の刃』『【推しの子】』の
大ヒットでもわかるように、
今のアニメ、今の子どもたちなら
(成人も含めて)
自然に受容するようなテーマですが、
さすがに1960年代の時点では
「子ども向けのアニメ」で扱うには
早かった
のかもしれません。

ちなみに「逃げちゃだめだ」の
『新世紀エヴァンゲリオン』は、
庵野秀明監督の手によって
1995~1996年に作られています。
『ホルス』より30年あとの話です。
このエヴァンゲリオンは
おおいに世の中に広まった…。

そう、ホルスは言うなれば
「30年、60年早かった」とも言えます。
まさに時代を切り裂き、斬り拓くような
先鋭的な作品!

庵野秀明監督は
『ナウシカ』にも参画しています。
宮崎駿監督の下で、力を養いました。

◎大塚康生
◎高畑勲・宮崎駿
◎庵野秀明


もちろん直結、直系というよりは
複雑な糸がからみあっている
ような感じですけれども、
この系譜が『ジブリ』や日本のアニメに
大きく影響を
及ぼしている
のでないでしょうか?

しかし、このアニメの隆盛に尽力した
群雄たちは、近年、
次々に亡くなられています。

大塚康生さん:2021年死去
高畑勲さん:2018年死去
保田道世さん:2016年死去
(「ジブリの色職人」と言われて、
『ナウシカ』~『ポニョ』まで
ほとんどの色彩設計を担当した方。
『ホルス』にはトレースで参画)
氏家齊一郎さん:2011年死去
(読売グループの実力者。
高畑勲さんの大ファンで
『かぐや姫の物語』をつくらせた)

そう、現在、
2023年7月から公開されている
宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』は、
彼らの死去の報を受けながら
徐々につくられた作品なのです。

最後に、まとめます。

本記事では、1968年に公開された
映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』に
まつわる背景や人物を紹介しました。

30年、60年ほども早く
世に出された映画『ホルス』ですが、
いま見ますと巨匠たちの若い頃の
「荒削りの熱気」が
むせかえるような作品
だと思います。

2023年から言えば、
約55年も前の作品。

ジブリファンの方は、
『君たちはどう生きるか』と合わせて
ご覧になってみてはいかがでしょう?

※『君たちはどう生きるか』をネタバレなしで
紹介したこちらの記事も合わせてぜひどうぞ!↑

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