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宮崎駿監督:クリエイター・バーサーカー伝説

日本のアニメ界の第一人者、といって
まず真っ先に名前が挙がるのが
宮崎駿(みやざきはやお)監督だろう。

1941年の生まれ。ほぼ、戦後世代。
スタジオジブリの設立者でもある。
日本のみならず、世界でも
「ミヤザキ監督」「ハヤオ監督」
「スタジオジブリ」の響きは、
抜群の知名度を保っている。

何度も引退宣言をしては、
その宣言を撤回することでも知られている。

例えば1997年に公開された『もののけ姫』。
完成後の打ち上げの際に「最後の作品だ」と
発言して話題になったのだが、
その翌年、引退宣言は撤回された。
こういう事件は、たびたび起こっている。
おそらく、作品に全精力を傾け、
作った直後は燃え尽き、引退宣言をするが、
そのうちまた創作意欲が沸き起こって
撤回するのだろう。
まさに「生粋のクリエイター」と言える。

その一途なアニメ製作は、妥協を許さない。

『千と千尋の神隠し』の中では、
主人公の千尋が、
湯屋の経営者、湯婆婆に叫ぶ。
「ここで、働かせてください!」
スタジオジブリとは、
そのような熱い思いを持った
クリエイター達の集まりだ、という。
ジブリの作品には、
人を酔わせ狂わせ、引き寄せる何かが
宿っているように思われる。

事実、『天空の城ラピュタ』が
金曜ロードショーなどで再放送されると、
ツイッターは「バルス祭り」となる。
映画内で「滅びの言葉」を言うのに合わせて、
不特定多数の人が一斉につぶやくのである。
これを熱狂的と言わず、何と言おうか。

そんな宮崎駿監督も、
偉大なる先達、手塚治虫について、
次のように語っている、という。
ウィキペディアより、一部引用する。

(ここから引用)

『雑誌の寄稿文では
「十八歳を過ぎて自分で
まんがを描かなくてはいけないと
思ったときに、自分にしみこんでいる
手塚さんの影響をどうやってこそぎ落とすか、
ということが大変な重荷になりました。
ぼくは全然真似した覚えはないし
実際似てないんだけど、
描いたものが
手塚さんに似ていると言われました。
それは非常に屈辱感があったんです。
模写から入ればいいと言う人もいるけど
ぼくは、それではいけないと思い込んでいた。
それに、手塚さんに似ていると自分でも
認めざるをえなかったとき、
箪笥の引き出しに
いっぱいためてあったらくがきを
全部燃やしたりした。全部燃やして、
さあ新しく出発だと心に決めて、
基礎的な勉強をしなくてはと
スケッチやデッサンを始めました。
でもそんなに簡単に
抜けだせるはずもなくて…。」
と語り、その後のインタビューでは
「僕は、手塚さんとは
ずっと格闘してきましたから。
それは『恩義』だけれど、
そんな言葉で語れるほど
簡単なものじゃありません」とも語っている。』

(引用終わり)

…当初、漫画家を目指していた宮崎監督が
アニメーターに転身したのは、
手塚治虫の二番煎じと思われるのが
嫌だったからだ、というのだ。
それを考えた時、
あくまで間接的にではあるが、
後のジブリ作品を世に生み出したのも、
手塚治虫の影響だと言えなくもない。

優れたクリエイターや作品は、
さらに優れた次世代を生み出すのだ。

宮崎監督の影響の下で、
『新世紀エヴァンゲリオン』の
庵野秀明監督が生まれていき、
ジブリに追い付け追い越せと
『鬼滅の刃』の驚異的なアニメ表現が
生まれてきているのである。

まとめよう。

世を牽引し、一時代を築く者は、
それまでの世の中を自分なりにつかみ、
見通し、苦悩し、格闘して、
「自分なりの世界」を生み出していく。

人間であれば、それまで生きていた中での
目にし、耳にしたものの影響からは、
逃れられない。
そこから逃げずに、自覚し、向き合い、
ライバル視し、ぎらぎらと意欲を保ち、
賛否両論踏まえて自分の力量と比べて、
狂おしいほどの熱量を注ぎ込めるか?

「どこ」に、注ぎ込むか?

それに的確に選択し、持てる力を集中し、
見事に成し遂げた人こそが、

世の中の人を熱狂的に狂わせ、
「聖地巡礼」にまで駆り立てるような
「クリエイター・バーサーカー」
なれるように、私には思われる。
そしてその熱狂は歴史の中で保ち続けられ、
次世代、次々世代へと続いていくのである。

読者の皆様が考える
クリエイター・バーサーカーは、誰ですか?

◆今回のお話にて、計6回連続で投稿した
「クリエイター・バーサーカー伝説」
一段落させようと思います。
吉田松陰・夏目漱石・江戸川乱歩・
手塚治虫・水島新司さん・宮崎駿監督。

途中、水島さんの訃報に接したため、
多少、順番が入れ替わりました。
興味のある方はぜひ↓

※最初の4人は
「歴史上の人物」として敬称なしで書き、
水島新司さんと宮崎駿監督は、
敬称ありで記事を書きました。補足まで。

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