見出し画像

ラジオCMにそそられます

男「すみません。席を倒してもいいでしょうか?」
 (か細い声で申し訳なさそうに。効果音から察するにおそらく新幹線の車内)

女「それって、隣にいる私じゃなくて、後ろの席の人にいうやつじゃ……」
 (少し戸惑いながら怪訝そうに)

男「いや、ですから、それを後ろの席の方に言って欲しくて」

こんな会話が続いて、なんなんだよこのイマドキな男の子は〜と、呆れ半分笑い半分でその続きを窺っていたら、「後ろを振り向けないほど首が痛い時は」と低音ボイスのナレーションが始まって。蓋を開けてみれば、肩こりだか筋肉痛の薬のラジオCMでした。たった20秒で聴き手の心をぐっと掴むんですから、やはり凄いですね、ラジオCMって。

結局なんていう商品名だったかは覚えていないんですが(それじゃダメじゃんとおっしゃるなかれ 笑)、なんかつい聴き入ってしまう引き込み方と意表のつき方が素晴らしい。

ラジオCMって、こんな感じのショートドラマ的なネタが多いですよね。泣かせる系の話も多いし、意外とじっくり考えさせる社会派のテーマも。こういうシナリオって誰が書いているんだろう。やっぱ代理店所属のコピーライターさんなのかしら。いや、もう、天才。こういうのはわたしもやってみたい。

わたしたちのような活字メディアの編集やライターは、小説みたいに長いものが書けないくせに(慣れ、なんですかね。どんな大作もわりと数千字でまとめちゃいがち)、コピーライターさんのような短文も実は不得手だったりします。ごく稀に、キャッチが天才的にうまい人もいますがね。交流のある週刊誌系のライターさんは、電車の中吊り広告的なキャッチャーな見出しを量産されます。

昔、高名なコピーライターさんとお仕事をご一緒させていただいたことがありまして。その時に思ったのは、書くベクトルがまったく正反対かもしれないということ。わたしらは何事かを伝えるために、話を段階的に広げていく作業をしますが、あの方々はギュッと凝縮するのがお仕事なんですもんね。たぶん脳の造りが違うような気がします。

それなのに、ライターのわたしにコピーライターの仕事がくることもあるんです。「できるでしょ?」って簡単にいうけど、できるかーい。前述したコピーライターの大御所さんは、一雫の言葉を捻り出すのに、その企業で働く人に幾度となくヒアリングを行ったり、膨大な資料を読みしだいてから、アウトプットに取り掛かっていました。あれは真似できないっすよ。
で、わたしの場合、いざやってみたら、それ、コピーっていうか、この企画のコンセプトだよね、ってなことも時折。
今はほとんどお請けしてませんが、それでも脂がノリノリだった30代の頃は、お酒の商品ポスターに添える詩的なコピーだったり、旅行関係のパンフレットのコピーなんぞも作らせていただきました。商品の魅力はもちろん、いろんな方々の思いを引き受けて一本にまとめる工程は、緊張感があって楽しいお仕事でした。

でもラジオCMはやったことない。いつかはやってみたいですなぁ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?