140字小説×3【⑩⑪⑫】

ねぇまゆちゃん、
と、富岡君があたしの名を呼べば、
あたしの芯をくすぐり、
桃灰色の糸、
目頭からるーーーん!
「まゆちゃん大丈夫?まゆちゃんまゆちゃん!」
連呼。もうだめだ。
るん!りぅん!りるるーん!糸糸糸あたしは繭。富岡君ごと繭ん中。こんなにくっついて糸糸糸糸一生止まる気配ない。

――140字小説⑩『絹糸の瞬間』
(好きな人から名前を呼ばれれば、それだけで、絹糸の瞬間)


夕映えるドブに紐を垂らしているので「何か釣れますか」と問えば老人、「入れ喰いさ」と応えた。やがてふわふわと淡い光を放つ小さな生命が釣り上げられた。四肢で紐にしがみつき、ききき、と鳴く。え、かわいい。と思う矢先、老人はそれを口に放り込み、嚙み砕いた。「生態系を壊す外来種なんだ」
――140字小説⑪『かも知れないけど事前にせめて一言欲しかった話』
(Xでは、既に投稿済みの12作の中で最もいいねを貰えました。
いいね中毒になりかけている自己を認識。「いいねの数で作品の価値は上下しない、我が道を行く」、と低音で呟きながら二分ごとに通知を確認。やっぱりスキやいいねは励みになりますよね。)


曇天の下、透明な四枚の薄羽を震わせふわふわ飛ぶ種族の子供達(昆虫系)と、前腕に張った翼膜で風を切り滑空する種族の子供達(翼竜系)が、どっちがCOOLかで喧々諤々。その熾烈な論戦のど真ん中をケツからジェット噴射系の男がぶぶーん!一閃、「飛べ翔べ子供ら!自分式で各々この暗雲を突破せよ!」
——140字小説⑫『それぞれの流儀、ひとつの蒼穹』
(なりふり構わず行こうぜ!と叫ぶこの男は、私の理想の男です。こんなふうに生きてみたい。)


以上で、2023年12月3日現在X投稿済の140字小説は全てです。
お読み頂いた皆様、本当にありがとうございました。

noteでは、また当面の間、短編、掌編の投稿に戻る予定です。
そして140字小説の方も溜まって来たらまとめて行こうと思います。
ゆっくりペースの不定期更新にはなると思いますが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?