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距離

私がこんなだからふざけた店のようだけど
実はウオッチは超正統派喫茶店。
先代の父はとにかく厳格で自分にも私にもお客さんにも厳しかった。
その頃床は絨毯で、汚れた靴で来店のお客さんがいたらタオルを持たされてその足元まで拭かされた。子供が走り回ると注意しに行かされたし、カーテンを勝手に引っ張ったりする客の元へはすぐ駆けつけ直したりもしていた。
閉店後の掃除もきちんと毎日隅から隅までお客さんが唸るほど磨き上げていた。
そしてお客さんとの距離も一定以上縮めず例え同級生であってもきちんと敬語で話していた。

知り合いが来て水を持って行った時ちょっと会話をしていたら「喋るな」と怒られたし、母が友人が来た時席に座っておしゃべりしようもんなら1日機嫌が悪かった。
そしていつもカウンターの中でピッと背筋を伸ばして店内を見渡していた。
だからこそ
そこまで真摯にやってきたからこそ
店も一目置かれる存在だったと思う。

さて今は..。
コミュニケーションの時代だからもう少し砕けて
ちょっと会話もする。けど馴れ馴れしくするのは厳禁。
店の口コミをたまたま見た時に
「スタッフの方が常連さんにもそうでない人にも同じような接客だったので感じが良かった」
というような事が書かれてあった。お客さんってよく見ているなあ。でもすごく嬉しい言葉だ。

私も距離は置く方。でもこれは昨日の出来事だが急に距離を詰めてきたお客さんがいてちょっと戸惑ってしまった。夫婦で来ていて帰る時ご主人がカップと水のグラスを持って来ようとしていた。慌てて「いいですいいです」とトレーを持って受け取ろうとしたら「かまんかまん」と言ってカウンターまで持ってきてしまい奥さまは笑っていた。
むげにキツく言う訳にはいかないけどこれはやめて欲しい。私がワンオペで忙しそうなのを見かねてというのは分かるけど嫌なんです。

時々
ピシッと気持ちを引き締めたい瞬間があって
それがあるうちはまだまだ大丈夫かと思う。

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